第13話 戦争を知る者
「はあああ」
俺は刀をもって目の前の相手に突っ込んでいった。
刀が折られる音で戦いは終わった。
「そこまでだ。一旦休憩を挟む。十五分後から訓練再会だ」
俺はその言葉を聞いてその場に倒れるように寝転んだ。
「鬼人、大丈夫」
そう言いながら美琴が水筒を差し出してきた。
「ありがとう美琴」
俺はそれを受け取って勢いよく飲んだ。
「それにしても随分と最近の訓練は気合が入ってるね」
美琴が隣に座り話しかけていた。
俺は水筒を置いて
「まあ、この前の襲撃から色々思うことがあるからな。今はとにかく強さを求めることにした」
俺の答えに美琴が笑いながら
「そうだね、それぞれ何か見つかったようだしね。この前お父さんからの発表もあってみんな気合が入ってるもんね」
そう言ってきた。
二日前、天原隊長からこの部隊に向けて発表があった。
「ここにいる隊員に告ぐ。今回の一件からわかるように妖怪が新たに大きな組織をつくろうとしている。それに伴い妖怪の活性化が予想される。今後俺たちはその妖怪達を相手するのに今のままでは不十分だ。これからの訓練はより一層厳しいものになるだろう。これからの妖怪の活性化に向けて皆できることは全てしてくれ。妖怪に立ち向かう誇り高き第一部隊として」
隊長が言い終ると隊員たちから大きな歓声が上がった。
そうして訓練はより一層厳しくなった。だが皆それに食らいつきどんどんと実力を伸ばしていった。
そしてそれは俺も同じだった。
先日、隊長から言われたこと。だが俺にはなぜか寿命を気にする必要はないと思えた。
力を使って命を削ろうとも死ぬ気がしなかったからだ。
そう感じる理由はいくつかあるだろうが自分が意識してわかっていることはどうせ妖怪との戦いでこの命はなくなるのだから少しでも長生きしようとしても意味がないと思っていることだ。
妖怪と戦うための死んでいった人達の敵を取る才能が俺にはあるのだからそれを使わないのはもったいないというものだろう。
そう考えてこれからどうするかを考えていると訓練再開の合図がかかったので道具を持って向かった。
その日の訓練を終えて俺は夜の森の中にある少し開けた場所に来ていた。
そこは灯りがなく空に浮かぶ星々がきれいに見ていた。
目をつむると風に揺れる草木の音が心地よかった。
この場所は第一部隊の人も知らなかった。
俺が自主訓練で森の中を駆け回っていて偶然見つけた場所だった。
まるで周りから何かを隠すようにしてあるこの場所は俺にとっての丁度いい心を落ち着かせつ場所となっていた。
自分はこれからどうすれば良いのか、この力をどうするのか、死ぬまでに何をすれば良いのか。
悩みはどんどんと増えて大きくなっていた。
そんなことをしているといつの間にか目を閉じて少しの睡眠に入っていた。
目を覚ますと俺の目の前に一人の男とも女とも取れるような長い薄茶色の髪をして小さい丸眼鏡をかけた何者かが立っていた。
そしてその者はおもむろに
「はて、なぜこんなところに人間が入ってこれたのかの」
俺はその意味がわからなかったがその言葉からこの者が妖怪であるという予想がたった。
「あんたは何者だ。そしてここはどういう場所なんだ」
俺が質問するとその者は俺を凝視して少し微笑んだ様子で
「このことは誰にも話すまいと思っていたがまさかこんなことがあろうとはな。少年よ、君が気になっていることの答え、私は知っている。だがそれはあまりにも醜く残酷な話だぞ。それでもいいのか」
その者の言葉に俺は少し気になりはしたがそれでも俺はその話を聞くことにした。
「話をするならば少し移動して話をしやすい場所にしようか」
そう言ってその者は今いる場所から少しの林を抜けた場所へと俺を案内した。
その場所に着きその者は言った。
「さっきまでいた場所こそがこの戦争が始まるきっかけとなった場所だ。そしてここは二人の少年少女が願いを残して死んでいった場所だ。あそこに見える桜の木、あれが枯れることが私の願いだ」
そう言ってその者が指を指した先には季節の満開に咲く桜が妖しく咲いていた。
それをみた俺はその下に何かを感じた。
そしてその者は話し始めた。
「これは数百年も昔、戦争が始まる前の話だ」
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