第三百三十九話 情報収集
ゴブリンの巣へ乗り込み、ブラックキャップを討伐してから都へと戻ってきた。
既に日は落ちかけており、午前中にサクッと依頼をこなすという俺の予定はあっさりと崩れてしまった。
それに、あのゴブリンの巣にかなり長いこと居たため衣類に付着した臭いが相当キツいらしく、入門検査を行ってくれた門兵さんに凄まじい顔で見られた。
遠回りになってしまうが一度宿に戻り、シャワーと着替えを行ってから依頼達成報告に行こうか。
シャワーと着替えを行いすぐに部屋を出たつもりだったが、辺りはすっかりと暗くなってしまっている。
ブラックキャップ自体の討伐は大変ではなかったが、その他の段取りが悪く時間がかかり過ぎてしまったな。
体はほとんど疲れていないのに一日が終わってしまったことに対し、かなりのもったいなさを感じつつも俺は冒険者ギルドへ向かう。
ゴブリンの巣では念のため、ブラックキャップ八匹全ての左耳とレッドキャップ十匹の左耳を剥ぎ取ってある。
追加報酬はないと事前に言われているが、巣ごと潰した訳だし何かしらの評価に繋がって報酬を上げてもらえる可能性を期待していたのだが――。
「ブラックキャップの討伐を確認できました。こちらが報酬の金貨二枚です。今回は誠にありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
受付嬢さんの反応も特段何もなく、金貨二枚を受け取って終了。
金貨二枚を握り絞めたまま何とも言い難い虚しさを感じつつ、露店で安くて手頃な料理を購入してから再び宿屋へと帰ってきた。
……うーん。初めての依頼だったけど手ごたえが悪すぎたな。
達成感もないし、お金も稼げなければ成長できた実感も皆無。
椅子に座りって露店で買ったご飯を食べつつ、今日の依頼についてを振り返っていく。
俺にあった落ち度といえば、依頼内容についての情報集めを怠ったこと。
とはいっても、ブラックキャップ討伐についての情報を集め、巣の位置が二十キロ先の林に存在するから依頼を受けるのをやめる――なんてことはできない。
依頼について受付嬢さんから詳しく聞くことも、掲示板から選択するというシステム上難しい。
俺が今回の依頼で時間を短くできた箇所といえば、商人からブラックキャップの巣の位置を聞き出すまでのあの一時間だけ。
一時間短くできたとて、効率が非常に悪いということには何の変わりもないし、依頼については旅先で行うものではないと判断してもうやめるか?
食事を取りながら頭を抱えて悩み、結局明日の天爛山の採取依頼までは行うことに決めた。
しっかりと準備を行いマグラヌ茸の情報も集めて、依頼が主ではなく下調べのつもりで向かえば一石二鳥で済むはず。
そう自分の中で決定し、寝る前までの時間を使って久しぶりに植物生成を行ったのだった。
翌日。
ベッド付近に散乱している昨日生成した魔力草を搔き集めてから、依頼へ向かうための準備を行っていく。
この魔力草については、マグヌス茸とは別で冒険者ギルドに買い取ってもらう予定。
ギルドで買い叩かれたとしても一本銅貨一枚で買い取ってもらえるだろうし、昨日は寝る前の一時間ほどで百本ほど生成した。
こんな雑な仕事で金貨一枚分の稼ぎだし、やっぱり一日で金貨二枚は引っかかってしまうよなぁ。
魔力に限界があるとはいえ一日で二百本は生成できるだろうし、明日からは魔力草を生成してギルドに売りつつ、スパイスとグルタミン草を朝市で売ってみようと思う。
あまり悪目立ちはしたくないため、スパイス等の方は売る寮を少量に抑えつつ金策に走る予定。
そんな明日のからの予定についてを考えつつ、俺は冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドは昨日同様に空いており、依頼掲示板にはまだ天爛山の採取依頼が張り出されていた。
二度目となるため手慣れた手つきで依頼を受注してもらい、これで後はマグヌス茸を採取し戻ってくるだけ。
さてと、重要な情報集めについてなんだけど、冒険者ギルドの買取受付で聞いてみようと思っている。
買取受付の人は、植物等に詳しいと相場が決まっているからな。
昨日生成した魔力草を売りつつ、その間の雑談でマグヌス茸についてを聞き出すつもりでいる。
もし情報が集まらなければ薬屋巡りをするつもりだけど、多分大丈夫なはずだ。
入口から一番遠く、冒険者ギルドの一番端っこにある買取受付。
俺はそこの受付の前へと立ち、置かれたベルを鳴らしてからしばらく待機する。
しばらくしてギルドの奥からやってきたのは、酷い寝ぐせの如何にも眠そうなおじさん。
グレゼスタで買取を行ってくれたギルド長とは違い、細見で不健康そうというのが第一印象だ。
「朝から買取とは随分と珍しいね。それで何の買取なのかね?」
「魔力草を買い取ってもらいたくて来たんです。この袋に入っているんですが、買取お願いしてもよろしいですか?」
「魔力草かい。随分と量があるみたいだけど、魔力草なら全て買い取らせてもらうよ。一度、中を全て確認するけど大丈夫かい?」
「もちろんです。お願いします」
軽い会話を挟んでから、俺は寝ぐせのギルド職員さんに魔力草の袋を手渡した。
ギルド職員さんはもう一つ同じ大きさくらいの袋を取り出すと、そっちの袋に移し替えつつかなりの速度で確認作業を行い始めた。
「……うーん。どれも質はあまりよくないね。これどこで採取してきたんだい?」
「東の街道の先にある林です。実は旅の途中でこの都に立ち寄ってまして、質についてはこの辺りについて詳しくないのが原因かもしれません。ついさっきもマグヌス茸の採取依頼というのを受けたのですが、ギルド職員さんってマグヌス茸について何か知ってたりしませんか?」
ギルド職員さんの質問に対し、自然にマグヌス茸についてを質問できた。
心の中でガッツポーズをしつつ、俺は寝ぐせのギルド職員さんの返答を待つ。
「マグヌス茸? あー、天爛山のキノコか。標高の高い場所にしか生えないキノコだったはずだ。天爛山は危険な魔物も多くいるし山登りも大変。なんといっても、そのすぐ先は魔王の領土だし不人気な依頼だよ」
「そうだったんですか。採取依頼で報酬も高いから美味しい依頼だと思ったのですが、不人気な依頼なんですね」
「まぁ天爛山の山頂付近までいければ、よく見かけるらしいし実力があるなら大丈夫なはずだ――っと、魔力草の鑑定が終わったよ。買取不可も高価買取もなしで、合計金貨一枚での買取になるけどどうする?」
「それで大丈夫ですので、買取お願いします!」
良い情報を聞きだすことに成功しつつ、買取も行ってもらえた。
買取金額についても文句ないし、昨日とは違って良い時間の使い方ができたな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます