第百六十二話 ランダウストのダンジョン
『ヴァースキ』を後にした俺は、次に目星をつけていた大衆食堂へと向かった。
時間はお昼過ぎで飯時でもなかったのだが、店内はかなり混雑しており、とても店員さんからお話を伺える状況ではなかったのだが、たまたま同席したおじさんから貴重な情報を貰えた。
なにやらこのおじさんは、ダンジョンについての情報を取り扱っているお店の記者さんらしく、ダンジョンについての様々な情報を持っていた。
重要な部分は全て企業秘密と言われ、教えて貰えなかったのだが、特別に【青の同盟】については教えてくれると言ってくれたのだ。
「へっへ。坊主も【青の同盟】に興味があるとは、随分とダンジョン通のようだな」
「いえ、ダンジョン通ではなくて……。さっきも言いましたが、只の知り合いってだけなんです」
「いいって、いいって。隠さなくても。ダンジョン好きに悪い奴はいないからよ。……それじゃ早速、【青の同盟】についての情報を教えてやるよ」
なにやら盛大な勘違いをしているようだが、訂正しても一向に信じて貰えないため、そのまま聞くことに決める。
こっちとしては情報を貰えるなら、正直どう思われていようが関係ないからな。
「【青の同盟】は、一年ほど前にこのランダウストに来た新参冒険者パーティ。最初はランクもDランクだし、他の街から移籍してきたどこにでもいる普通の冒険者だと思っていたんだが、すぐに20階層まで踏破すると、中級冒険者の壁と呼ばれる30階層もつい先月踏破することに成功した。現在はその功績も認められB級パーティに昇格し、3人パーティという人数の不利がありながらも、今勢いに乗っているパーティの一つ。……ザッとまとめたが、無料で教えられる情報はこんなところだな」
そう意気揚々と語ってくれた記者のおじさん。
言っている内容の半分は分からなかったが、【青の同盟】さん達が快進撃を見せているということだけは分かった。
『ヴァースキ』での情報よりも、正確な情報が得られたのは良かったな。
情報から考えれば、もう再会できるのも近いかもしれない。
「記者さん。情報を頂きありがとうございました。本当に助かりました」
「へっへ。気にすんなって。ダンジョンの詳しい情報が気になったら、是非『ラウダンジョン新聞』をよろしくな!」
こうして俺は、ダンジョン記者のおじさんにお礼を言い、大衆食堂を後にした。
さて、ここからの動きについてだが、早速ダンジョンに行ってみようと思う。
俺はここのダンジョンも、てっきりキルティさんと一緒に行った廃ダンジョンのような場所をイメージしていたのだが、どうやら違うらしい。
このランダウストのダンジョンは、冒険者ギルドによって完璧に管理されているようで、ダンジョン前には様々なお店もあると記者のおじさんが言っていた。
更にはダンジョンに備え付けられている‟カメラ”というもので、50階層までは24時間リアルタイムで、ダンジョン内の様子がダンジョンの外からでも分かるらしい。
このカメラをダンジョンに用いたことで、このランダウストがダンジョン都市として成長する切っ掛けになったと、記者のおじさんは揚々と話していた。
正直どんなものか想像もついていないが、ダンジョン前がどんな様子なのか非常に楽しみだ。
俺は先ほど通った道まで戻ると、エドワードさんに教えて貰った方向に向かって歩を進める。
この先がダンジョンに続く道。
メインストリートでも十分に活気に満ちていたのだが、こっちの方向は更に人通りが多い。
通りには特にお店のようなものは見えないのだが、ダンジョン目的の冒険者や観光客、それに現地民が大勢行き来しているみたいだ。
そんな人の流れに身を任せながら歩いていると……前方に大きな掲示板のようなものが複数見えてきた。
そこの掲示板には信じられないくらいの人が集まっていて、その掲示板の奥には先ほど行った冒険者ギルドと瓜二つの建物が見える。
そしてその冒険者ギルドを囲うように、色々なお店が連なっていた。
「……凄い賑わいだなぁ」
思わず声に出てしまうほどの人で溢れており、驚くのは冒険者よりも一般人の方が多いということ。
記者のおじさんが言っていた通り、ダンジョン観戦が大きな娯楽の一つとなっているみたいだ。
そして近づいて分かったのだが、俺が大きな掲示板だと思ったものが、ダンジョンに設置されているカメラの映像を映し出すもののようで、様々な階層の映像が映し出されていた。
映像も魔物との戦闘が鮮明に映し出されており、これは……人だかりが出来ているのも納得だ。
俺もそんな大勢の人に混じって、映像の映し出されている掲示板にかじりつき、【青の同盟】さん達を映像の中から探す。
記者のおじさんの話によれば、先月30階層を踏破したと言っていたから、30階以降にいると推測される。
ご丁寧に階層ごとに分かれて映し出されているため、俺は30階以降の映像が映し出されているところを中心に探していると……ようやく見つけることができた。
後ろ姿だが、31階層で大剣をぶん回している女性の姿は、確実に俺の記憶の中のアーメッドさんそのものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます