第七十七話 実験の結果
予定をそう決めた俺は、早速魔力ポーションの瓶の蓋を開ける。
ポーションの見た目は真っ青で、はっきり言って人が飲んでいいような見た目をしていないのだが……。
俺は味を見るように少しだけ口の中に入れ、ゆっくりと飲み込む。
俺は魔力草の独特な苦みを想像したのだけど……苦くない?
それどころかほんのりと甘く、後味もスッキリしていて美味しいと感じるほど。
おかしいな。
以前、魔力ポーションを飲んだときは、まさに魔力草汁って感じだったんだけど。
味に対して疑問を持ちながらも、俺は美味しい魔力ポーションを一気に飲み干していく。
続けて残りの二本の魔力ポーションにも手を掛けて、一気に飲み切った。
本当は1本での効果を同時に確かめたかったのだが、もしかしたら1本じゃ魔力が1上がらない可能性もあるからな。
今日は3本全て飲み、魔力ポーションでも魔力が上がるのかどうかについてを調べて行こうと思う。
もし、3本飲んでも魔力が増量していなかったら、魔力ポーションでは魔力は上がらないと言う結論に至っていいだろう。
そして、美味しい魔力ポーションを飲みながら、ふと思ったのだが……もしかしたらこの美味しいポーションが、『エルフの涙』の隠れた名店の秘密なのかもしれない。
この味だったならば、高いお金を払ってでも買いたいと思うもんな。
今日は本当に‟味”について、色々と学ぶことが多い日だ。
俺は今すぐにでも、このポーションを生成するおばあさんに弟子入りしたくなってきたが、とりあえず今は魔力が増量しているのかを確かめなくてはいけない。
早速、寝る準備を整えてから、総魔力を測るために植物生成を開始していく。
魔力ポーションを飲む前の俺の総魔力は14だから、魔力草を5本生成することが出来れば、魔力ポーションでも魔力は増量した計算になる。
総魔力の確認をしたところで、俺は魔力草を生成していく。
まずは問題なく4本の生成を成功させ、いよいよ次が問題の5本目。
一呼吸置いてから、5本目の生成に取り掛かった。
—―おっ! 手には魔力草が握られているのに脱力症状がない。
無事に5本目の魔力草の生成を成功させることができた!
これで魔力ポーションでも、魔力が増量することが分かったな。
美味しいポーションでも魔力が上がるなら、これもかなりの発見だぞ。
よしっ! このまま魔力ポーションでどれくらい魔力が上がったのかを調べよう。
低品質魔力ポーション3本に対して、はたして魔力がいくつ増量したのか……。
ここからは薬草に切り替えて生成していこうと考え、まずは一本目の薬草生成を行う。
――うん。一本目は無事に生成出来た。続けて二本目も成功。
そして、三本目の薬草を生成しようとしたその瞬間――。
薬草は生成されず脱力症状が起こってしまった。
なるほど。低魔力ポーション3つで増量魔力は3か。
魔力草単体だと142本で11の魔力上昇に対し、魔力ポーション3本で3の魔力上昇。
金額で計算すると直接摂取の場合は、魔力草1本の相場が銅貨2枚だから増量魔力1につき、かかる金額は約銀貨2枚と銅貨5枚。
魔力ポーションの場合は1本銀貨4枚だから、増量魔力1につき銀貨4枚か。
魔力ポーションの方が、割高と言えば割高なのだが、魔力草を直接摂取する苦痛を考えたら、銀貨1枚と銅貨5枚は大分安いように思える。
……自力であの美味しいポーションを作れるようになったら、もっと割安で且つ楽に魔力を上昇させることが出来るんだけどな。
とりあえず今日の実験は、ダンベル草を美味しく食べられる方法に加えて、美味しい魔力ポーションでも魔力増量を確認出来たのだから、大成功と言えるだろう。
充実した一日に満足気分のまま、俺は脱力状態に身を委ねて、深い眠りについたのだった。
翌日。
目を覚まし、朝のトレーニングから一日を開始する。
いつものように、ランニングしている青髪の王国騎士団のお姉さんを目視しながらも、剣をひたすらに振っていく。
若干だが、剣の振りが速くなっている気がするのだが、これは気のせいだろうか。
ダンベル草の成果なのか、それとも日頃のトレーニングの賜物なのかが分からない。
魔力の増量は明確に分かるのだが、ダンベル草の効果がいまいち実感し辛いからな。
まあ、ダンベル草に関しては考えていても分からないのだし、【プラントマスター】の鑑定結果だけを信じて、摂取していけばいいだろう。
早朝のトレーニングを終えてから、ボロ宿へと戻ってこれからの予定を立てる。
剣を振りながら、これからどうするかを考えたのだが、今はお金にかなりの余裕があるため、【エルフの涙】で魔力ポーションを買って、魔力ポーションによって魔力を上昇させることに決めた。
そのため、今日の予定はこれから冒険者ギルドへ行き、低品質の植物を買い取って貰ってから、そのままの足で『エルフの涙』へ魔力ポーションを買いに行こうと思う。
その時に手持ちの魔力草を、お金を払うことで魔力ポーションにして貰えないかの交渉もしてみようかな。
それと、低品質だけではなく中品質も買って、どの品質の魔力ポーションが一番費用対効果が高いのかを調べてもいいかもしれない。
よしっ! そうと決まれば早速、鞄に植物を詰め込んで、冒険者ギルドへと向かおうか。
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