第百七十四話 お宝探し


 行列に並んでから、約1時間ほど。

 少しずつ列が前へと移動し、ようやくお店の入口に辿り着いた。

 折角長いこと並んだのだしゆっくりと商品を物色したいのだが、俺が並び始めた時よりも、更に倍ほどの行列となっているため、後ろの人のことを考えるとあまり長居はしたくないな。


 人気店と聞いていたため、無計画で一番初めに訪れてしまったが、もっとしっかり下調べしてから来れば良かったと、お店の入口を前にして後悔をしている。

 ただ、ここまで来たのであれば、余計なことを考えるだけ無駄。

 お金にはまだ余裕があるため、とにかく気になった品は購入しよう。


 そう決めて店内に入ると、中はロープのようなもので区切られていて、列を崩さずに店内をぐるりと一周見て回れる作りとなっていた。

 店内が混雑しないように、そして全ての商品を見れるように工夫がしっかりとされているんだな。

 

 『まんまる印の雑貨店』の工夫に関心しつつ、列に並んで歩きながら、色々な商品を手に取っては買い物かごへと入れる。

 商品が‟なにか”に関しては、今は考えない。

 絶対に必要がなさそうな商品以外は、とにかくかごへと入れて店内を練り歩く。


 禍々しい液体、お洒落な箱、怪しげなステッキ。

 広くない店内なのに店内を一周する頃には、満杯となってしまった買い物かご。

 人気店だけあって決して安くはなかった商品だけに、合計金額に少しビビりながらも、列の最終地点となる売買を行うカウンターにかごを置いた。


「いらっしゃいませ。すぐに合計金額の計算をさせて頂きますね」

「よろしくお願いします」


 俺の渡したかごを受け取った従業員さんの一人が、熟練味を感じる手つきで商品の確認と計算を行っていく。

 その無駄の一切ない手つきに見惚れていると、数十秒ほどで全商品の計算が終わったようだ。


「合計金額は白金貨1枚と金貨5枚、そして銀貨5枚となります」


 値段の高さと、計算のあまりの速さに間違っていないか不安になるが、疑っても仕方がないし俺がこの速度で計算なんてできるはずもないため、大人しくお金を手渡す。

 一応値札を見ながらかごには入れていったのだが、予想以上の金額になってしまった。

 こういった人気店だとやっぱりこの商品はやめますとも言いづらいし、やはり下調べしてから来るんだったなぁと早くも二度目の後悔をしつつ、俺は大量のアイテムを持って『まんまる印の雑貨店』を後にした。


 さて、一軒目から予想以上の大荷物となってしまったな。

 これは一度『ぽんぽこ亭』に荷物を整理しに戻った方が良さそうだ。

 買った商品の確認は夜に行うとして、部屋に荷物だけ置いてすぐに二軒目のお店へと向かおう。



 俺は一度部屋へと戻り、『まんまる印の雑貨店』で購入した大量のアイテムを置いたあと、二軒目に選んだ『グリーンフォミュ』へとやってきた。

 このお店は、ランダウストで一番大きな薬屋さん。

 混む前に行きたかったため、一軒目は『まんまる印の雑貨店』を訪れたが、俺が一番気になっていたお店はこの『グリーンフォミュ』。


 様々なポーションに加えて、珍しい植物も置いてあると聞いているからな。

 更には、ポーション生成に必須な醸造台も販売しているみたいだし、俺が生成した植物の買取も行ってくれるかも気になる。

 ランダウストで生活するにおいて、俺にとって一番重要となるお店といっても過言ではない。


 俺は早速『グリーンフォミュ』の店内へと入った。

 お店の大きさは、メインストリートにある冒険者ギルドよりも少し小さいくらいで、『エルフの涙』と比べたら段違いで大きい。

 外観だけでなく店内もしっかりと広く、どうやら二階まであるようだ。


 お店を入って左側が植物の売られているエリアで、右側がポーションが売られているエリア。

 そして二階が醸造台を含む、一風変わった商品が売られているエリアのようだ。


 全ての商品が気になるが……まずは植物が売られている左側のエリアへ向かおう。

 鑑定していない植物は全て購入したいところだが、『まんまる印の雑貨店』で散財してしまったから、少し抑えて購入しないといけない。

 とりあえずは【プラントマスター】の鑑定を使いつつ、植物を物色していこう。


 うーん……。 

 店の入り口側から見ているのだが、お店の出入り口に近い場所は基本的に一般的な物しか売られていないようだ。

 鑑定しても薬草や魔力草、毒消し草やオール草といった見慣れた植物しか鑑定されない。


 …………ただ、色々な植物を鑑定していって分かったのだが、どうやらここに売られている植物たちは、グレゼスタで嫌というほど見た植物たちとは少し違う。

 えーっと。……この二枚が、一番変化の大きい薬草かな。

 俺はお店に売られていた二枚の薬草を手に取り、再び鑑定を行った。


【名 前】 薬草

【レベル】 -8

【効 能】 治癒(極微)

【繁殖力】 ???

【自生地】 ダンジョン(ランダウスト)


【名 前】 薬草

【レベル】 58

【効 能】 治癒(中) 解毒(低) 耐毒(低) 耐麻痺(低) 耐熱(極低) 耐冷(極低) 一時筋力増強(極低) 眠気付与(中)

【繁殖力】 ???

【自生地】 ダンジョン(ランダウスト)


 このように、同じ薬草でも効能が全く違うのだ。

 薬草で一纏めにされているが、全く別種の植物といっても過言ではないほど効能に差がある。

 ダンジョン産なのが起因しているのか、レベルの差がかなり激しいのが効能の差の原因だと思う。


 この二つとも値段は一律で同じ値段。

 薬草という見慣れた植物なのだが、お宝探しをしているみたいで鑑定するのが楽しいな。


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