ナコの街2

猫大長老七宝

第1話街探検するよ! 1人でね!

 こんにちは、ナコです! 今日は本当に世界が何も変わっていないのか探検して回ろうと思います! 1人でね!


 今日は土曜日で学校はお休みです。とても天気がいいのですごーく気持ちがいいです。気持ちがいいと、自然と笑顔になって来ちゃいますよね!


「あっはっはーっ!」


 いつも元気な私の笑顔は周囲を巻き込むほどの力を持ってるの! 君の笑顔は病気なの? って? 失礼だね、そういう話をしてるんじゃないの!


「ぎゃー! 顔があぁぁぁぁあ! ⋯⋯かわいくなった」


 近くにいたおじいさんが騒いでいる。これは私のせいだ。私の笑顔が周囲を巻き込んだ結果こうなってしまった。


「ごめんなさいおじいさん、私が笑っている時半径3m以内に入ると全員同じ顔になるの」

 

「君の笑顔は病気なのか?」


 病気じゃねーよ。かわいくなったんだから有り難がれよな。と思ったけどとにかくジジイが騒いでいるので笑顔をやめることにした。


「ふぅ、助かったわい」


 助けてあげたわい。あ、よく見たらおじいさん社会の窓空いてる! 教えてあげなきゃどっかで恥かいちゃうよね!


「おじいさん、こんにちはしてますよ。社会の窓閉めてください」


「嫌です」


 ⋯⋯え? 頭が真っ白になってしまった。予想だにしない返答が返ってきたためだ。こういう時、人は固まる。そしてしばらくして、怒りが湧いてくる。


「なんで? わざと出してんの? 風通し良くしてんの?」


 イライラしてきたので少し強めに私は言った。


「うるさいのぅ、挨拶するのに理由がいるのか!」


『こんにちは!』


 どこから声が⋯⋯あっ!


『今日もいいお天気ですね!』


 ちんちんが喋ってる! ヤダー、キモーイ! こういう頭のおかしいおじいは無視してさっさと散歩の続き! 歩こうぜ!


 おや、小学生らしき子達がなにやらやっている。女の子が1人泣いていて、男の子が2人で言い争いをしている。制服着てるから最低でも小学1年生かそれより上なんだろうけど、こんなちっちゃかったっけ、かわいいなぁ。


「ちよちゃんのクレヨン舐めたのゆうすけだろ!」


「ちがうもん!」


 なるほど、泣いてる子がちよちゃんで、ゆうすけくんがクレヨンを舐めたと疑われているわけか。クレヨンって舐めて大丈夫なの? リコーダーって1年生だとまだ持ってないのか? いや、リコーダーなら舐めてもいいとかそういう話じゃないけどさ。


「だいたいなんでクレヨンなんだよ! あんなもん舐めて!」


 この子も私と同じこと思ってたんだ。実際どうなんだろ、おいしいのかなクレヨンって。


「ううう」


 ゆうすけくんも泣き出してしまった。ちよちゃんも泣いてるから大変だなもう1人のキミも。


「あ! 先生! ゆうすけがちよちゃんのクレヨン舐めたの! あれ材料なんなの?」


 先生に報告して怒ってもらうのかと思いきや、やっぱりそこが気になるのね。


「材料なんてないよ。一定の長さまで育ったら収穫される、天然物の野菜だよ」


 ま、まあ私も知ってましたけどね! 聞かれてないから答えなかっただけです。そもそも部外者の私が話に入る訳にもいかないしね。


「なんだ、よかったー!」


 ゆうすけくんが泣き止んだ。お前、クレヨンを舐めて大丈夫かどうかで不安になって泣いてただけなのかよ。ていうか、さっきは否定してたけどその反応見るとやっぱ犯人なんだな。


 ゆうすけくんとちよちゃんは先生に頭を掴まれて連れていかれた。ちよちゃん可哀想では? もうひとりの子は唖然としていた。


 やっぱり散歩は楽しいなぁ。家の中に居たら分からないことが分かるし、いろんな発見もあるし! よし、せっかくだしちょっと走るか!


「びゃああああああ!」


 ゆうすけくんが向こうから泣きながら走ってきた。先生ちゃんと捕まえとけよ。子どもは小さいから危ないんだよ。


「びゃああああああ!」


 ドーン! とゆうすけくんは私の足にぶつかってきた。私はバランスを崩し後ろ向きに転んでしまった。運悪く、後ろにはテトラポットがあった。


 後頭部を強打した私はその場から動けずにいた。ゆうすけくんは泣きながら何度も謝っている。すぐに起き上がって、大丈夫だよと言ってあげたい⋯⋯無理か⋯⋯身体が言うことを聞かない。


 頭と首に生暖かい感触がある。血が沢山出ているんだ。嫌いだなあ、血の匂い⋯⋯あれ? この匂いって⋯⋯

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