百七十七話 購入した商品の確認


 『ぽんぽこ亭』へと帰宅した俺は、フロントで手続きを終えてから食堂で夜ご飯を食べ、早々に部屋へと戻った。

 部屋に置かれた大量の荷物を見て、思わず顔が緩んでしまう。

 

 本日買った商品を部屋に並べ、しばらくその光景を眺めて満喫したあと、早速商品の確認作業を始めた。

 まずは『まんまる印の雑貨店』で購入した商品。

 

 『まんまる印の雑貨店』で購入した商品のほとんどが、用途の分からない物ばかりのため、しっかり判別を行っていきたい。

 部屋に並べた商品を端から一つずつ手に取る。


「これは……普通のコップかな?」


 まず手に取ったのは、見た目はシンプルなタンブラー。

 ワンポイントでトレードマークのまんまる印が描かれているが、それ以外は特に何の変哲もないタンブラーにしか見えない。

 

 コップは使えるだろうと思って買い物かごに入れたのだが、冷静に考えたら値段の高いだけのコップは使えないものだよな。

 のぞき込んで見たり、軽く叩いてみたり。

 色々と試してみたのだが、結局変わった箇所も見つからなかったため、俺は水をこのタンブラーに入れてから次の商品の確認へと移る。


 次に手に取ったのは、丁度片手で持てるサイズの真っ黒なボール。

 全く同じサイズものであれば、恐らく石と同じくらいの重さだろう。

 こちらのボールにもタンブラー同様に、トレードマークであるまんまる印が白く印字されている。


 綺麗な球体なのは芸術的だとも思えるが、何に使うかは全く見えてこない。

 投げればよく飛びそうだけど、ボールを投げたとこでなぁ……。

 二つ目も結局、じっくり観察はしてみたものの用途が分からず仕舞いだった。


 三つ目に手に取ったのは、見るからに怪しげな模様の描かれた箱。

 表面には縛りつけられた人間らしきものと、それを囲い笑顔を浮かべている複数の人間らしきものが描かれていて、箱の背面には三つ首の魔物が大きく描かれていた。

 まんまる印が描かれているだけのシンプルな商品の中で、奇妙で奇抜なデザイン且つ、在庫が残り一つだったこの商品に目がいき、俺はほぼ衝動買いでこの怪しげな箱をかごへと入れたのだが……。


 箱の中身はからっぽ。

 サイズもさほど大きくない上に、パカパカと蓋が閉められないようになっているため、入れ物としても落第点。

 何よりも初めて見た時は目を引いたが、この絵柄は流石に不気味だし完全に失敗だった。


 『まんまる印の雑貨店』の商品を確認し始めてから、これで三個目なのだが……どれもハズレ商品としか言いようがないほど、何の特徴もない商品ばかりだ。

 この三つの商品の合計金額が金貨6枚ほどだったため、その金額の大きさにもダメージが大きい。


 衝動買いの恐ろしさに頭が痛くなる感覚を覚え、俺は一度落ち着くためにタンブラーの水を一気に煽る。

 ……が、先ほど入れた水が口に入ることはなく、タンブラーからは冷たい冷気を感じるだけ。


 不思議に思った俺は、すぐにタンブラーの中身を確認したのだが、なんと先ほどタンブラーに入れた水は固まり、氷となっていた。

 水を入れてから数十分しか経過していないのに、氷となって固まっている。

 何がどうなっているのか一切分からないが、とにかくこのタンブラーは中に入れたものを凍らせることが出来る代物のようだ。


 用途に関してはあまり思いつかないが、ただのタンブラーではなかったというだけで得した気分になり、滅茶苦茶嬉しい。

 お金の無駄使いではなかったという気持ちと、他の二つの商品についても何かしらの特別な効果があるかもしれないという期待感が芽生える。

 俺はタンブラーの氷に水を入れて飲んでから、気合いを入れて商品確認の続きを行うことを決めた。

 


 それから約1時間ほど商品を確認し、『まんまる印の雑貨店』で購入した商品の全てを確認し終えた。

 結局、水を入れたら氷となるタンブラー以外、特殊な用途を見つけることが出来ず、一つを除いては依然として用途の分からないままとなってしまっている。

 そもそも、値段が高いから特殊な用途があると思いたいだけで、タンブラー以外は特殊な機能が付いていない可能性も十分にあるんだけどね。


 そんな事実に目を背けながら、俺は腰に着けたホルダーを確認する。

 このホルダーは、今回買った商品の中で唯一使えそうな商品。

 

 質の高い皮製の丈夫なホルダーで、今まで使用していたホルダーよりも収納できる箇所が格段に多く、サイズ調整も自在に行える逸品。

 俺は細いからか、今まで使用していたホルダーは、一番小さなサイズでも緩さがあったのだが、このホルダーは完璧に体にフィットしている。


 このホルダーに関しては、唯一購入前から当たり商品だと思って購入していたが、実際に身に着けてみて想像よりも質の高いものであった。

 ホルダーが当たりだっただけで自分的にはかなり大満足なのだが、どうしても考えてしまうのはこのホルダーが一番安い商品だということ。


 まあ、決して安い金額ではないのだが、他の訳分からない商品の方が値段が高いという事実が、どうしても心に引っかかってしまう。

 だからこそ、他の商品は何かしら別の用途があると思うんだけど……。


 今の俺では到底分かりそうにないため一度保留とし、本命である『グリーンフォミュ』で買った植物とポーションの確認へと移ったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る