第百六十四話 新聞と本の内容


 食事を終えたところで、早速買ってきた新聞と本を読んでみようと思う。

 新聞は一部、銅貨5枚。

 本は一冊銀貨5枚と、値段がかなり張っただけに期待を持っている。


 記者のおじさんの情報も凄かったし、まず間違いはないだろう。

 俺はまず新聞の方から手に取り、ペラペラとめくって読んでみた。


 新聞に記載されている内容は、有名冒険者パーティらしきパーティの一週間の攻略情報と、その冒険者パーティに所属している冒険者のインタビューの記事。

 それから新聞社オススメの冒険者パーティの紹介と、今週のダンジョンの見どころについてがザっとまとめられていた。

 小さい見出しのワンコーナーには、ダンジョンのプチ情報みたいなものが書かれてはいるが、基本的にはダンジョン観戦をしている人向けの内容のようだ。


 別の新聞社の新聞も読んでみたが、取材している冒険者パーティが違うだけで、どれも似通った内容だな。

 新聞は、ダンジョン観戦を娯楽として捉えている人向けのものなのだろう。


 他社に掲載されている冒険者パーティを煽っている一文も見受けられたため、もしかしたらだが、新聞社ごとに有名冒険者パーティが専属契約をしていて、攻略進行を競っているのかもしれない。

 露店では冒険者パーティのグッズみたいなものも売っていたし、ダンジョン観戦をしている人も、各々応援している冒険者パーティみたいなものがあるのかもしれないな。


 新聞を読んでそんな考察をしながら、俺は新聞をまとめて別の場所へと置き、ラウダンジョン社の本を手に取る。

 こっちはタイトルが『一冊で分かるランダウストのダンジョン』と、恐らく攻略者向けの本のため今度こそ期待していいと思う。


 先ほどの新聞と同じようにペラペラと捲りながら本を読んでいくと、内容はしっかりと‟ダンジョン”についてが書かれていた。

 ランダウストのダンジョンの構造から簡易的な地図まで描かれていて、階層ごとに出現する魔物の情報と、特定の決まった階層に出現する‟ボス”と呼ばれる特別な魔物まで記載されている。


 更にはダンジョン内で採取できる鉱物や植物の簡易的な情報に、宝箱のレアリティと魔物かどうかの判別方法、他にもセーフエリアの説明やダンジョンの初心者講座みたいなことも書かれていて……記者のおじさんが言っていた通り、かなり実用的な本となっていた。

 

 この本のお陰でダンジョンについては大分理解できたが、知れば知るほどよく分からない構造をしている。

 ダンジョンの中は、この世界とは違う別の世界と捉える方がしっくりとくるな。


 俺は大きく息を吐きながら、本を新聞の上へと置く。

 夢中になっていたということもあるが、休憩もなしにぶっ通しで読んだため、目がしばしばして頭がズキズキと痛い。


 ダンジョンの知識をつけた状態で、もう一度新聞の方を読みたくなったが……流石に今日は眠ろうか。

 旅の疲れも取らなくてはいけないのに、色々と読み漁ったせいで寝るのが大分遅くなってしまった。

 魔力がもったいないが、今日は生成を行わずに眠りに就こう。

 


 翌日。

 部屋をノックされる音で目が覚めた。

 

 昨日夜更かししたからか、目覚めがかなり悪い。

 二度寝したい気持ちをグッと押さえ、俺はベッドから這い出て扉を開ける。


「おはようございます! 朝食をお持ち致しました!」


 扉を開けると、そこには朝食のプレートを持って笑顔の獣人の少女が立っていた。

 少女の笑顔を見て、半開きだった俺の目もパッチリと開く。


「朝食も届けてくれるんだね。朝からわざわざありがとう」

「いえいえ! 朝食はいつもこの時間に決まって持ってきますので! いらない場合は前日に言ってください!」

「分かった。多分、毎日頂くと思うから明日もよろしくね。……えーっと」

「あっ私、ルースって言います! ルースって気軽に呼んでください!」


 俺が獣人の少女のことをなんて呼ぼうか考えていると、そのことを察した少女がすぐさま自己紹介をしてくれた。

 宿屋でお手伝いをしているからか、この子は人の気持ちを読んでいるかのように察しがいいな。


「それじゃルースって呼ばせてもらうね。……明日からもよろしくね、ルース」

「はい! こちらこそよろしくお願いします!」


 そんなこんな朝の挨拶を済ませたあと、ルースから受け取った朝食を食べながら身支度を整えていく。

 今日の予定は、映像で【青の同盟】の確認をした後に、ダンジョンに潜ろうと思っている。


 昨日読んだ本には、ソロでの攻略は危険だから厳禁と書かれていたのだが、浅い階層ならば俺の実力があれば問題ないと見た。

 本には丁寧に出現する魔物の情報が載っていたからな。

 ‟ボス”と呼ばれる魔物が出現する7階層までは、恐らく俺の今の実力があれば問題ないはず。


 まあ、アングリーウルフがコルネロ山の麓に降りてきたように、深い階層で現れるはずの魔物が、浅い階層で現れる可能性もあるのだろうが、そこは戦闘を行わずにアイテムや植物で逃げることだけを考えれば大丈夫だと思う。

 それに30階層までは、他の冒険者パーティも数多く攻略していて鉢合わせることが多いようだし、何かあった場合は助けてもらうこともできると、本には書かれてあった。

 

 完全な他人頼りは駄目だが、アクシデントが起こった場合は助けてもらうということを、頭に入れて攻略していこう。


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