第三百四十一話 マグヌス茸
まずはマグヌス茸を生のまま口へと入れ、その後二本目のマグヌス茸に手をかざした。
【名 前】 マグヌス茸
【レベル】 61
【効 能】 疲労回復(低) 旨味(中)
【繁殖力】 低
【自生地】 天爛山
鑑定結果が出たが……効能についてはなんとも言えない結果だな。
使えるといえば使えそうではあるが、戦闘に活かせるかと言われれば無理と断言できる効能。
グルタミン草よりも旨味成分は低いけど、グルタミン草にはない疲労回復効果が付いている。
美味いキノコを食べるだけで疲労が回復すると考えれば、決して悪くないといえるって感じの効能だな。
思っていたのとは少々効能が違ったが、旅の道中での食事に入れるのはアリだし、ここで鑑定することができたのは意外と大きいかもしれない。
魔王の領土に入れば街での食材等の買い物は不可能だろうから、食事の材料は全て現地調達となる。
そんな中で美味しく疲労も回復するキノコを生成できるのは、大きなアドバンテージと言えるはず。
俺はマグヌス茸についてそんな分析をしながら、天爛山の山頂付近でマグヌス茸の採取を行い続けた。
山頂付近に辿り着いてから、約二時間ほど。
依頼で出されていた数は計三十本だが、既に六十本ほどの採取が完了している。
俺のこれまでで培われた採取能力が如何なく発揮され、すぐにマグヌス茸の生える場所の条件が特定ができ、僅かな時間でこれだけのマグヌス茸を採取できた。
一応ギルドに持っていき、追加で買い取ってくれる且つ報酬金額と同額に近ければそのまま買い取ってもらって、ブラックキャップのように追加報酬なしであれば自分で使うとしようか。
キノコは乾燥させるとより旨味が凝縮され、スープの出汁としても利用できる上にスープで戻すことによりキノコ自体も食すことができる。
更に保存できる期間も格段に伸びるため、乾燥キノコは魔王の領土に持っていくには優れた食材。
ブラックキャップの耳とは違い、他の使い道があることがこんなにもありがたいなんてな。
天爛山までの道中は長かったし魔物も多く存在して移動も大変だったけど、依頼に対する負の感情はほとんどない。
魔王の領土への道の下見もできたし、使い勝手の良いマグヌス茸も大量に採取できた。
かなり良い依頼だったとほくほく気分で、俺は天爛山を下山して都への帰路に着いた。
俺は無事に天爛山を下山し都へと帰還することができ、依頼達成報告を済ませてからディオンさんと合流していた。
昨日は植物生成を行ったせいで気を失う形で眠りについてしまったため、一緒に食事を取ることができなかったのだが、今日は軽い報告も兼ねて食事をすることになっている。
「ルイン君、お疲れ様です。依頼から帰ったところですか?」
「お待たせしてすいません。はい、先ほど戻ってきて報告を済ませたところです」
先に定食屋にて待っていたディオンさんに軽く謝罪をしてから、俺は店員さんに素早く日替わり定食を注文した。
今日は何も食べていなかったためお腹がペコペコだし、少しでも早くご飯が食べたい。
店外にも良い匂いが漏れ出ていたせいもあり、空腹でお腹がぎゅるぎゅると鳴っている。
「私とスマッシュさんは休憩を頂いているのに、ルイン君にだけ働かせてすいません」
「いえいえ。俺が好き好んで依頼をこなしているだけなので、ディオンさんは気にしないでください。それよりも……スマッシュさんは何をしているんでしょうか? 都で別れてから一度も会ってないんですよね」
「うーん……。私も会っていないので、スマッシュさんの動向については分からないんですよね。まぁですが、いつもあんな感じなので気にしないで大丈夫だと思いますよ。期日になったら顔を見せると思います」
ディオンさんも会っていないのか。
流石に心配になってきたところだったけど、ディオンさんがこう言うのであれば気にしなくていいのかな。
「それじゃ二人だけで報告会をしますか。まずは……俺から報告させて頂きますね」
「はい。お願いします」
それから俺は、ディオンさんに『遊蛍堂』の店主さんから借りた本の内容と、今日依頼で向かった天爛山についてを話した。
本に記載されていた重要な情報は全て記憶してはいるが、ディオンさんにも読んでもらうべく本もこのタイミングで手渡した。
「なるほど……。そんな重大な情報が記載されていたんですね。それで今日、実際に天爛山の依頼を受けて確かめに行った――と」
「そうです。本当かどうかも気になりましたし、先に一目は見ておこうと思ったので」
「それで、実際に魔王の領土へと続く洞穴もあったんですよね? 本当に大収穫じゃないですか! なんだか、ルイン君一人にここまでやらせてしまって本当に申し訳ない気持ちになります」
「そんなことないですよ! 俺が勝手に調べたことですし、ディオンさんは気にしないで大丈夫です!」
「そう言ってもらえると本当に助かります。……遊び歩いているスマッシュさんに、ルイン君の爪の垢を煎じて飲ませてあげたいですよ」
俺に対して申し訳ない表情を見せつつ、そんなことをボソリと漏らしたディオンさん。
決して二人を責めるつもりで調べた訳ではないし、俺は話を逸らすためにもディオンさんの報告を聞くことにした。
「そ、それよりも、ディオンさんの報告ってなんだったんですか? 何か良い物が手に入ったとかでしょうか?」
「ルイン君のように裏が取れている情報じゃないのですが、『生命の葉』についての情報を手に入れたんです。ちょっとこれを見てもらってもよろしいですか?」
そう言われ、ディオンさんに渡された一枚の紙を見てみると、かなり写実的な植物の葉の絵が描かれていた。
もしかしてだけど……この植物が『生命の葉』なのか?
「ディオンさん。この植物って『生命の葉』でしょうか?」
「その通りです。あの大きな寺院で働いている人と話すことができまして、この絵を少し貸してもらえたんです。信憑性は高いと思いますが、この植物が本当に『生命の葉』かどうかは不明なんですけどね……」
「いやいや、凄いですよ! 『生命の葉』についての絵が残されていたなんて思いもしなかったので! この絵が空想のものだったとしても、手掛かりがあるかどうかで大分違いますから! ディオンさん、ありがとうございます!」
ディオンさんはかなり謙遜していたが、これは重大な情報だ。
『生命の葉』についての情報はかなり抽象的なものでしか分かっていなかったし、寺院や『遊蛍堂』の店主さんの絵では創作物の域を出ていない絵だった。
手当たり次第植物を採取しては鑑定しようと考えていたぐらいだし、この情報は本当に大きい。
「そこまで喜んでいただけたならよかったです。あまり重要な情報ではないと思っていたのですが、この絵でも手掛かりになるんですね」
「大きな手掛かりですよ! 魔王の領土での『生命の葉』探しも、かなり希望が見えてきました!」
そこからは集めた情報に興奮しつつ、俺とディオンさんは借りた本を開きながら閉店時間まで語りつくしたのだった。
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