第七十九話 最上級品質ポーションの原料
俺は早速おばあさんに、魔力ポーションを売って貰えないかの交渉を行う。
「すいません。ポーション生成とは別件で、魔力ポーションも大量に買いたいんですが大丈夫ですか?」
「ああ、もちろん大丈夫だよ。こっちはまけてあげられないけど、いくつ欲しいんだい?」
「実は金貨30枚分の魔力ポーションを買わせて貰いたくて……」
「ええっ!そんなに買うのかい? ワタシとしては願ったり叶ったりの提案なんだけど……はたしてそんなに魔力ポーションの在庫があったかねぇ?」
そういうとおばあさんはカウンター後ろの棚を探し始めた。
棚に入っていたポーションをいくつか取り出すと、カウンターへと並べてくれる。
「これが昨日買ってくれた低品質魔力ポーションなんだけど、今は10個しか在庫がないね」
「あっ、じゃあ10個頂きます! それと他の品質の魔力ポーションでもいいので売って貰えますか?」
「他の品質でもいいのかい? それなら金貨30枚分は余裕であると思うよ。どの品質を多めとかってあるかい?」
「最低品質から高品質魔力ポーションまでをバランス良くって感じで、お願いできますか?」
「バランス良く……? それじゃこの低品質魔力ポーション10個を含めて、丁度金貨30枚になるように適当に見繕ってあげるよ」
「すいません! ありがとうございます!」
おばあさんが後ろから見繕ってくれているのを待ちながら、俺は棚に飾られている金貨9枚の最上級品質の魔力ポーションを流し見る。
そう言えば先ほど、おばあさんは魔力草だけでは中品質までしか生成されないと言っていたが、この最上級品質の魔力ポーションは何が原料で作られているのだろうか。
ふと疑問に思い、俺は途端に気になってしまった。
「なんだい? 最上級品質のポーションが気になるのかい?」
トレイに様々なポーションを並べて戻ってきたおばあさんが、最上級品質のポーションをジーッと見ている俺にそう話しかけて来た。
……丁度良い機会だし、聞いてみようか。
「ええ。さっき、魔力草からでは中品質までしか生成されないと言われましたので、この最上級魔力ポーションは一体何で生成されているのかなぁと気になってしまったんです」
「なるほどねぇ。この最上級魔力ポーションの原料は魔星草と言って、魔力の濃いダンジョンにしか生成されない植物なんだよ。まあ、最上級でもベースは魔力草で作ったポーションなんだけどね」
魔星草……。
聞いたことのない植物だな。
少なくとも、治療師ギルド働いていたころも使用したことのない植物だ。
それにダンジョン……?
ダンジョンも俺は聞いたことがないな。
「魔星草ですか。聞いたことのない植物です。……それと、ダンジョンって言うのは魔力の濃い場所なんですか?」
「ダンジョンを知らなかったら、魔星草も知らないだろうね。そうさね、ダンジョンは魔力の濃い場所に出来る魔物のうじゃうじゃいる場所のことだよ。ワタシも若い頃はよくダンジョンに潜っていたんだけど、久しくダンジョンには行っていないねぇ……」
過去を思い出しているのか、楽しそうに微笑んでいるおばあさん。
魔物のうじゃうじゃいるところにしか生えない植物か。
そりゃあ金貨9枚と言う高値も納得だな。
いつかはそんな場所にしか生息しない植物も、実際に採取してみたいけど……まだまだ俺には遠い話だな。
「貴重なお話ありがとうございます。本当におばあさんは色々なことをご存知ですよね。……あっ、そう言えば、この間教えて貰った香辛料の料理が見つかったんです! そのお陰で苦い物を食べれる光明も見えまして——」
それからいつもの如く、おばあさんと長い談笑が始まった。
あまり長居はしないように心掛けてはいるんだけど……おばあさんが博識すぎて、つい色々と質問をしちゃうんだよなぁ。
「――とまぁ、香辛料はオール草と混ぜ合わすと独特の匂いが消えるから、ポーション作りでも割と重宝してるんだよ。…………っと、また長話をしてしまったね。ルインは反応が良いからつい話をしてしまうんだよねぇ。毎度毎度、年寄りの長話につき合わせて悪いね」
「いえいえ! 俺からいつも話を振ってしまっているんで。こちらこそ、忙しいはずなのに色々と質問をしてすいません」
「それじゃ話を戻して……っと、ポーションはこれで大丈夫かね? 最低品質ポーション20個と低品質ポーション10個、中品質ポーション10個と高品質ポーション6個。これで合計金貨30枚分だよ」
「大丈夫です! これ全て買わせて頂きます!」
「はい、毎度あり。ちょうど金貨30枚頂いたよ。……これで在庫の最低品質ポーションを全て捌けた。買ってくれてありがとね」
「こちらこそ、ありがとうございました! また生成を頼んだポーションを取りにまた来ますね!」
「はいよ。待っとるからね!」
ポーション生成にタメになる話も聞かせて貰い、更には大量のポーションを売ってもらった。
……本当におばあさん様々だな。
いつかおばあさんにはしっかりと恩返ししたいと思いつつ、俺は『エルフの涙』を後にしたのだった。
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