第7話 二人目の小隊長

 神楽小隊長の個人訓練が終わり、次の隊長との訓練もために俺は言われていた森の中へと向かていた。

 森の中に入り訓練をしてくれる小隊長を待っていると何かが動く気配がした。

(七メートル先、百六十四センチくらいか、こっちに来る)

 気配を感じて臨戦態勢を取った俺は注意深く相手の動きを感じていた。

 音がしなくなった。

 数秒して上から何かが降ってきた。

 俺は反応して飛びのいたが次の瞬間にはあけたはずの距離を詰められていた。

 持っていた刀で応戦しようとした時には視界から相手の姿はなかった。

 姿を探すと後ろにいた。

 すかさず刀を振るった俺だったがいつの間にか視界が空を見上げていた。

「優秀、優秀、私相手にこれだけ反応できてるなら十分だ」

そう言う相手の姿を見ると

「あなたは一体誰なんですか」

と、聞いた。

「私は第二小隊小隊長、月宮白(つきみやはく)だ。よろしく霊陰鬼人君」

自己紹介をしてきた小隊長、そしてどうやら俺のことは事前に知っていたようだ。

「よろしくお願いします。あなたが今回の訓練しれくれる小隊長ですか」

「ええ、凛ちゃんからは何を教えてもらったの」

「神楽小隊長からは自分だけの特技を見つけようって訓練をしてもらいました」

「なるほど、で見つかったの」

「何となくですが」

それを聞いて少し考え込んだ月宮小隊長は

「じゃあ私との訓練ではこの森で私から一本取りなさい。五分間作戦を考える時間をあげる。五分経ったら始めていいわよ」

そう言って月宮小隊長は森の中へと消えていった。

 残された俺はさっき、小隊長が現れた時のことを思い出しどう動くかを考えた。

 五分が経ち俺は動き始めた。

 初めに気配を探した。

(見つけた。十メートル先、木の上)

 気配を見つけた俺はその場所から死角になるような木を通りながら進んでいき近づいたところで石を拾い投げた。

 石を投げた場所から何かが動く気配がした。

 その気配を一定の距離で追いかけながら攻撃をする機会をうかがっていた。

 周りの地形から攻撃する場所を決め、その場所に気配が入った瞬間俺は地面を蹴り鋭く食らいついた。

 しかしそこにはあったはずの気配がなかった。

 ふいに後方から何かが飛んでくる気配を感じた俺は身をひるがえし回避に徹した。

 次の瞬間、背中に攻撃をくらい俺は倒れた。

 そこには月宮小隊長が立っていた。

「いい動きだった。気配を追うのも消すのもうまかった。ただ相手が悪かっただけだ」

俺には何が起きたのかがわからなった。ただ月宮小隊長が急に現れ攻撃されたことしか。

「これが私の特技、気配を操る。まるでそこにいるかのように、急に現れたかのように錯覚させる技術だ。この技術は気配を上手く追うことが出来る奴ほど引っ掛かりやすい。ここでは気配に関する技術を出来るようになってもらうぞ」

 気配、生きていれば必ず発せられる。

 呼吸の音、心臓の音、服の衣擦れ、匂い、温度、空気の流れ。

 この人はこれらを完璧に操っていた。

 相手を騙す、この技術は実力差があろうがなかろうがどこでも使うことが出来る技術だ。

 持っていて損はない。

「よろしくお願いします」

そう言って訓練は始まった。

 初日の訓練は音を立てずに動く訓練だった。

 これが意外にも難しかった。

 周りに落ちている木の枝や葉、されに加え周りの木々も動きを制限してくる。

 そうして初日は終わった。

 最後に月宮小隊長は

「明日は私を見つけてから訓練を始めるから。山に来たら私を見つけてね」

そう言って山を下っていった。

 その意味はよく分からなかったがこの時はあまり深く考えていなかった。

 これがとてつもなく大変な事とは知らずに。




 

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