第12話 宿る力
隊長たちが帰ってきて俺は妖怪の長の息子と戦ったことの報告のため、隊長室に呼ばれていた。
「では何があったか聞こう」
隊長の一言で俺は話し始めた。
「初めにあの妖怪は近いうちに自分は妖怪の長になると言っていました」
俺の言葉に隊長は何か納得した様子だった。
「なるほど。それが事実ならばここ最近の妖怪の活発な動きはうなずけるな。それで、戦った感想はどうだった」
「はい、言えるのは少なくともどの妖怪とも違う次元の強さにいるような感覚でした。初めの威圧だけで倒れそうなほどでした。死をまじかに感じました。動きもとらえきれずに直感で避けるのが限界でした」
「まあそうだろうな。それが今の妖怪の最強と呼ばれるものの実力の一片だ。昔俺と互角に戦ったやつだ。むしろよくやつを相手に生きて帰ってこれたな」
「それが途中から何か体の感じが変わって相手の速度についていけるようになったんです」
それを聞いた隊長の顔が少し曇った。
「どういう状態になったんだ」
「ええと、まず体の痛みが消えていつも以上に動かしやすくなりました。それから動体視力が上がって相手の動きもとらえられました」
隊長は何かを確信したように目を閉じた。
「人が持つには重すぎる力か」
俺は隊長の言葉の意味が分からず
「一体どうゆうことですか」
そう聞いた。
「その力は時折持った者が現れる。その力は絶大で俺に匹敵するくらいだ。だがその者たちは短命だ。必ず二十を超える前に死んでしまう」
言葉すら出なかった。
「君は今、いくつだったかな」
「俺は十六です」
「ならば後四年か」
「どうにか止める方法はないんですか。せめて延命でも」
「力を使わないことが一番だ。その力は使えば使うほど命を削ってゆく」
つまり希望はない。
「そう、ですか」
俺は言葉を出すこともできなかった。
「どうするかは君次第だ。ここを離れ、ゆっくりと暮らすもこのまま戦い続け命を削るも」
俺は少し考えたが結局答えは決まっていた。その答えに震えながら
「俺はここで戦い続けます。もともと妖怪と戦うためにここへ来たんですから。妖怪と戦うことに命を削るつもりでしたし、その時間が短くなっただけです。村の敵も見つかりました。これから俺がするべきことは唯一つです。妖怪をこの世界からなくし自分のような悲劇を起こさせないようにすることです」
俺の言い切った言葉に隊長は呆れたように
「はあ、そうか。お前の覚悟はわかった。その命尽きるまで頑張りな」
苦笑しながらそう言った。
隊長室を後にした俺は限られた時間をどうするかを考えた。
彼が出ていき一人となった俺は天井を見上げていると
「彼はどうだった。あの力を持って短い命を告げられて」
混が入ってきた。
「彼は命の全てをかけて妖怪と戦い続けるようだった」
「彼がどんなふうに動くかこれから少し心配だがな」
混は彼がなにかやらしそうで心配な様子だった。
「きっと彼はこの時代を動かす何かを持っているのだろう。そしてそれは一人では収まらない。太陽のように明るく輝く場所には必ず多くの何かが集まるものだ。敵も味方も。新たな妖怪の長となり得る者の出現もそうだ。これからまた大きな戦争が起きるだろう。かつて戦争が始まった時と同じかそれ以上の規模の戦が」
「それはこの戦争に終止符を打つことができるのか」
「これからの俺たち次第だろう。立ち続けるか、這いつくばるか」
天原凍夜が予想していた通り、戦況は動こうとしていた。
一人の少年を中心にしてその周りには時代を超えた魂たちが集まっていった。
そしてすぐそこまで来ていた。この世界の運命を決めた世界で最後の妖怪と人間の大戦が。
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