第69話 守護者の力
「ガーディアン・メシア…。」
それは四人の内だれが漏らした言葉か。
もしくは四人全員の言葉だったかも知れなかった。
それほど塔の上から降り立つガーディアン・メシアには人を畏敬させる威光の様なものがあった。
《僕は警告します。》
相変わらず一人称が定まっていない語り口でメシアは四人に話し出す。
《貴方がたが行おうとしている行為は無意味です。苦しみを長くするだけです。今すぐ武装を解除し投降してください。》
メシアの警告に対し四人とも武器を構える事で答える。
初めから言葉で止まるぐらいならここには居ないのだから。
《…小生には理解出来ません。何故自ら楽園への道を閉ざすのですか?》
「問答は無用、我々は貴様を破壊する為にここに来ている。」
メシアの言葉に対しバリーが強い語気で答える。
その間にも四機はガーディアン・メシアを囲もうとしている。
《…そうですか。》
メシアが放ったその言葉はどこか本当に残念そうであった。
《では新たなる人類の歴史の為。》
そう言いながらガーディアン・メシアは腰を屈め突撃するような体制を取る。
この時点で四人に油断があったかと聞かれれば多少という他ないであろう。
相手は性能不明とはいえ一機、こちらは精鋭の四機。
全力で排除を目指すがそれでも苦戦はしないだろうと。
…その意識が甘い事はすぐに証明された。
《死んで頂きます。》
そう言い切るとガーディアン・メシアはまずレナの方に突撃した。
問題なのはそのスピードが速すぎた事である。
「「「「!?」」」」
予想以上のスピードで四人が驚く中、ガーディアン・メシアは指の全てにビームサーベルが付いているビームネイルで真っ直ぐ切り裂こうとしている。
「ッ!!」
咄嗟の反応が出来ないレナを救ったのは最も距離が遠かったユーリであった。
すぐさま背中に搭載されていたビームマシンガンをサブアームにて両手に持ちガーディアン・メシアに乱れ撃つ。
乱射されたビームたちの大半はガーディアン・メシアに当たるがそれでも止める事すら叶わない。
だが少し勢いを削がれたガーディアン・メシアの隙を縫ってレナは回避行動を取る。
その結果ビームネイルはレナのMTの装甲を掠るのみとなった。
するとすぐさまガーディアン・メシアは反転、その勢いのままユーリへと突撃する。
《中尉。》
アイギスがすぐさま警告を促すがその言葉よりもガーディアン・メシアの突進の方が速い。
ビームネイルを横薙ぎに確実に頭部を狙うガーディアン・メシアに対しユーリは。
「チィ!」
機体の上体を大きく反らす事によって回避しその姿勢のまま大剣を振るう。
その大剣はガーディアン・メシアの右腕に当たり大剣のチェーンソー機構によって装甲が削られていく。
だがそれもガーディアン・メシアが大きく腕を振るう事によって中断される。
「アイギス、敵の損傷率はいくら程だ。」
振り払われた事による姿勢の乱れを格闘を交えながら修正するユーリはおおよその損傷率をアイギスに聞く。
《敵MT、右腕損傷率2%未満かと。》
「…硬すぎんだろ。」
今の攻防でその程度なら何度綱渡りな攻防をしなければならないのだろうかとユーリは眉を顰める。
ユーリがガーディアン・メシアと距離を空け次の行動が出ても対応できるようにする。
向こうもユーリを警戒しているのかすぐさま突撃するような事はせずしばらくにらみ合いになる。
その間に他の三人がガーディアン・メシアを再び包囲する。
「ナーガ1より各機へ敵は速いうえに硬い、確実に装甲をそいで行くぞ。くれぐれもE-51には当てられない様に注意しろ。」
E-51、最新式エーテル濃縮爆弾は威力が高すぎるために他国間の戦争では使用が禁止されている代物であるが今回の作戦の為にそれぞれのMTに一つずつ搭載されている。
その様な事を確認しながらも全員意識は完全にガーディアン・メシアに向けられていた。
時間を掛けてゆっくりと包囲が狭まってきた時、先に動いたのはガーディアン・メシアであった。
機体の上体を捻ると同時に腕の発射口らしき物が大量に開く。
「「「「!!」」」」
それが確認できた瞬間四人は包囲を諦め回避、或いは防御に専念する。
ガーディアン・メシアが回転し腕の発射口からビームが放たれる。
豪雨のように放たたれるビームに全員が行動が制限される中で死角を狙いアレハンドロがバズーカ砲を構えた。
「くたばれぇ!!」
そう言って放たれた実弾は寸分たがわずガーディアン・メシアに当たり爆炎が広がる。
同時にビームも止み一同は一先ず安堵する。
だがやがて爆炎が晴れてくるとそこには損傷が見られないガーディアン・メシアが佇んでいた。
「チィ!化け物かよ。」
アレハンドロの愚痴りを誰も否定しなかった。
一体どういった造りをしているか分からないが兎に角硬い。
そしてあのスピード、余分な物を除き機動性と装甲を両立させたある意味理想形ともいえるようなMTである。
人間に乗りこなせるかどうかは別としてだが。
「各機、包囲は諦める。俺とナーガ2が突撃する。ナーガ3とナーガ4はフォローを頼む。」
「「「了解!」」」
そう言い終わると同時にバリーとレナが突撃していきアレハンドロとユーリは二人の突撃を邪魔しないよう射撃にて牽制していく。
射撃を防御するガーディアン・メシアにまずはバリーがビームアックスを振り下ろす。
それをガーディアン・メシアは両腕にて受け止める。
そこにレナがビームサーベルを突き刺さりにかかる。
「もらったぁぁぁ!!」
誰もが止めを、或いは致命打を予想した。
兎も角、無防備なボディにビームサーベルが突き刺さるであろう事は共通していた。
だがその期待は泡の如く軽々と消される事になる。
「なっ!?」
まずバリーのビームアックスが弾かれ、蹴りを入れられガーディアン・メシアとの距離が大きく空く。
「えっ…。」
そしてレナが渾身の勢いで突き刺したビームサーベルは空を突き刺す。
レナが後ろを見てみればビームネイルを頭部に向かって振り下ろそうとしているガーディアン・メシアの姿が。
レナは自問する。
回避運動も防御も間に合わないであろう。
仲間も急いでこちらのフォローに入ろうとしてるが間に合わないであろう。
「…チクショウ。生きたかったな。」
故にレナ・アップルビーは精々の足掻きとしてE-51を手に取り相手の攻撃範囲に投げた。
そしてビームネイルがE-51とレナのMTの頭部を切り裂く。
その結果E-51がガーディアン・メシアを巻き込む大爆発を起こす。
「っ!…すぐに塔に突入。AIメシアを破壊する。」
バリーが悔しそうに爆炎を見つめ命令を下す。
アレハンドロがそれに続こうとするがユーリは動かなかった。
「ナーガ4悲しむのは後に。」
「ナーガ1、ナーガ3すぐに戦闘準備してください。」
「「??」」
「まだ、終わっていないようです。」
ユーリが見つめる爆炎が晴れるとそこには損傷こそ受けているものの未だ存在している守護者の姿が見えた。
メシアが誇る黒衣の守護者は未だ倒れず蛇を狩ろうとす。
蛇は楽園に牙を突き立てる事はできるか。
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