第11話 見えてきた生きる意味

 妖怪たちの襲撃から夜が明けて、事態も落ち着いてきた。

 部隊の被害は多数の負傷者は出たものの一人も死者は出ていなかった。

 また、民間も建物の被害はあったが人の被害はまったくなかった。

 数百の妖怪を相手に八十に満たないなかでこれだけの被害で済んだのはこの部隊の強さが見える結果だった。

 部隊を見て回っていると美琴が負傷者の手当の手伝いをしていた。

「美琴、大丈夫だったか」

俺が声をかけると美琴は

「鬼人、心配したよ。一人で妖怪と戦ってすごいよ」

こちらに駆けよって来て安堵した姿を見せていた。

 それからしばらくは美琴の手伝いをして負傷者の手当や壊れた建物の撤去と資材運びを行った。

 外では負傷しなかった者たちが小隊長と共に周囲の警戒に当たっていた。 

 その警備の中には黒い姿をした者たちも見られた。

 手伝いが終わり、もらったお菓子とお茶を食べながらゆっくりしていると月宮小隊長がこちらへきた。

「霊陰君、大丈夫だった。ずっと姿が見えなかったから心配したよ」

安堵した姿をしている月宮小隊長に

「心配かけてすみませんでした。一人で妖怪と戦っていたのでそちらに戻れませんでした」

そう答えた。

「一人で妖怪と。よく頑張ったね。どんな妖怪と戦ったの」

そう聞かれ俺が答えると

「なんか妖怪の長の子供だって言ってましたね」

場の空気が凍り付いたように一瞬静かになり二人が声を合わせて

「「はあーー」」

と、叫んだせいで耳がキーンとなった。

「妖怪の長の子供って妖怪側の最高戦力じゃない。そして私のお父さんと互角に戦う妖怪だよ。それと戦っていたの」

美琴がすごい勢いで話してくるので一旦落ち着かせ

「まあ、多分全力を出していなかったから生き残れたし、いいタイミングで増援が来てくれたから助かった感じだったよ。俺一人なら確実に死んでたよ」

自分が生き残っているわけを話した。

「ま、まあ、君が強いとはいえ全力を出すほどの相手じゃないとみて力を抜いていたのは間違いないし生きて帰ってきたのはすごいと言っていいのか運が良かったというべきなのか。少なくともその妖怪を目の前にして生きて帰ってきた例ってすごく少なくてね。それこそまともに生きてるのってうちの隊長くらいだからね」

 隊長がどのくらいの力を持っているかわからないからあの妖怪の実力も図り切れないがそれでもこの二人の反応を見る限り本当に強いのだろう。

「とりあえずその妖怪と戦ったことは隊長が帰ってき次第報告しておいてね」

そう言って月宮小隊長はどこかへ行ってしまった。

 俺も一人でやりたいことがあったので美琴と別れ、ある場所へと向かった。

 基地から少し離れた森の中に来て俺は目を閉じ刀を構えていた。

 体に残る怪我を感じながら、目を開け少し距離のある大木へと一閃をした。

 刀が風を切り、数秒「シーン」と静まり返りそして大木は真っ二つとなり倒れた。

 そしてその周りの木には刀で切ったような切り傷がついていた。

 今現在、怪我をしている体を自分の思っている以上に動かすことが出来ている。

 怪我を感じさせないどころか怪我をしている前よりも体を楽に動かせていた。

 これはあの妖怪が言っていた力となにか関係があるのだろうか。

 まだまだわからないことが多すぎる中、今回の襲撃で得られたものは謎の力が俺の中にあること。そして、村を襲った妖怪が誰かわかったこと。

 村の人達の敵を取るため。

 きっとあの妖怪を倒せばこの戦争も人間側に傾くだろう。

 今までどう生きるか迷っていたけどこれでどういうふうに生きるか。目標を見つけていっそう頑張って生きることができそうだ。

 妖怪をこの世界からなくせばきっと俺のように悲しむ人もいなくなるのだろうか。

 きっといなくなってくれるだろう。

 そう願いを込めながら、決意を胸にして天に上る赤く輝く太陽を見つめていた。

 ちょうど隊長たちが帰ってきたので俺は基地へと戻った。

 

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