太鼓の音と巨人の足
深川我無
太鼓の音と巨人の足
子どものころの話
私と家族は
小さなアパートに住んでいました
部屋は3つ
1つは台所兼リビング
もう1つの部屋は畳の部屋で寝室
もう1つは荷物の部屋
それとは別に風呂とトイレがありました
台所兼リビングと寝室は仕切りがなく
寝室で眠っていると
リビングにある電話機が見えます
電話機はいつもなら
緑色のランプがついています
留守電が入ると
赤いランプが点滅します
その日の夜も
電気を消して眠るときには
暗い部屋の中豆球の明かりと
緑色のランプが光っています
真夜中にふと目が覚めて
横になったままの姿勢で
何気なく電話機に目をやると
見たこともないオレンジ色のランプ
それもなぜか2つ
チカチカと点滅しています
あれ?
と思って身体を動かそうと思っても
身体がピクリとも動かきません
声も出せません
大きくなってから
あれは金縛りだと知りましたが
小さなわたしは
どういうことか理解できず
ただただ
成り行きに身を任せていました
すると
ドッ
ドッ
ドッ
ドッ
太鼓の音が聞こえます
ドッ
ドッ
ドッ
ドッ
太鼓の音が大きくなってきます
さすがに怖くなってきて
目をつむろうと思いました
目をつむって
太鼓の音をやり過ごしました
太鼓の音が聞こえなくなったので
様子を見ようと目を開けると
巨大な足が
私の周りを取り囲んでいました
そこでわたしは意識を失いました
次の朝目が覚めると
巨人の足の痕跡などなく
母も父も
何も知らない様子でした
あれはなんだったのか
幼い頃の遠い記憶です
太鼓の音と巨人の足 深川我無 @mumusha
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