おもり
「ぇぇえええ!?だって僕まだ新人ですし、大した能力もありませんし!使える魔法だって『バイント』しか!」
スイッチは「まあ、落ち着け」となだめるがゼノの興奮は止まりそうにない。
「無理ですよ!そもそもなんで僕が!?」
スイッチはため息を吐くとゼノの方に向き直る。
「良いか?ゼノ、お前は《編集》を人一倍使うことが出来る特異体質なんだ」
「いやでも……」
しかしスイッチはそんなゼノの様子を気にする事無く続ける。
「それに、任務は司令部から指名で発令されているんだ……分かるだろ?」
(パワハラだ!!)
するとガラス越しに戦闘をしていたイウィンとフォルティの動きが止まる。どうやら勝負は決まらなかったらしい。
「チッ……時間か」
フォルティはそう言って大剣を背中に戻すと大剣は消え、イウィンもタブレットをほおり投げて消す。
「私の勝ちなのだ!アフタヌーンティーを奢るのだ!脳筋ッ!」
イウィンが笑顔とドヤ顔の中間の表情で笑いながら言う。
「ハッ!!俺の負けだと?!俺に一撃も加えられてねぇだろうが!!」
「アフタヌーンティー!アフタヌーンティー!」
「絶ッてェ奢らないからなッ!!待てコラッ!」
そんなフォルティの言葉を無視して、イウィンは猛ダッシュで訓練場を去って行く。
(自由だな……)
するとゼノの隣に居たスイッチがぼそりと呟く。
「アレで二人とも頭がマトモなら楽だったんだが……」
「……?」
(あれで頭がマトモなら……?)
「話を戻そう、ゼノ」
スイッチは真剣な眼差しでゼノの方を見つめる。
「命令が下った以上統制官であるお前は作戦に参加する義務がある、わかるな?」
「……」
ゼノは考える。そしてゼノの口から言葉が漏れる。
「もし……断ったらどうなるんですか?」
するとスイッチは小さくため息を着いてから答える。
「命令違反者は統制官の資格を剥奪されて元の世界に強制送還される」
「……そうですか」
(この世界から強制送還されたらどこに飛ばされるか分かったもんじゃないな……)
そんなゼノの不安を感じ取ったのかスイッチは肩に手を置いて言う。
「安心しろ、何も1人で敵の渦中に放り込まれる訳じゃない」
「仲間がいるって事ですか?」
スイッチが静かに頷くと共に観覧室の扉が開きある人物が入って来る。
「来たか、ユビキタス」
スイッチがそう言うとユビキタスがオリーブ色のコートを揺らしながら軽く手を上げて答える。
「よう、スイッチ」
パラレル・フロンティア 帽子の男 @BIIGBOUSHI
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