第8話 分けのわからない訓練
月宮小隊長との訓練が始まり今日は初めに隠れている月宮小隊長を見つけてから訓練を始めるとのことだったので俺は山を歩き回っていた。
昨日も見つけることはできていたし大丈夫だろうとこの時はたかをくくっていた。
探し始めてから約三時間、既に太陽は真上へ来ようとしていた。
しかし月宮小隊長の姿どころか痕跡さえ見つかっていなかった。
月宮小隊長を見つけることが出来ずに俺は少しずつ焦りが出て来ていた。
一度立ち止まり俺は深呼吸をした。
(相手は実力者とは言え人だ。気配はどこかにある)
神経を研ぎ澄まし、音を、匂いを、空気の流れを、全力をもって感じた。
しかし月宮小隊長の気配を見つけることはできなかった。
一瞬この山の中にはいないのではないかと考えたがさすがに訓練をせずに帰るような人ではないと信じて探し続けた。
山の中を駆け巡り、探せる場所の全てを探しつくした。
太陽が沈み辺りは真っ暗になった頃
「そこだ」
と、何かを感じた場所に石を投げた。
そこから石を持った月宮小隊長が現れた。
「いやぁ、見つけてくれなくてどうしようかと思ったけど良かった良かった」
「良かったってもう日、沈みましたよ」
「太陽が出てくる前に訓練を始めることが出来て良かったよ」
俺はその発言に思わず
「はあ」
と、声を上げてしまった。
「もしかして今からずっと訓練をするつもりですか」
俺がそう聞くと月宮小隊長は
「いや今から二日後の日の出までだぞ」
と、けろっとしながら答えた。
俺は驚きのあまりに絶句していた。
ここから二日間寝ずに訓練が続く。
どれだけきつい訓練でも夜には睡眠が取れる。
それがあるからきつい訓練も行うことができる。
しかし、その睡眠すらもなければきついという話ではなくなる。
「ああ、ずっと訓練をするわけではないぞ。ちゃんと仮眠は取るぞ」
俺が最悪の想定をしていると月宮小隊長が希望の光を照らしてきた。
「この訓練では気配を操る他に夜を活かす訓練と長時間の任務をこなす訓練をする。いつどんな環境でも戦うことができる状態をつくることがこの訓練の意図だ」
月宮小隊長がそう説明してくれた。
説明を聞いて俺は
「ちなみにどういった訓練をするんですか」
と、聞いた。
月宮小隊長が
「主に私が配置した動物たちを探す。ただしこの動物たちは特別な訓練している。それと私との戦闘訓練。そして決まった時間の仮眠の訓練だ。なにか質問はあるか」
そう答えた。
俺は質問がなかったので訓練が始まった。
月宮小隊長はどこかへと消えていった。
すでに周りは真っ暗になっていて明かりもなくどういう状況かは自分で感じて判断するしかなかった。
近くに何かがいるという感覚はなかった。
とりあえず俺はあたりを歩いて回った。
なにか感じれるものはないかと探して回ったが何もない。
すると近くで何かが動く気配がした。
すぐにそちららを見ると一匹小さなリスがいた。
首から赤い印のようなものを下げていた。
これが月宮小隊長が言っていた訓練された動物の証なのかもしれない。
俺はそのリスを捕まえようと動いた。
その瞬間、リスも動いて木のどこかへと消えていった。
が、動く気配は追うことが出来たので俺はその気配を追いかけた。
そして数百メートル追いかけてリスを捕まえた。
捕まえたリスは一枚の紙を持っていた。
その紙を開けるとそこには
「ミッション このリスをこの森のどこかにいる私の部下に渡せ。渡す部下は誰でも良い。ただし部下も隠れている。」
と、書かれていた。
よくわからなかったがとりあえずその部下を探した。
割と簡単に見つかった。
「おお、結構早かったな」
と、見つけた部下の人が出てきた。
その人にリスを渡すとその部下の人が
「うちの小隊長のミスをすまないな」
と、言ってきた。
「どういうことですか」
と、俺が聞くと
「いやね、この動物たちって小隊長のミスで逃げ出した奴らなんだよ。訓練してるから見つけるのになかなかに苦労していて、俺たちも探しながらやってるの」
そう答えた。
俺はその答えに魂が抜けそうになった。
実際訓練にもなっているがこれは自分のミスを他の人に手伝ってもらっているということ。
若干訓練のやる気がなくなりながらもその部下の人と別れて訓練もとい動物探しを再開した。
訓練が始まる前の月宮小隊長
「やばいやばい、どうしよう」
月宮は焦っていた。
訓練している動物たちがカギをかけ忘れた部屋からほとんどが脱走した。
幸いにも鳥類は逃げ出していなかった。
が、それでもやばいことには変わりなかった。ので部下を集めて探すのを手伝ってもらった。
しかし、訓練が始まる前にすべてを捕まえることが出来なかったので月宮は思いついた。
「そうだ、今から訓練する彼にも手伝ってもらおう。訓練と称せばなんとかなるか」
と、彼女は言いながら鬼人と合流して訓練を始めた。
彼女がわざわざ自分を見つけてから訓練を始めると言ったのはずっと動物たちを探していたからである。
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