第14話 平和に生きる二人
この世界はかつて人間も妖怪も平和に互いに協力しあって生きていた。
時に同じ街に向かい合い商売敵として競い合っていた。
時に友人として仲良く遊んだりしていた。
昔は争いがあったりしたがそれでもお互いに協力できる場所を見つけ、そして長い時間をかけて共存という形を作り上げていた。
そしてその共存と友好の証として昔、人間と妖怪の国を隔てていた国境線に一つ大きな広場を作り、その中央に一本、桜の木を植えられた。
そこでは毎年、友好記念日としてお祭りが開催されていた。
そしてこの日、この友好を記念して行われていたはずのお祭りでそれは行われた。
その日、私は人間と私達妖怪との友好を記念したお祭りに足を運んでいた。
私はもともとこんな人が多い場所があまり好きではなかったがある年を境に毎年訪れるようになった。
その理由は彼氏が出来たからだ。
そしてこのお祭りが彼と会える数少ない機会だからだ。
普段、彼は竜神に仕える一族としての役目があり、家をなかなか抜けることが出来ない。
だからこんな日にでもあっておかないと次いつ会えるかわかったものじゃない。
彼に会えることに少し浮足立っていた私はあまり周りが見えておらずそれに気づくことが出来ていなかった。
屋台の陰に妖怪達が集まっていることに。
俺は今日は久しぶりに自由な日となった。
理由は今日が人間と妖怪の友好を記念した祭りでそれに俺の家族は毎年、色々やることがありその間、俺は特に何もすることがないからだ。
昔からこのお祭りには参加しているがここ数年は更に楽しみになっていた。
なぜなら、俺に彼女が出来たからだ。
彼女は妖怪だがそれは今の世の中ならば些細な問題だろう。
今でも人間も妖怪にも一部でこの友好はやめるべきだと言う声があるがほとんどの人間と妖怪が仲良くしているため、その声はどんどんと小さくなっていた。
そんな彼女と付き合い始める前のことを思い出しながら俺は彼女との集合場所へと向かっていた。
そして俺は気づいていなかった。
周りには殺気立った者が多くいることに。
「おまたせ」
そう言って俺は彼女との集合場所にしていた大樹の下にいる彼女に声をかけた。
彼女はとても嬉しそうに微笑んで
「ひさしぶり」
そう言いながら抱きついてきた。
そんな彼女を俺は抱きしめ返して少し喋って後、屋台を見て回った。
彼女との時間はゆっくりと流れていき、いつの間にか日が沈んで夜になろうとしていた。
「そろそろ舞台で色々いるから見に行こうよ」
彼女がそう言って手を引っ張って行った。
少し小走りで行って舞台が始まるギリギリに到着した。
そして彼女と二人、少し離れた木の下から舞台を眺めていた。
舞台を見るとなにやら慌てた様子で少し手間取っているようだった。
その間、彼女と話していたのでそれはあまり気にならなかった。
しばらくして舞台が始まり、それをゆっくりと眺めていた。
そしてその舞台ではまるで本物のような道具が多数使われていて役者の人達も真剣で現実のようだった。
こうしてみると舞台で演技しているのもそれを見ているのも人間と妖怪でしっかり共存出来ているのだな実感できていた。
そうしてゆっくりと流れる時間を感じながら舞台を見つめていた。
そっと彼女の方を見ると彼女も舞台に見入っていた。
そして俺の視線に気づきこちらを見て静かに微笑んだ。
彼女との時間を楽しんでいる時、それは起こった。
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