第54話 逆鱗
「何とか生き残っているみたいだな。」
「隊長…!!トンプソン曹長が!!」
残弾が切れたのかランチャーを捨て三人の下に近づいていくユーリ。
状況を話そうとするティナであるがユーリはそれを遮る。
「状況は見たら分かる。今は兎も角、あのデカブツを片付けない事にはな。」
そう言ってユーリは両手にコンゴウと両手剣を構えアルティメット・レックスに対峙する形となる。
「き、貴様が…。」
「ん?」
「貴様などが英雄などであるものか!!!」
「うぉ!うるさ!いきなりなんだこの人。」
いきなり轟くライオの怒声に驚くユーリ達を無視し彼は一人勝手に盛り上がる。
「名の知れた英雄だと聞いていたのになんだこの覇気も威厳も無いガキは!!こんなのが英雄と呼ばれていいはずがない!!真の英雄とはセリオン様のようなそして俺のような力を持った人間が呼ばれるべきものだ!!」
「いや、好きで名乗った訳じゃないんだけど。」
「隊長、多分会話は無駄かと…。あの人だいぶ頭の中が残念らしいので。」
「…みたいだな。」
ドロシーの忠告を聞いて納得するユーリであるがライオの自己の英雄像への演説が終わると今度はアイギスについて言及してきた。
「大体!そのAIが貴様の機体に搭載されているのも可笑しいのだ!人格や心を学ばせたいなら俺の様な優秀な人間に任せるべきだろ!!そのAIがこのアルティメット・レックスに搭載されていれば正に究極と言え得ただろうに!!」
「…クリエントで人質取ったのはあんたらの差し金か。」
「そうだ!あの時素直に渡しておけばユースティアの為に為っていたといいのに!」
「だったら正規のルートで交渉しろよ。」
「ユースティアの為だ!!その為ならば全てがセリオン様の名の下で許されるのだ!!」
「はぁ、…もういいや疲れる。」
そう言うとユーリはいまだ一方的に喋りまくるライオの通信を切り小隊での接触通信のみにする。
「三人ともいいか?合図したら兎に角撃ちまくれ。残弾は気にしなくてもいい、後は俺が何とかする。」
「何とかするって言ってもよ…。あいつのバリア相当強力だぜ。本当に何とかなんのかよ。」
「…他に手が無い今は隊長を信じます。」
「隊長!!頑張って!!」
三人との意思を合わせるユーリの耳にスピーカーでも使っているのか再びライオの声が鳴り響く。
「貴様ら!!人が素晴らしき未来について語っていると言うのに通信と切るとは何事か!!」
「いや話長いし聞いてられないんで。」
「何!?」
「それじゃあ。作戦開始!!」
ユーリはそう言うと真っ直ぐに最短距離でアルティメット・レックスに突っ込んでいく。
それと同時に三人は一斉射撃を開始する。
残っていたミサイルも何もかも撃ち尽くすかの射撃はアルティメット・レックスを防御に専念させるに十分だった。
「無駄だ!!貴様らの貧弱な兵器ではこのアルティメット・レックスのバリアは突破できん!!」
そう言うとユーリは一斉射撃を潜り抜けアルティメット・レックスの後方に周り込んでいた。
「バカめ!!後ろにもバリアは張っている!!」
「確かにそうかも知れないが…ここだけは違うだろ!!」
ユーリは背中側の右の装飾部にコンゴウを構えそのまま。
突き立てた。
「な、何だと!?」
この事に一番驚いたのはライオであった。
《絶対に破られないバリアシステム》そうメカニックから聞いていたのだから。
だが現実としてコンゴウはアルティメット・レックスにかなり深々と刺さっている。
そしてさらにライオにとって予想外の事が起こる。
「莫迦な!バリアシステムが!!」
アルティメット・レックス全体を覆っていたバリアが消える。
その事により小隊メンバーによる一斉射は次々と当たっていきビーム砲を潰していく。
「い、一体何が起こっている!?」
「あのバリアシステムは強力だが弱点も当然ある。」
コンゴウを引き抜きユーリは背中側を離脱する。
「それはシステムの一部でも壊れれば役に立たなくなるって事だ。前方にバリアにエーテルをまわせばどうしても背中側は薄くなるそして薄くなった部分で最も装甲が薄く尚且つシステムを構成しているパーツがあるのがあそこだったという訳だ。」
「待て!前提がおかしいだろう!!何故貴様がそんな事を知っている!?」
慌てたようにまくし立てるライオに対しユーリは苦笑いしながら答える。
「とある親切なレディー達が教えてくれたものでね。」
そう答えるユーリに腹が立ったったのか残ったビーム砲を狂ったように撃ちまくる。
それを躱しながらユーリはアイギスに確認を取る。
「アイギス、例のシステム行けるか?」
《システム起動…問題なしいつでも行けます。少尉。》
「それじゃ、起動してく…」
《少尉、その前に一言だけ。》
「?なんだ」
《少尉…、貴方がパートナーで本当に良かった。それを伝えたくて。》
「…まるで失敗する前提だな。」
《失敗すれば少尉はほぼ廃人になります。成功する可能性はかなり…。》
「だがやらないと長引く、被害を少なくするためにもやるしかない。」
《…了解しました。では【システム・スクルド】起動します。》
「隊長!危ない!!」
気が付けばユーリのファフニールに避けきれないほどのビーム砲が迫っていた。
誰もが直撃を避けられないと思った。
だがユーリのファフニールは今まで見たことが無いほどのスピードで避け、結果として掠りもしなかった。
「《フゥ―、準備運動良し。それじゃあ、行くぜ!》」
邪竜と狂竜。
その決着は間近である。
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