衝撃

イウィンが口を開く。


「ゼノの言う通りなのだ、こんな所で勝負するのは迷惑を考えないフォルティ並の脳筋だけなのだ」 「誰が脳筋だとコラ!!」


今すぐに爆発しそうなフォルティだが、しばらくすると、ため息をつきながら髪を搔き上げる。


「……そうだな、ここでやる程馬鹿ではないさ」


(い、意外と話が通じる?)


「だが、ゼノ……お前には見届けて貰うぞ」


「へ?」


ゼノの思考が纏まる前にフォルティに腕を掴まれて廊下を引っ張られて歩いて行く。


「ちょ!?待ってくださいよ!!」


「ゼノ、フォルティは誰かに見ておいて貰わないと勝負の結果を誰にも信じて貰えないのだ」


「……チッ!お前は後でぶん殴る!」


(助けて……)


そしてゼノはイウィンとフォルティに挟まれる形で訓練場へと引きずられて行くのであった。


━━━ 訓練場に着くと、ガラス越しの観覧室にて座るよう促される。


(よかった、別室だ)


その時訓練場の中の声がマイク?を通して観覧室に響き渡る?


「今日もやっていこうじゃないか?」


「本当にフォルティってボクの事好きなのだ、そんなに好きなら告白したらいいのだ?」


「ハッ!面白い冗談だな」


そして二人のOCO制服(デザインは少し違うが)を着た統制官が二人、対峙する形で並び、フォルティが背中に手を回すと大剣が現れそれを引き抜く。


「相変わらず、バカみたいな装備なのだこの脳筋」


そう言ってイウィンは手を正面に出すと、目の前にタブレット端末が現れて、それを手に取る。


「ハッ!お前はいつだって貧相な装備だな」


(僕は武器無いんだけど……)


するとフォルティは大剣を軽々と肩に乗せるとイウィンの方を指差して笑う。


「じゃあ闘ろうか」


「ふん!始めるのだ!!」


すると、ガラス越しの観覧室の中でブザーが鳴り響く。その合図と同時に二人は動き出した。


「先手必勝ッ!!」


フォルティはイウィンとの間合いを一気に詰めて大剣を真横に振り払う。「相変わらずバカの一つ覚えなのだ!」


イウィンが叫んで手を前に出したその瞬間


(能力!?いやでも──)


その時ゼノは視界に映るイウィンの行動に驚愕する。なんと大剣を素手で受け止めていたのだ。


(どうなってんの!?)


「だから言ってるのだ、同じ手ばかり」


そしてイウィンは大剣の刃の部分を軽く押すと柄を握っているフォルティの手も一緒に動く。そのまま振り払う様にして横へと大剣を弾く。


「ハッ!可愛くねェ力だ!」


「なんとでも言えば良いのだ、倒れない限りは勝ちなのだ!!」


フォルティは横に弾かれた大剣を再度持ち直し縦に振るう。その衝撃にガラスが震える程の威力だったが、イウィンはその場からひらりと身をかわし、大剣を避ける。


「それを避けた所で……」


フォルティの大剣は、地に着くとそのまま地面を抉り轟音と共に石や砂を飛び散らせる。イウィンは大きく後ろへ飛び退いている。


(魔法?能力か……?)


ゼノが考察をしているとゼノは後ろから話しかけられる。


「まだ、二人とも能力をちゃんと使ってないな」


「スイッチさん!?」


そこにはいつものノック式のボールペンを回しながら真剣な目付きでガラス越しの戦闘を眺めるスイッチがいた。


「久しぶりだな、ゼノ」


「お久しぶりです……えっと、元気でした?」


「相変わらずだよ」


スイッチはそう言うとため息を吐くする


「……ま、書類地獄ではあったがな」


「すいません……」


「何、気にするな、“一応”先輩だしな」


ゼノが何かを言う前にスイッチはいつの間に買ったのか、缶に入った飲み物を差し出す。


「とりあえず飲め、話がある」


「え?はい、ありがとうございます」


ゼノがプルタブを開けると中から泡立つ炭酸飲料が出てくる。


(おお!これは美味しそう!)


そして口に流し込むと微炭酸の刺激とほんのりとした甘味が広がる。


「美味しいですね!」


「だろ?ユビキタスの野郎は不味いって言うんだが、やっぱり美味いよな?」


スイッチは誇らしげな表情でまた缶を口に運ぶ。


「それで……話っていうのは……?」


するとスイッチの表情から笑顔が消え、真剣な表情に戻って行く


「ディヴィデの本拠地が発見された、数日後、掃討作戦が開始される」


「急展開!?」


「そして、その場にはゼノ……お前も参加する事になった」


「……えぇ」


ゼノは一呼吸置いてから大声で叫ぶ


「ええぇぇえええぇぇえ!?」

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