第百五十八話 迷宮都市ランダウスト


 ランダウストの真ん前まで辿り着いた。 

 目の前まで来ると、やはりその壁の異様な高さが目に止まる。


 真下からでは首を思い切り上に向けても、壁の天辺は見ることは出来ない。

 更に驚くべきことは、ランダウストを囲う壁はこの高い壁一つではなく、高い壁の内側にもう一つ壁があり二重構造となっていること。

 余りにも厳重なその作りに、俺の頭には牢獄という言葉が浮かんだ。


「色々と凄いですね。故郷の村からグレゼスタに初めて来たときも、色々と驚くことが多かったのですが、その時に匹敵するぐらい驚いてます」

「確かにグレゼスタと比べても作りが異質じゃからのう。グレゼスタが王国五大都市の内の一つじゃとしたら、ランダウストは世界で見ても五本の指に入る都市じゃからな。……ダンジョン付近の賑わいを見たらもっと驚くじゃろうよ」


 二重構造の高い壁を見ながら驚いている俺に、そう情報を付け足してくれたエドワードさん。

 ダンジョン付近の賑わいか……。これは期待が高まるな。


 門の前に出来ている長蛇の列に並ぶこと、約1時間ほど。

 ようやく俺とエドワードさんの検査の番が回ってきた。

 一つ目の門と二つ目の門の間に身分確認や身体検査の部屋が作られていて、そこの部屋に通された俺とエドワードさんは、三人の検査官によって入念に調べられた。

 

 この旅でお世話になった村でのずさんな検査とどうしても比べてしまうため、検査官が高圧的なのもあってかなり鬱陶しく感じてしまう。

 子供と老人のペアだろうが関係なしに徹底的に調べられたあと、ようやく入街の許可が下りた。

 一応、三人の検査官にお礼を言ったあと、二つ目の門を潜り俺は街へと踏み入れる。


「おおー! 整備されていて綺麗な街ですね!」


 足を踏み入れてまず思ったのが、凄く綺麗な街という感想。

 グレゼスタが古風で味のある街並みだとしたら、ここランダウストは最先端の技術によって整備された街並み。

 建物も均一且つ、ギュウギュウに建てられていて、まさに一寸の無駄もない配置となっている。


 それからゴミや排泄物も一切見当たらず、そういった面でも綺麗で清潔感のある街。

 冒険者が大勢集まると聞いていたから、冒険者ギルドがそのまま街になったような……汚い街を勝手に想像していただけに自分の中では結構な驚きだった。


「どうやらランダウストは、街中でゴミの不法投棄を厳重に取り締まっているようじゃからな。三度、不法投棄を行ったら入街禁止となるそうじゃから、それのお陰で綺麗な街となっているのじゃろう」

「へー……そうなんですね。ゴミの不法投棄が厳罰。それは自然と街が綺麗になっていくのも分かりますね」


 ランダウストの綺麗な街並を見てそんな会話をしながら、エドワードさんの後についていき、ランダウストのメインストリートを目指す。

 こんな綺麗な街に、ダンジョンがあるというギャップが凄い。


 一歩歩くごとにワクワク度が増していくのを感じながら、すぐにランダウストのメインストリートへと辿り着いた。

 メインストリートは、グレゼスタと比べても比にならないほど、人でごった返している。

 その大半は冒険者のような恰好をしていて、グレゼスタの冒険者ギルドとは違って老若男女どころか、亜人と呼ばれる変わった人種も多数見受けられた。


「ふぉっふぉっふぉ。こりゃ凄い人じゃのう。儂が最後に訪れた時はここまで人は多くなかったんじゃがな。……時代の流れというものを感じるのう」

「いや、本当に凄い人だかりですね。この先がダンジョンなんですか?」

「そうじゃ。このまま真っ直ぐ行けばダンジョンが見えてくるが……とりあえず冒険者ギルドから行ってくれるかの?」

「もちろんです! クエスト達成報告をしないといけないですもんね」

「すぐにでもダンジョンを見たいところだろうが、すまないのう」

「いやいや、謝ることじゃないですって。ダンジョンは逃げませんし、冒険者ギルドにも行きたかったですからね」


 こうしてメインストリートを右に曲がり、まずは冒険者ギルドを目指すこととなった。

 冒険者ギルドを目指しながら、ランダウストのメインストリートを歩いているのだが、面白そうなお店が立ち並んでいて目移りしてしまう。

 

 これだけのお店が並んでいるからなのか、どのお店も目を引くような作りとなっていて、一軒一軒見て回りたい衝動に襲われる。

 色々と落ち着いたら見て回ろうと心に決め、グッと誘惑を堪えながらメインストリートを歩くと、前方に一際大きな建物が見えた。

 

 その建物のど真ん中には大きく冒険者ギルドと書かれていて、その建物の周囲には冒険者達が大勢立ち並んでいる。

 あれがランダウストの冒険者ギルド。


 もしかしたら……冒険者ギルドの中に入ったら、もうアーメッドさんと再会できるのではと考えつき、俺の心臓が激しくなり始めたのだった。


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