第百七十五話 様々なポーション
俺はひたすらに『グリーンフォミュ』の植物を鑑定して回った。
傍から見たら商品棚に置かれている植物に、ずっと手をかざして回る危険人物に見えるだろうが、一本一本変化が大きく鑑定が楽しくなってしまったのだから仕方がない。
そして数時間にも及ぶ鑑定で分かったことは、値段が高い植物ほど変化の大きさが際立つということ。
つまりはコルネロ山で採取出来た平均レベルが、その植物の適正レベルだとしたら、その適正レベルが高いほど変化量も増えるのだと思う。
仮にダンジョン産のダンベル草があったとすれば、とんでもない変化が期待できると思うのだが……当然のことながら、ここ『グリーンフォミュ』にもダンベル草は売られていなかった。
とりあえず種類ごとのレベルが高い上位3本は、買い物かごへと入れていく。
あとは未鑑定植物をどうするかなのだが……高値で売られている植物以外は全部買おうかな。
現状、手が出せないほどの高価な植物はスプリング草、エンデュ草、クラック草、リジェネ草の4種類。
特にリジェネ草とスプリング草は1本で白金貨5枚以上と、『エルフの涙』で一番高値で売られていたイミュニティ草の5倍の値段だった。
これだけ高価だと詳しい効果を喉から手が出るほど調べたいが、今の手持ちの合計が白金貨2枚ほどと、絶対に購入することが出来ない値段。
『まんまる印の雑貨店』で、衝動買いする前でも手が出ない値段だったし、今の俺では不釣り合いな商品だと思って諦めるしかない。
ひとまず植物を入れたかごを持って会計を済ませ、残金の確認を行おう。
植物の値札を確認する限り足りないということはないのだが、手持ちに余裕はないからな。
白金貨4枚分は持っているし、【プラントマスター】でお金も稼げるから金銭に関しては心配いらないと思っていたが、予想以上に爆買いしてしまった。
手持ちを考えると、ここ『グリーンフォミュ』が今日回れる最後のお店となりそうだ。
俺は『まんまる印の雑貨店』の無駄な買い物に三度目の後悔しつつ、お会計を済ませる。
購入した植物の合計金額は金貨8枚分で、残りの所持金は約白金貨1枚と金貨2枚分。
白金貨1枚分は念のために持っておきたいし、やはりここで今日の買い物は終了か。
そんなことを考えながらお会計を済ませた植物を受け取り、俺はポーションエリアへと向かう。
ダンジョン産の植物がこれだけのバラつきがあった訳だし、ポーションの効能も変化があったりするのだろうか。
ポーションに関しては鑑定ができないから詳しい効能は調べられないし、正直ポーションにも効能にバラつきがあるのだとしたら、大事な場面では怖くて使用できそうにないのが本音だけど。
えーっと……。ここが回復ポーションのエリアか。
しっかり低級、中級、上級と品質ごとには分けられているが、バラつきがあるのかどうかについては分からない。
まあでも、ポーションは合計レベルで品質が変わるのを検証済みだから、大幅なバラつきはないとみていいのかな。
とりあえず、調べるといった意味で低級回復ポーションをかごに入れて、後は変わったポーション探しを行う。
魔力回復ポーション、ポイズンポーション、ストレングスポーション、爆発ポーション。
俺がよく知っているポーションが、手前にかなりの在庫がある状態で並べられており、奥には俺の知らないポーションが細々ながらもかなりの種類置かれていた。
様々なポーションを眺めていて、特に気になったのは暗視ポーション。
このポーションを使用すれば、一定時間だが暗い場所でも視えるようになるらしい。
ダンジョンはかなり暗く、視界の悪さ故に攻略し辛い部分が大きかったし、このポーションは使えると思う。
あとは、身体能力を一時的に高めるスプリングポーションとアジリティポーションの二つも使えそうだが、値段的に手が出せない。
逆の身体能力を一時的に下げるスロウポーションと弱化ポーションの二つも、使えそうだが同様の理由で手を出すことが出来ない。
色々と見て回ったが、やはり一番使えそうなポーションは暗視ポーションかな。
値段も銀貨8枚とポーションにしてはお手頃だし、一本だけ購入しよう。
俺はどんなポーションが売れられていたかを忘れないようにし、低級回復ポーションと暗視ポーションの支払いを済ませてから、二階へと向かった。
『グリーンフォミュ』の二階は、綺麗に陳列されていた一階とは違って、倉庫のように乱雑に商品が置かれている。
埃を被っている商品も多く見受けられ、一風変わっている商品故に長年売れていないことが分かった。
実際に見ただけではどんな用途で使うのか分からない商品ばかりだし、どれもいい値段をしているのが売れない理由だろう。
じっくり見ても仕方がないし流し見程度に留めながら、俺はお目当ての醸造台を探して倉庫のような二階を彷徨った。
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