第八十三話 ポーションの可能性
アングリーウルフの牙を渡したあと、【断鉄】を後にした俺は、そのままの足で【エルフの涙】へと向かう。
こちらもこちらで非常に楽しみだ。
魔力草をレベル分けしておばあさんには渡してあるから、どのレベルから品質が上がるのかもしっかりと覚えておきたい。
【エルフの涙】へと着き、俺はさっそく扉を開ける。
いつものように扉につけられた鈴の音が心地良い音を鳴らし、俺を出迎えてくれた。
今日はカウンターにいないようなので、入口からおばあさんを呼ぶ。
「おばあさん! ポーションを取りに来ました!」
「……あいよー。すぐに行くからもうちょっとだけ待っといておくれ」
俺が声を掛けると、奥の部屋からおばあさんの声が返ってきた。
言葉通りにしばらく待っていると、奥からポーションを持った笑顔のおばあさんが出てきた。
「はい、お待たせ。これが頼まれてたポーションだよ」
瓶に付けた色のついたタグで種類分けされたポーションを、カウンターの上へと置いたおばあさん。
俺がレベル毎に分けた状態のまま生成してくれ、タグをつけて分かりやすくしてくれたみたいだ。
「ありがとうございます! ポーションの品質ってどうなってるか教えてもらえますか?」
「ああ、勿論さ。青いタグがついているのが全て最低品質のポーション。緑色のタグがついてるのが全て低品質ポーション。そして赤いタグがついてるのが低品質ポーションと中品質ポーションが半々だよ」
なるほど。適当にレベル分けしたのだが、割と綺麗に分けることが出来たようだ。
合計レベルが100以下のポーションが全て最低品質ポーションになっていて、100以上150未満が全て低品質ポーション。
そして150以上で分けたポーションなのだが、半分が低品質ポーションでもう半分が中品質ポーションと言う結果になっていた。
総レベル150以上のポーションはまだまだ調べる余地がありそうだが、最低品質と低品質のポーションの基準は大体分かった気がする。
ちなみに【プラントマスター】で生成される植物は、レベルが最低レベルでの生成となるため自力で生成した魔力草だけでは、必然的に最低級ポーションしか作って貰えないことになるな。
ここら辺もしっかりと考えたいところだが……やっぱり自力でポーションを作れたらどれだけ世界が広がるか……。
思いつくだけでも、武器として使える猛毒のポーションにダンベル草を使ったストレングスポーション。
更にはグルタミン草を使った、旨味成分のポーションなんかも作れるのではと俺は思っている。
それと……治療師ギルドが失敗したと言う新ポーション。
あれも俺だったら生成できるんじゃないかと、密かに思っているんだよな。
ポーション生成と【プラントマスター】の相性が最高だと俺は思っているため、時間をかけて習っても不正解ではないと思うのだが……今は俺自身が強くなることを優先したい。
早く【青の同盟】さん達に追いつきたいのもあるし、前回のアングリーウルフ戦で自分の弱さを痛感したからな。
「……ルイン、どうしたんだい? なにか不満でもあったのかい?」
「あっ、いえ! 少し考えごとをしていて固まっていただけです!」
「そうかい? それならいいんだが……。少し疲れているようにも見えるから、あまり根を詰め過ぎないようにするんだよ?」
「ご心配ありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですので! ……それよりもポーションを生成して頂き、ありがとうございました!」
「いいんだよ。ついこの間も大量にポーションを買ってもらったからね。それで買ったポーションはどうだった?」
「変わらず美味しいポーションでしたし、効能もしっかりと高かったです!」
「そうかい、そうかい。それは良かったよ」
おばあさんは嬉しそうに笑顔でそう言った。
それから俺は、今後もポーションを高頻度で買わせて貰うことと、最低品質の魔力ポーションや低品質の魔力ポーションを作ってほしいことをおばあさんに話した。
現在、『エルフの涙』で仕入れた低品質の植物は、治療師ギルドに卸しているみたいなのだが、俺がそのことを告げると快く許可してくれた。
どうやら俺専用で、ある程度作り置きしてくれるらしい。
何故おばあさんが、俺にここまで良くしてくれるのかは分からないが、本当に良い人に巡り合えたと心から思う。
さっきのダンテツさんと言い、本当に感謝してもし切れないな。
「それじゃ今日はもう帰りますね! 低品質のポーションの生成を受けてくださり、本当にありがとうございます!」
「いいんだよ。ワタシが好きでやっていることだからね。それに低品質のポーションを買ってくれるのはお店としてありがたいんだよ! 売れないから治療師ギルドに押し付けているんだしねぇ」
そう言いながら、おばあさんは悪い顔で笑った。
でも、言われてみれば確かにそうだよな……。
俺は魔力ポーションを戦闘以外で使用しているから、低品質を求めているのであって、普通の人は戦闘中に使用するはず。
最低品質の魔力ポーションなんかを持ち歩くのは、本当に冒険者になりたての人しかいないだろう。
だからこそ、おばあさんの手によって、品質の悪い植物を仕入れされている治療師ギルドってヤバいのでは……と思ってしまうが、そこはあまり考えなくていいか。
「在庫処理が出来るなら、俺としても良かったです。……それじゃ一ヵ月ほど来れませんが、必ずまた来ます! おばあさんも、どうかお体には気をつけてくださいね」
「あいよ。ルインも体調には気をつけるんだよ」
こうしておばあさんに挨拶を済ませた俺は、生成を頼んだポーションを持ち『エルフの涙』を後にした。
あとは、クライブさんのところで買い物を済ませれば、しばらくは宿に籠ってのトレーニングに明け暮れることができるな。
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