第二百三十三話 パーティメンバーとのお買い物


 昨日と同じように朝のルーティンを終えてから、集合場所であるメインストリートの噴水広場へとやってきた。

 集合時間よりも大分早く着いたため、一番乗りは俺のようだ。


 この噴水前は待ち合わせスポットとして人気なのか、入れ替わり立ち替わり人が入れ替わっていく中、俺も二人の到着をジッと待つ。

 俺の顔も売れてきたといっても、この人通りの多い場所で服装や装備も普通だったら流石に気づかれることもなく、二人が来るまで声をかけられることなく待つことができた。


 そんな噴水前に最初にやってきたのは、ロザリーさんだった。

 俺が合図を送る前にこちらに気が付いたようで、ロザリーさんの方から寄ってきた。


「お、おはようございます。お、お待たせしてしまいましたか?」

「ロザリーさん、おはようございます。いえいえ、待っていませんので大丈夫ですよ。アルナさんはまだ来てませんしね」

「そ、そうですか。それなら良かったです」


 申し訳なさそうにしているロザリーさんに声をかけ、俺はその姿を上から下へと見る。

 当たり前だが、いつものカッチリとした皮の鎧ではなく、薄い赤色のニットのシャツにネイビー色のフレアスカート。

 全体的にゆるふわしていながらも、ブラウンのオシャレなローファーのお陰でキッチリとまとまっており、ファッションに関して疎い俺でもオシャレだと分かるセンスの良さが伺える。


 冒険者姿でしか関わっていないため、服装だけでも別の一面が見れるとなんだか面白いんだよな。

 黙ってジロジロと見てしまったからか、ロザリーさんが少しどぎまぎし始めてしまったのを見て、俺は慌てて話を振る。


「休日なのに来てもらってすいません。この日の分のお金は払っていませんから、実質ただ働きなのに……」

「い、いえいえ。気にしなくて大丈夫です。わ、私が自主的に来たんですから。それに、ジェイドさんとアルナさんと一緒にお買い物できるのを楽しみにしていましたので」

「本当ですか? 俺もロザリーさんと一緒に買い物できるの楽しみにしてたので、そういってもらえて嬉しいです!」


 それから、軽く緊張がほぐれた様子のロザリーさんと様々な会話をした。

 ランダウストに至るまでの経緯、冒険者ギルド職員としてのこと、もちろんダンジョンのことも話し、アルナさんを待っていると……。

 予定時間から数分遅れでアルナさんが、噴水前にやってきたのだった。


「ごめん。寝坊した」

「全然大丈夫ですよ。ロザリーさんとお話ししてましたので」


 そんな遅れてやってきたアルナさんの服装は、ダークブラウンのカーデに緑色のスキニーパンツ。

 スタイルの良さが前面に押し出されていて、華やかなオーラで近寄りがたいほど。


 二人と見比べ、俺だけもっさりとしたボロボロの服なのが、だんだんと恥ずかしくなってきた。

 ライラとニーナと買い物したときはあまり思わなかったけど、ディオンさんおすすめのお店で服を買うべきだったなぁ。


「まずどこから行く?」

「そうですね……雑貨屋から回りますか? 小物から買っていって、最後に大きいのを買いましょう」

「お、大きいの先に買っちゃうと邪魔になりますし賛成です」

「ん。じゃあ雑貨屋から行こう。ただ、武器屋も見たい」

「ええ。時間もありますし、色々なお店を回りましょう。ダンジョン攻略とか関係なしに、お二人のオススメのお店とかも知りたいですし」

「い、いいですね! 私も二人の行きつけのお店知りたいです」


 こうして最初に行くお店が決まったところでロザリーさん案内の下、とある雑貨屋さんへとやってきた。

 てっきり大通りにある雑貨屋さんだと思っていたが、メインストリートからも少し外れた場所にある、ちょっと古びた様子のお店。


「大通りのところじゃないんですね」

「私もそこだと思ってた」

「あ、あそこも品ぞろえがいいのでよく行きますが、質も値段もここのお店の方がいいんですよ」

「へぇー。ここに雑貨屋さんがあること自体、知らなかったです」


 ロザリーさんを先頭に中に入ってみると、『エルフの涙』と同じように扉に取り付けられたベルの音が店内に響き渡る。

 その音に反応してか、奥から顔をのぞかせたのは優しそうなおじいさんだった。


「おんや、ロザリーかい? お友達と一緒とは珍しいね」

「ノディさん、おはようございます。今日は一緒にダンジョンを潜ってる仲間と一緒に来ました」

「そうかいそうかい。ゆっくり見て行ってな」

「ありがとうございます! 見させて頂きます」


 ロザリーさんはおじいさんと楽しそうに挨拶を交わすと、そのまま店内を案内してくれた。

 結構広い店内なのだが、ロザリーさんは商品の位置を全て把握しているようで、本当に行きつけのお店だということが分かる。

 おじいさんと話しているときも全くどもっていなかったし、信頼を置いてるみたいだったしな。

 

「簡易的な食器とか調理器具もあるんですね」

「え、ええ。も、持ち運びしやすいようにもなってますのでオススメですよ」

「買ってもいいかもですね。このランプも良さそうです」

「あっ、そ、そっちのランプよりもこっちのがオススメですよ」

「ロザリー。いい手袋が欲しい」

「て、手袋ですね。こ、こっちにコーナーがありますけど……おすすめはこの手袋です! 実際に着けてみて決めてください」


 まるで店員さんに質問するかのように、俺とアルナさんはロザリーさんに質問をしまくりながら、必要な商品を買い込んでいった。

 ロザリーさんの言っていた通り、値段も安く質もかなりいいものが揃っており、1軒目から非常に満足のいく買い物を行うことが出来たのだった。


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