第4話 バス、なくなっちゃったんだね?
正確に四十五度かどうか知らないけれど、それぐらいに傾いた正方形のコンクリートが左側の崖を固めている。
その緩い坂道を、
道幅は広い。大型車がすれ違ったとしてもまだ余裕がある。その道には白っぽいほこりがたまっていて、風もないのに舞い上がっているように見える。しかしそれは強い日射しに照りつけられてハレーションを起こしているだけかも知れない。
幸織は、日焼けするからと言って日傘を貸してくれた。薄いピンク色で、端のほうにはレースで模様がついている、品のいい小さい傘だった。幸織は最初からさしていた白い日傘を使う。幸織は瑠姫のために日傘をもう一つ持って来てくれていたのだ。
準備がいい。ありがたい。
でも、幸織って、こんな気配りする子だったかな?
十年も経てば、これぐらい変わる?
瑠姫だって、どうだろう?
変わっただろうか?
「
瑠姫は関係のないことをきいた。
「うん」
幸織は軽くうなずく。
「もうわたしが高校のときにはなかった。瑠姫が引っ越して一年後ぐらいだったかな」
幸織は、この暑いのに、足首まである白の細身のデニムのパンツを穿いている。靴は白のスニーカーで、上から下まで服と日傘が白一色だ。
暗い紺色に暗いだいだい色のラインが入り、リボンも暗い赤色という地味なセーラー服の制服を着て走り回っていた、瑠姫の覚えている幸織の印象とはあまりにちがっている。
高校は、もう少し明るい制服だったのだろうか。
中学校二年生の終わりでこの土地を離れてしまった瑠姫にはわからない。
「もともとホテルまでお客さんを運ぶためのバスだったからさ」
「うん」
あの大きいホテル、なんていったかな? 思い出せないし、べつにどうでもいい。
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