第47話 新しき竜たち

 提督であるヴィクターの根回しによってエーデルワイスに長距離用ブースターを装備する事ができポイントXからエリンの距離を高速で文字通り高速で移動していた。

 その中でドラクル小隊はおやっさんとパメラから最終調整を終えたファフニールの説明を受けていた。

 「いいか、お前らのファフニールは今までに比べてそれぞれ火力やエーテル推進力が強化してるがそれぞれに特徴がある。他の奴の特徴も一緒に聞いて頭に叩き込んでおけ。」

 メンバーがそれぞれに返事するとパメラが遠慮がちにティナ機の説明をし始める。

 「で、ではまずハミルトン軍曹のファフニールは以前のガトリング砲を二門に増加しました。さらに胸部アーマーはミサイルラックも兼ねています。その他にもマシンガンや接近戦用のナイフなども用意されています。が、その分増量した為バランスは取りにくくなっています。」

 「了解です!!どんなになっても気合で動かしてみせます!!」

 理解してるのかどうか不安な返答ではあるがある意味「らしい」返答に周りから笑みが零れる。

 「次はワグナー二等軍曹のファフニールですが。」

 「…あまり変わってはいなさそうだけど。」

 確かに他のメンバーの機体よりあまりアタッチメントや追加武装はついていない様に見える。

 目で確認出来るのは機関砲と肩と背中側に四角いボックスついているぐらいである。

 「フン!見た目が派手だから強化されてるなどと思わん事だ。」

 先ほどの発言におやっさんがパメラに代わり説明するようだ。

 「あのボックスの中にはサブアームが収納されておる。そしてそのサブアームには単純なアームモード、ライフルモード、ソードモードとそれぞれ使い分けができる様になっとる。まぁ、使いこなすのは至難の業ではあるがな。」

 「ー--了解。」

 それっきり黙りこんだドロシーではあるがその目に火が付いている事は一目瞭然であった。

 さらに説明をしようとするおやっさんを説得し再びパメラが説明をする。

 「トンプソン曹長の機体はシールド部分にクローを付けました。さらにエネルギーシールドも短時間ですが張る事が可能になっております。他にライフルを除けば胸部のビーム砲が搭載されています。」

 「うん、前より前線で頑張れそうだね。これで更に皆を守れそうだ。」

 テリーらしく優等生な答えだがそれが本心である事も理解できた。

 「そしてコックス曹長の機体は今まで長距離を意識していましたが中距離にも臨機に対応できるようにマシンガンやライフルといったサブウェポンや両肩の拡散ビーム砲を装備しました。」

 「おう!バンバン敵を落としてやるぜ!」

 ティナのコメントとそんなに違わないはずなのに何故だかそこにいた全員(本人を除く)が猛烈な不安を抱いた。

 「ンン!それで最後にアカバ少尉のファフニールですが。」

 パメラが無理やり出した咳払いで何とか空気を変えユーリ機の説明にかかる。

 「基本的にはアサルトと大差はありません。ですが肩のミサイルポッドは外し代わりに両肩にビーム砲を搭載しました。勿論ビームサーベルと実体剣コンゴウも装備しています。それと…。」

 「ん?まだ何かあるのか。」

 話を聞いていたのはここまでだったので疑問に思うユーリであったがパメラもそしておやっさんも渋い顔をしている。

 が、やがておやっさんが口を開く。

 「小僧のファフニールには新たなシステムが組み込まれている。その名も【スクルド】だそうだ。」

 「一体どんなシステムなんですか!?」

 ティナの質問に今度はパメラが答える。

 「システム・スクルドは言うならばAIと搭乗者を強く繋げるシステムです。」

 「強く…繋げる?」

 「はい。一体化と言っても過言ではないかも知れません。ヘッドギアに搭載した装置でアイギスの送るデータを少尉の脳波でキャッチし、より細かな情報を素早くダイレクトに伝えることが出来るシステム…のはずです。」

 「はず…というのは一体?」

 テリーの質問パメラが言いずらそうにしているとおやっさんが不機嫌に答える。

 「まだ開発中で実験もしてないもんを上の連中が送り付けて来やがったんだ。まあ組み込んだはいいがどのみち使いようが無いがな。」

 「?どうしてだよ。」

 「プロテクトでがっちり固められているんだがその解除コードは誰も知らん。」

 「それって意味ないんじゃ!?」

 「え、えぇですから一応説明しましたけどこのシステムに関しては無視してください。」

 そこから先おやっさんとパメラによる細かな説明が続くがユーリの頭の中では先ほどのシステム・スクルドの名前が頭に残っていた。


 「もう少しだな。」

 「はい、もうすぐ目視できる範囲に入ると思われます。」

 翌日エーデルワイスはエリンに最も近しい軍事施設エリアAAAを目視できる位置にまで来ていた。

 燃料の切れた長距離用ブースターを切り離し通常の速度となってはいるがここまで来たらもうエリンとは目と鼻の先である。

 問題があるとするならば。

 「AAAがクーデターで掌握されてなければいいのですが。」

 「まずあり得んだろうな。」

 ジャックが望み薄な期待を込めて言うがアリックスはそれをすぐに切り捨てる。

 「逆に聞くが副長はここを無視できるか?」

 「…ありえませんね。」

 AAAには多くの部隊が駐屯しているだけでなく様々な兵器の実験もしている。

 それを放置するぐらいの敵ならやりやすいのだろうがそう上手くは行かないであろう。

 「前方に艦のエーテル反応です!!」

 オリビアが叫ぶと共にAAAから五隻ほどがこちらに向かって飛んでくるのが見える。

 「さて一体どう来る。」

 その言葉と同時に艦内に衝撃が走る。

 「どうした!!」

 「下からステルス機能のMTが撃った模様です!前方の艦も射撃準備に入っています!」

 「っ!口上も無しで有無も言わせずか!小隊は!?」

 「いつでも出れるようです!」

 「よし!MT部隊を出撃させた後、艦も迫ってくるものを迎撃しながら前進!よいか!この戦いに後退は無い!総員死力を尽くしユースティアを救うぞ!」

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