第七十八話 ポーション生成のお願い


 冒険者ギルドで低品質の植物を買い取って貰ったあと、俺は『エルフの涙』へとやってきた。

 ちなみに買取額は俺のほぼ予想していた通りの値段で、俺の手持ちのお金はこれで合計金貨40枚近くとなった。

 やはり昨日の香辛料とグルタミン草の買取が大きかったな。

 

 懐にはかなりの余裕が生まれているし、手元に金貨10枚を残して全て魔力ポーションの購入もしくは、俺の魔力草を渡して魔力ポーションの生成をお願いしてもいいかもしれない。

 懐に余裕があると、心にも余裕が生まれる。

 自分のやりたいことに時間が割けるようになるし、お金は偉大だと改めて感じるな。

 

 昨日、しばらく来ないような口ぶりをしてしまったから、少し入りづらいのだが、俺は『エルフの涙』の扉を開けた。

 カランコロンといつもの心地良いベルの音が店内に響く。

 そして今日は珍しく、カウンターにおばあさんの姿が見えた。


「おや? ルインじゃないか。もしかして忘れ物でもしたのかい?」

「いえ。昨日買わせて頂いた魔力ポーションが凄く良かったので、また買わせて頂こうと思って来たんです」

「あらま早速のリピートかい。そりゃ嬉しいね」


 ニコニコ笑顔で喜んでくれているおばあさんを見ながら、俺も自然と笑顔になる。

 本当に居心地の良いお店だよなぁ。


「味が非常によかったので! ……ここのポーションって他で売られているポーションとはやはり作りが違うんですかね?」

「ああ、そうさね。ワタシが長年かけて生み出した、ちょっと特殊な製法で作られたポーションなんだよ。まあ、味だけでなく、効能も高いんだけど……違いが分かるとはやはりルインは分かる男だねぇ」


 やっぱり他のお店のポーションとは違った製法をしているのか。

 効能については、他のお店のポーションで詳しく調べたことがなかったから分からなかったが、味は魔力草から作られたとは思えないほどよかったもんな。


「やっぱりそうだったんですね! このお店が隠れた名店だと言う理由があのポーションを飲んで分かりました!」

「それは嬉しい言葉だね。喜んでもらえたみたいで良かったよ。それで、今日はまた魔力ポーションを買いに来たってことでいいのかい?」

「はい。また魔力ポーションを売って貰いたいのと……魔力ポーションの生成とかってお願いできたりしますか?」


 俺がそう尋ねると、少し首を傾げたおばあさん。

 ……あれ、ちょっと言葉足らずだったか?


「えーっと、俺が魔力草を渡すので、その魔力草でポーションを生成して頂けないかなと思いまして。もちろん生成費用はプラスしてお支払いします!」

「なるほど、そういうことかい。魔力草を持ってくるから、割安で作ってほしいってことだね?」

「はい、そういうことです。……可能だったりしますかね?」

「うーん……普段はあまりやってないんだけど、ルインにならやってもいいかもしれんね。他の高品質植物も卸してもらっているし、1本当たり銀貨1枚で生成ってことでどうだい?」


 おおっ! 良かった。

 ポーション生成を引き受けてくれるみたいだ。


 ただ、1本当たり銀貨1枚ってどうなのだろうか。

 ポーションのことを知らな過ぎて、どういう計算になるのか皆目見当もついていない。


「すいません。その場合ですと1本生成にするに当たって、銀貨1枚となにが必要なのでしょうか」

「そりゃあ魔力草だね。1本につき銀貨1枚と魔力草10本が必要になるよ。魔力ポーションの品質は魔力草の品質に依存して変わるから注意が必要だね」

「……と言うことは、高品質の魔力草を10本渡したら高品質の魔力ポーションになって、低品質の魔力草を10本渡したら低品質の魔力ポーションになると言う認識で大丈夫ですか?」

「その認識で間違ってないよ。ただ、魔力草のみだと作れる魔力ポーションは最高で中品質、最低で最低品質の魔力ポーションだから注意してくれよ」


 ほー。これは中々面白いな。

 俺は植物のレベルが分かるから合計レベルで計算して、魔力草の品質が変わるギリギリのラインを攻めてみたい。

 

「是非それで生成してもらえるなら、お願いしたいです! おばあさん、よろしくお願いします!」

「分かったよ。先ほどの条件で良いなら作ってあげるからね。あと、すぐに生成出来る訳じゃないから注意しとくれ」

「はい。すぐに生成出来る訳じゃないと言うことは分かっています。それじゃ早速依頼してもいいですかね?」


 俺はそう言ってから鞄を漁り、魔力草を取り出す。

 その場で仕分けた魔力草を鑑定をしながら、10本の束でおばあさんに手渡していく。

 簡単に合計が150以上になるものと、100以上150以下になるものと、100以下の10本の三種類の束を7束渡し、分かりやすいように目印も付けてもらった。


「はい、確かに7束と銀貨7枚ちょうど。それじゃ明々後日くらいには完成してると思うから、期日が過ぎたらいつでもいいから取りにおいで」

「分かりました! おばあさん、本当にありがとうございます!」

「いいんだよ。ルインには短いながらも贔屓にしてもらってるからね。それで、今日はこれだけでいいのかい?」


 予想以上にポーションの生成が安上がりだったから、魔力ポーションもかなりの量が買えそうだ。

 当初の予定通り、金貨30枚分の魔力ポーションをまとめ買いさせてもらおうか。


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