第八十五話 準備完了!


 現状維持で銀貨5枚で買い取って貰えるならば、ダンベル草生成生活を行いながらも、お金に困らず生活していく余裕が生まれる。

 グルタミン草の潜在能力に感謝だな!


「こちらこそ銀貨5枚で買い取って頂けるなら嬉しい限りです! 一週間に1回、まとめて売りにきますね!」

「ああ。ただ、今やってる実験を成功させ、売れるビジョンが見えるまでは俺専用として使う予定だから、あまり大量には買い取れない。そこだけは分かってくれ」

「……となりますと、一週間にどれくらいなら買取できますか?」

「最大で15本ってとこだな。現段階ではそれ以上の買い取りは出来ない。……ただもし、俺がやろうとしていることを成功させることが出来れば、その時は1000本だろうと10000本だろうと買取させてもらおう」


 規模がぶっ飛び過ぎてて、開いた口が塞がらない。

 1000本となれば、一体どれくらいの金額が動くのだろうか……。


「どう頑張っても1000本は卸せないですね。一週間で頑張って採取しても、最大で100本ぐらいが限度だと思います」

「いや、1000本の発言は何本だろうと買い取るといった意味合いで言っただけだ。あまり深い意味で受け取らないでいいぞ。……それで実際のところ、今は一週間でどれくらい卸せそうなんだ?」

「そうですね……。現状だと、一週間で7本前後だと思って頂ければ」

「俺の買取できる量の半分以下ってところか……。なんとも言えない微妙な数字だな。……その量なら別件で、俺から冒険者にグルタミン草の採取の依頼を出しても良いかもしれんな」

「そうですね。俺からだけですと、恐らく足らないと思うので依頼を出すのも良いと思いますよ」



 それからクライブさんと軽くグルタミン草について会話をし、一つ区切りがついたところで俺から会話を終えた。

 正直、もう少し聞きたいこともあったのだが、クライブさんの体調を考えたら、あまり長話をさせるのは駄目だからな。


「今日は変なタイミングで来てしまってすいません。どうかゆっくり休んで下さいね」

「グルタミン草の実験が終わったところだったから、変なタイミングどころかタイミング的には良かったんだけどな。……まあ、ここから二日間くらいは、一気に寝る予定だから大丈夫だろう」

「はい。疲れを取るためにもその方が良いと思います! それじゃ俺は行きます」

「おう。また売りに来てくれよな」


 ふらふらのクライブさんと部屋で別れた俺は、一階のお店でカレーの材料を持てる分だけ買ってから、ボロ宿への帰路についたのだった。


 よしっ! 

 これで溜まっていた用事は、今日で全て済ませることが出来たな。

 

 ナイフの加工依頼も出したし、生成分のポーションも受け取った。

 グルタミン草の売却額も聞けたし、ダンベル草用のカレーの材料の買い出しも済んだし、もうやることはない。


 これでようやく全ての準備が整ったと言える。

 明日からは金銭的な問題も考えずに、本格的なトレーニングへと励むことができる。

 

 ……トレーニングと言っても、筋トレと剣の素振りしかすることはないけどな。

 生成魔力を判別させる時に生成した、大量の薬草も溜め込んであるし、無茶なトレーニングをしても自己治癒することができる。

 まあ、筋トレの方法も素振りの方法も、【青の同盟】さんから全て教わったものだし、大怪我するようなやり方ではないと思うが念のための確認だ。

 

 

 ボロ宿へと帰宅した俺は、早速おばあさんに生成してもらったポーションを、時間をかけながら全て飲み干していく。

 最低品質魔力ポーションが2つに、低品質魔力ポーションが3つ。

 そして中品質魔力ポーションが2つだから、これまでの上昇値の計算が正しいのであれば、このポーションを飲み干したあとの俺の総魔力は87になる計算。

 

 これで間違いなく、毎日ダンベル草とグルタミン草が一本ずつ生成出来るようになった。

 ただ今日、大量に香辛料を買って分かったが、カレーの材料代がかなり痛い。


 香辛料を高値で買い取ってもらっていることから、販売価格も高いことは頭に入っていたんだが、こうして大量に買うと値段の高さがより分かる。

 まとめ買いしたからだが、実際に今日だけでカレーの材料費に金貨4枚も使ってしまった。

 

 一日にグルタミン草の銀貨5枚の収益が上がると言っても、もしかしたら一日で消費するお金の方が多いかもしれない。

 残りのお金も金貨6枚しか手元にないし、残高にはくれぐれも気をつけながら生活していこうと思う。 

 最悪、一日の総魔力をグルタミン草の生成だけに魔力を費やせば、一日でグルタミン草を12本は生成出来る訳だし、気をつけてさえいれば手持ちがなくなると言った心配はないと思う。


 そんなことを考えながら、俺は明日のダンベル草カレーのためのカレーの仕込みを終えて、寝る準備をしてからベッドで横になって生成の準備完了。

 左手に意識を集中させると、昨日のような力を吸い取られるような感覚が左手を襲う。


 そして例の如く、左手から伝播して全身も震え出した。

 この感覚はいつまで経っても慣れないだろうなと、二回目にしてなんとなく俺は察した。


 力が抜ける感覚をジッと待つと、震えなど嘘だったかのようにピタッと止まり、左手にはダンベル草が握られ、生成が成功していた。

 その調子のまま俺は、グルタミン草も流れで生成し、残りの魔力で魔力草×1に薬草×2を生成したところで、魔力切れとなり全身の力が抜け始める。


 ……いよいよ明日から、ダンベル草を用いての本格的なトレーニングの開始だ。

 少しでも早くアーメッドさんに追いつけるように、そして不甲斐ない自分を変えるためにも死ぬ気でトレーニングに励んでやる!


 —―そう意気込んで、俺は静かに眠りについたのだった。


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