第14話 舞踏会 演舞曲

ここは舞踏会。白いエンパイアドレスを着たイリアは見よう見まねでワルツを踊る。女装したネルーと一緒に。ちょっと速すぎですよイリアさん、そんなに焦らずに。ワルツは中庸の3/4拍子ですよ。ネルーはイリアの手を引きくるくると回る。


舞踏会の広間には、王子だけでなく、貴族もいる。なんなのかしらあのワルツは。格式の高いワルツは男と女で踊るもの。王子さまの子を産むだけの機械だけあるわね。


今日上演されるオペラは「今は亡き王女のパヴァーヌ」だそうよ。機械にはもったいないわね。


王子と踊っていた貴族の女が王子を抱擁しようとすると、王子はその女を短刀で殺した。私の抱擁をそんなに受けたいのかね。売女め。


そうこうする内にオペラが始まる。「今は亡き王女のパヴァーヌ」これは小国の王女が、政略結婚するはずだったが裏切られ、祖国を滅ぼされ、修道院か娼館かを選ぶ話だ。祖国への復讐のため、彼女は娼館を選び、名のある貴族に取り入ることにする。最後に祖国を滅ぼした王子は、法の下で裁かれることになるが、目的を果たした彼女は死に、棺に花びらを積まれ、大河を流れていく。眠るように死んだ彼女を、刑場に行く前の王子が優しく見守り、終わる。



最後の独唱 王女


「私は、いつだって1人だった。王女だった時も、あの王子を裁いた時も。ここには、信じられるものなんて何もない。さよなら私の国よ。我が帝国よ、永遠なれ。」


王女はナイフを首元に持ち、死んだ。周りの貴族達がざわめくが、もはや彼女に触れるものは誰もいない。


「私は愛されたかったのよ。あなたに。」


既に死んだ彼女を王子が腕で抱いている。王女は眠るように死んでいる。棺に彼女と花びらを乗せ、大河に流し、王子は刑場に向かう。



序曲とアリアが終わり、ああ!まるで王子様みたい!と貴族の女達は口を揃えて言う。先程、同じ貴族の女が殺されたばかりなのに。彼女達の近くでは香が焚かれ、判断力を奪われている。


イリアさん、この香は魅惑の効果があります。さっさとここから出ましょう。貴方の部屋にも同じ香があるはずです。さっさと破壊して逃げましょう。


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