昔話の花咲かせ

 ☆☆☆

 宰相様とリーゼの暴走から2年がたち、

 周囲の者は何事もなかったように仕事をしていた。


 そんな中、一人のうわさ好きな侍女が真相を確かめるべく口を開いた。

「リーゼ様。宰相様と喧嘩した時の話をきかせて下さい」


 見習いとして傍に配属されたばかりのエレノアがすり寄ってきた。


「どこでそんな話を」

「その日に当番だった護衛官が話して下さいましたの。リーゼ様は凄かったって」

「その護衛官に直接聞けばいいじゃない」

「だってその方はリーゼ様に自分で聞けって教えて下さいませんもの」

「――解ったわよ。じゃあ宰相様に合う前も話さないといけないわ」

 リーゼは仕方なく重い口を開いた。

 昔話をはじめる。

「拾ってもらって侍女になって、宰相様が口に合わなくなって喧嘩というか――ってことがあってね」

 ざっくりと説明する。

 そこで話を区切り彼女を見上げれば眼を輝かせてこちらをみてくる。

「その後は、どうなったんですの?」

「ん~とね、その翌日。私、力ずくで宰相様のところまで言って謝ったかな。そしたら不敬罪って喚いてたくせにあっさり撤回しちゃって」

「リーゼ様は武術に秀でてらっしゃるからですわ」

「それなのよ。私が陛下のところまで行けったって言うことは警備が甘いってことなのよ。宰相様に警備を強化しろって言っても聞かないし」

「それはリーゼ様が国で一、二を争うほど強い方なんですもの。それを阻めるような軍作りは至難の業ですわ」

「そんなことじゃあいけないわ」

 侍女ははっとした。

「おい立ちを聞きたいのではなく喧嘩のことを聞かせて下さいませ」

「ん~ざっとは言ったし。あとは秘密。かな」

 付き人のエレノアの不満そうな顔をしているのを見てリーゼは朗らかに笑った。

 ☆☆

 陛下から呼び出された。

「リーゼとの仲はどうなのだ?」

「立派な主従関係を築いておりますが」

「いい加減、夫婦にならんのか」

「なりませんね。そもそも早くお世継ぎをおつくり下さい」

「出来ないやも。リーゼは遠縁には当たるが、血縁には変わりない」

「万が一のためにですか?」

「そうだ」

「いたしましょう」

 リーゼと宰相の結婚は国中から祝福された。

 その後、リーゼの子が至高の座に就くことになるのだが、

 それはまだまだ先のお話。


      


 END

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会いたくて、謝りたくて 完 朝香るか @kouhi-sairin

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