翌朝

 翌朝には取り上げられていた荷物がしっかりと纏められていた。

 とっとと出て行けと言わんばかりだ。

「『分かりました~』って言うと思ってるのかしらね」

 彼女は思い立ったらすぐに行動するタチだ。

 

 まずは、宰相様の居場所。

 これは誰に質問しても答えてくれた。

「あの方なら最上階の執務室に閉じこもって居られますわ」

「――なんですって?会いに行く? 止めなさい。ろくな事がないわよ」

 などと言った注告を受けたが気にはしてはいられない。

 そんなこと彼女には承知の上での行動だから……

 次に問題なのが入る方法だ。



「此処はあのお方しか出入りが許されてはいないのです」

 給仕であろう男に引き留められた。


「いえ宰相様より通行手形を受けております」


 代々木製の証明書は少し見せただけで信頼される便利なものだ。

「失礼いたしました。宰相様をお願いします」


 さすがに幾日も籠っているのだからもっともな心配だろう。


「素直に扉をあけてくれればいいけど。乱暴なことはしたくないわ」


 彼女得意の笑顔と方便で、宰相様の部屋に着く事ができた。


「宰相様、内密の用事がございますので扉をお開けください」扉の向こうから動揺でもしたのか何かに突っかかる音が聞こえる。

「……リーゼ。なんでここに?」

「とりあえず開けて?」

 返答なし。

「勝手に入らせていただきます」

 リーゼは深呼吸をして蹴りを扉に当てた。

 当然、扉は壊れ、中の様子が見えた。

 たくさんの紙に埋もれながらも驚いた宰相がいた。

「宰相様、ここの警備を見直したほうがいいわね。木の札ってだけで信用してしまうのはいけないわ」

「そんなことより何で来たんだ」

 問われて考えるよりも言葉が出ていた。

「謝りたかったから。ごめんなさい」

 やっと目を見て言えた。

 願いは叶う。いつかきっと。


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