第56話 終焉と始まり
「ハァ…ハァ…こんな、こんなはずでは…!」
薄暗い中を走り嘆いている、その彼の名はセリオン。
ユースティアの王族の一員であり現国王である四世に対し反旗を翻した男。
もし運命の流れが違っていたらユースティアの国王、いや世界を征服した男になっていたかも知れない人間だ。
されどこの歴史の流れにおいて今や彼は王族に伝わる緊急の避難路を逃げる罪人でしかなかった。
数多の費用を使って造り上げた巨大MT、アルティメット・レックスが破壊させられ多くの部隊がこちらに来ようとしている。
この事実はすぐさま王都にいたセリオンにも伝わった。
動揺する取り巻き達をどうにか落ち着かせ向かおうとした先は四世を軟禁している自室である。
四世に無理やりにでも向かってくる奴らを反逆者とし王都の守備隊に迎撃させることが出来れば全てが収まる。
もう少しでポイントXに進撃に十分な艦隊が揃うと報告が来ている。
上手くいった未来を想い受けべ笑みを浮かべるセリオンであるが、動くには時は既に遅かったのである。
「ど、どうなっている!?」
そう叫んだのは誰だったか、四世を軟禁しているはずの彼の私室には誰も居なかったのである。
「探せ!!」と、セリオンが大声で叫ぼうとする前に四世の私室の至る処から完全武装の兵隊が出てきて銃を撃ってくる。
何とか取り巻きを壁にしながらその場から逃げ、次々にやってくる兵隊からの襲撃から避け続けてようやくたどり着いた避難路で彼は歩き続ける。
「け、計画を、早く計画を進めなければ。」
取り巻きはおらず、秘密兵器のアルティメット・レックスも破壊され、自分自身も足や肩など撃たれてはいるがそれでも彼の野望は消えてはいなかった。
とにかく王宮から外に出れば同志と合流できるであろう。
計画はまた何年も先になってしまうであろうが構わない、必ずユースティアを今よりも大きくそして唯一の国とする。
その考えに没頭していたセリオンの耳に入って来たのは銃を構える音であった。
音に反応し伏せがちになっていた顔を上げればそこに居たのは銃を構える複数の兵士と旧交のあるスコット・F・オーウェンであった。
「オーウェン、貴様か。」
「ああ、その通り。王を逃がしたのも各地に兵を張り巡らしたのもな。」
「何故だ?何故なのだオーウェン!!」
大声で叫ぶセリオンの声は避難路に良く響いたがスコットは顔色を変えない。
「全て、全てがユースティアの為なのだ!!その為に私は全てを捧げると決めたのだ!!貴様も知っているはずなのに何故俺に力を貸さない!?何故皆私の邪魔をしようとする!?答えろオー」
セリオンの言葉はそこまでであった。
スコットが持っていた拳銃から発射された弾が彼の額を貫いたからである。
「オーウェン少将。」
二人ほどにセリオンの死亡を確認させながら新たにやって来た兵士がスコットを呼ぶ。
「反乱分子の制圧、完了しました。またこの反乱に関わった人間の拘束も七割終了しました。」
「了解した。最後の一人に至るまで気を抜くなよ。」
「ハッ!」
そういうと兵士は消えっていった。
スコットは周りにいた兵士も下げるとセリオンの亡骸に一言伝えるのであった。
「セリオン、おまえはきっと遠くのものを見過ぎたのだ。国を見る前にそこに住んでいる人を見るべきだったのだよ、きっとな。」
そう言うとスコットもここから出ていく。
こうしてユースティア史最大のクーデターは終わりを告げたのであった。
そしてそれよりも少し前、エリアAAA中心部。
ユーリが地上に降りるとドロシーのみがこちらを見つけ敬礼してくる。
ティナは大泣きしておりユーリが目に入っておらず、アドルファスは落ちていたMTの装甲に拳をぶつけ八つ当たりをしていた。
「…テリーはどうなった?」
二人の行動を見て最悪も考えながらドロシーに問うユーリ。
ドロシーは唇を強く噛みしめていたのを解き、淡々と報告する。
「生命維持装置が働いており、まだ生存はしています。ですが激しく出血しておりもう長くは無いという見立てです。」
「…輸送は?」
「無理です。ここから動かせないでしょう。軍医も…間に合わないでしょう。」
「…そうか。」
それだけ言うとユーリはテリー機のファフニールのコックピットに近づいていく。
顔を覗かせるとかなり激しい衝突をしたのか周りが血だらけの状態でありその中に息の荒いテリーがいた。
するとユーリに気が付いたのかテリーが細い声で呼び止める。
「隊長…。」
「無理するな、死ぬぞ。」
「隊長。自分役に立ててましたか?」
「…当たり前だろうが、一々そんな下らないこと聞くな。」
「そうか…役に立ててたか…良かった…。これで安心して…逝ける。」
それだけ言うとテリーはゆっくりと目を閉じ息をしなくなった。
その後の顛末を語るとしよう。
ポイントXに集結させられた艦隊はガスア帝国を刺激しないようにゆっくりと解散。
結果として多少刺激したが休戦条約が破棄されるような事態には至らなかった。
スコットは四世を助け首謀者であるセリオンを撃った功により少将から中将へと昇格した。
そしてユーリ自身も少尉から中尉となり、その他のクルーや部隊にもそれぞれ褒美があったらしい。
こうしてユースティアは再び四世のもと歩み始めたのであった。
ー--当AI、始動開始。
ー--当AI、___計画の為の準備を敢行。
ー--当AI,目的のための戦力を製造。
―全ては人類のより良い永続の為に
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