赤と青の会話

「この世界の行く末について考えたことはあるかい」

 アンジェがさらさらとした髪をテーブルにつけながら、僕に問うた。

「残念ながら、ないね。僕は僕の内的世界にしか興味がないから」

「だろうと思った」

 アンジェはクスクス笑いながらグラスを傾ける。

「君の内的世界は、どこに通じているんだろうね」

「そりゃ、世界の一角だよ」

 僕はふんぞりながら答える。

「僕の内的世界は、三千世界のひとつにあいなる」

「そのとおりだ」

 アンジェは、愛おしくてたまらない、といったように目を細めて僕を見た。

「君は世界の至宝だよ」

「えへへ。んで、この世界の行く末だっけ?」

「そうそう」

「さらにいくつもの世界に分化していくと思ってるよ。各々が世界を作っていくんだ。僕がまたそうであるように」

「そうだね」

 アンジェはまたクスクスと笑った。大好きな相方だ。特に、僕の話をよく聴いてくれる。話したがりの僕と、聞き上手の彼。完璧な世界だ。相補関係で生まれた世界を、僕は大事にしようと思えた。

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異界に住む者たちのレクイエム はる @mahunna

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