第53話 危機巨来

 ユーリがカーミラとの決着をつける少し前。

 AAAの中心部でも激しい戦いが繰り広げられていた。

 「っ!このぉ!!」

 無限のように撃ち出されるビームを掠りながらも躱すティナはガトリング砲にて反撃するが撃ち出された弾は全てアルティメット・レックスのバリアによって弾かれる結果に終わる。

 「ああ!!また防がれた!!」

 「ハミルトン。無駄弾使わないで…。」

 そう言いながらドロシーはハンドガンとサブアームによる射撃で牽制し、ティナ機の体勢を立て直させる。

 「チクショウ!!もうこれで何度目だ!!」

 「ハァハァ…。さぁ?十回以上は…数えてない…ね。」

 テリーが言った回数とは四機が連携して敵機、つまりはアルティメット・レックスに攻撃を仕掛けた数である。

 そして会話から分かる通りその尽くが失敗に終わっている。

 巨大な体中にあるビーム砲による多方向攻撃も厄介だがそこは四人とも躱している。

 躱しきれないものはテリー機のシールドにて防いでいた。

 それよりも四人を苦しめていたのはバリアであった。

 過去に無いほどの強力なバリアで四機の攻撃を合わせても本体に傷をつける事が叶わなかった。

 ギリギリのところで戦況は拮抗してはいるがいつ崩れてもおかしくないほど脆いものであった。

 「…まぁ、増援が来ないのはありがたいけど。」

 戦闘を始めた最初の頃は敵の増援がこちらにも来ていたのだが誰であろうライオ自身が撃ち落としたのである。

 敵がいようと味方がいようと関係なくビームを撃ちまくるからである。

 こちら側の援軍も来ていたが、今は少し離れた所で衝突している。

 「上手く…いかないなら…何度でも…やるだけだよ。」

 そう言うテリーの声はどこまでも苦しそうで今にも気絶しそうでもあった。

 「テリー!?大丈夫!?」

 「…何とかね。少なくともコレを…倒すまでは…死ねないよ。」

 「…簡単に死なないでね。ただでさえ勝てるかどうか分からないんだから。」

 「ハハ、厳しいね…ドロシーは。」

 などと話しつつ迫りくる光の束を躱しながらアドルファス以外の三人は一筋の勝ち筋を見出していた。

 これだけのビームを撃ち出した上にあれだけの強力なバリアを張っているのだ、そのエーテル使用料は果てしないであろう。

 カッコいい勝ち方とは言えないだろうが、それでもそれなら勝ちは拾える。

 そういった考えが頭を埋め尽くしていたからであろうか。


 …アルティメット・レックスが今までに無い動きをしたのをテリーは見逃した。


 「!?テリー!!」

 それが誰の言葉であったか?

 それを理解することもなくテリーは激しい重力に襲われていた。

 襲ってきたのはアルティメット・レックスの手であった。

 ワイヤーによって繋がれた右手が射出されテリーを襲ったのだ。

 「この!!」

 すぐさまアドルファスがテリー機を掴んでいる右手に向けて狙撃する。

 その一撃は破壊するには至らなかったが損傷を与える事に成功する。

 すぐさまテリー機を離しワイヤーで右手を引き戻すアルティメット・レックス。

 離した瞬間に地に墜ちていくテリーのファフニールをどうにか支えようとする三人であったがすぐさまビーム砲が襲う。

 三人とも何とか回避に成功するが、結果としてテリー機は地面に叩きつけられることになった。

 「テリーさん!!」

 「動かないでハミルトン!!コックスも!!」

 すぐさま助けに行こうとするティナとアドルファスであったがそれをドロシーが静止する。

 「なんでだよ!!早く行かないとテリーの奴が!!」

 「…いま助けに動けばビーム砲がトンプソンにも襲い掛かる。生死に関しては…祈るほか無いわ。」

 「ッ!!」

 ドロシーの言い分に何か反論したかったティナであったが言葉が見つからず唇を噛む以外に無かった。

 「けどよぉ!!」

 「うるさい。…それより集中して、これから全部躱さないといけないんだから。」

 アドルファスの激情を流し言った言葉に二人はハッと気づく。

 今までの多少無理な攻撃も出来ていたのは防御に徹したテリー機のフォローがあったからである。

 それが無くなるとなるとそれぞれの回避行動にてあの雨の様なビーム砲を避け、尚且つ攻撃に転じなければならないのだ。

 それぞれが覚悟を決めていた時にライオが大声で通信してくる。

 「ガハハ!!ちょこまか動いていたのも我が正義の拳にて沈んだ!!まさに翼をもぎ取られた竜!…いや、あの無様さは虫と言った方がいいな!!ガハハハッ!」

 「ッ!野郎!!」

 「落ち着いて。バカの言うことよ。」

 「分かってるけど!流石にアレは!!」

 (…人をイラつかせるという意味では確かに大物ね。)

 今にも飛び出しそうな二人を収めながらドロシーはライオを心の中でそう評していた。

 「ッ!!ゴメン!ドロシーさん!」

 怒りを抑えられなかったかティナがアルティメット・レックスに突撃を開始する。

 ライオは左手を再び射出して迎撃しようとする。

 (大丈夫!冷静に躱して懐に飛び込めば!!)

 怒りに任せての突撃だったがティナの冷静な部分が道筋を立てる。


 だが、その道筋は蜃気楼のように消えていった。


 射出された左手が光を帯び始めた。

 (!その状態からでもビーム砲が撃てるの!?)

 そう思う間にも射出された左手のビーム砲たちが発射体勢に入る。

 (あぁ、ダメ。この距離じゃ…)

 すでにアルティメット・レックスの左手はティナの眼前に迫っておりとても避けれそうには無い。

 「!?ダメ!!」

 予想される未来にドロシーが思わずティナに叫ぶ。

 アドルファスは左手を撃ち落とそうと構えるが位置的にティナ機が邪魔をして撃てずにいた。

 (ゴメン、皆。私死んだ…。)

 今まさにビーム砲が撃たれるその瞬間。

 左手の横側にビームが突き刺さる。

 溜めていたエーテルごと爆発する左手の爆風を何とか防ぎながらティナ機は後退する。

 「!た、助かった!?けど誰が?」

 ティナが、いやそこにいた全員がビームが撃たれた方向を見ればそこには白きファフニールがランチャーを構えそこにいた。

 「「「!!隊長!」」」

 

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