第五十四話 驚愕の採取結果報告


 採取を終えた後、バーンとポルタに護衛してもらいながら、俺達は拠点へと戻った。

 拠点に決めた場所には、既にテントが建てられていて、なにやら美味しそうな匂いも漂ってくる。

 

「おお。ライラとニーナが色々と準備してくれてるみたいだな」

「助かりますね。この匂いからして料理も既に出来ているようですし、このまますぐにご飯を頂けそうですよ」


 バーンとポルタが恍惚とした表情を浮かべながら、口元を拭った。

 確かに匂いだけでも、作られている料理が美味しいものだと言うことが分かる。


 ……料理出来る人がいれば、こうした山の中でも温かい料理にありつけるのか。

 【青の同盟】さんに振舞って貰った、狩りたてのワイルドな焼肉も美味しかったが、こう言ったちゃんとした料理が食べれるのも魅力的だな。

 

「あっ! 三人共、おかえりっ! 簡単なスープとパンだけど出来てるよ! みんなで食べよう!」

「二人共、テントも建ててくれてありがとな。……ふぅー、移動疲れもあってお腹が空いたぜ」


 俺達が帰ってきたことに気づいたライラが、手招きしながら呼んでいる。

 その言葉に誘われるがまま、バーンとポルタは二人の下へと向かって行くのだが……こういうときに、俺はどうしたらいいのか分からない。

 一応、三人共――とは言ってくれてはいるが、言葉通り行ってしまうとなんだか図々しい感じがする。

 いや、感じがするではなく図々しい。


「あっ、俺はちょっと別で食べるので大丈夫です」


 悩んだ末、結局輪に入って行けなかった俺は、四人に断りを入れてから離れて食事を取ろうと試みる。

 だがすぐに、引き返してきたバーンが、無理やり俺の手を引っ張り始めた。


「ルイン、なに言ってるんだ。俺達は専属契約したんだし、その説明も食事を囲みながらしようぜ」

「いや……でも、【鉄の歯車】さん達が準備したところを使うのは、抵抗があると言うか」

「大丈夫ですよ。僕たち誰もそんなこと気にしないですから。バーンさんの言う通り、しっかり契約を結んだことを二人にも話しましょう」


 バーンそしてポルタから誘われてしまったため、これ以上の断りは逆に失礼になるか。

 俺は三人の言葉に甘えて、ライラとニーナが設営した場所へと向かう。

 

「結構長かったね! 薬草結構取れた? こっちはこの近くにいい薬草の密集地帯があって、結構採れたんだよ」


 手でお金のジェスチャーをしながら、悪そうな笑顔でそう言ってきたライラ。

 この辺りに薬草の密集地帯……?

 前回来た時に採取し尽くしたと思うんだけど、まだそんな場所が残っていたんだな。


「こっちもルインさんが、凄い数の植物を採取してましたよ。ライラさんはどれくらい採取出来たんですか?」

「聞いちゃう? ポルタ、それ聞いちゃう!? 驚かないでよ……ジャーンッ! 9本だよ!凄いでしょ!!」


 小さな麻袋を開けて、9本の薬草を自信満々に見せびらかしてきたライラ。

 俺はあまりの少なさに口をあんぐりとさせてしまうが、バーンとポルタは嬉しそうにライラを褒めている。


 あっ。……冷静に考えればそうか。

 普通の冒険者は一日に薬草を12~15本採取出来れば御の字。

 それを拠点の設営をしながら、更に数時間と言う短い時間で9本採取出来たのだから、一般的に考えたら凄いことだよな。

 俺には【プラントマスター】と言うスキルがあるからこそ、採取速度を早められているだけだ。

 

「ライラさん、それは凄いですね! この短時間の採取で銅貨3枚分は稼げたことになります」

「でしょ!? 残りの三日間の内、二日間は一日中採取し放題だから、私頑張っちゃうよ! ……それで、ルインはどれぐらい採取出来たの?」

「あの……ライラが出した後だと、非常に出しにくいんですけど」

「気にしなくていいぞ。ライラの調子はいつもこんな感じだからな。それにルインの凄さを見せつけたほうが、これから話すこともすんなり頭に入るだろうし」


 バーンのその言葉で、俺は鞄に入った植物たちをライラとニーナに見えるように開けた。

 鞄の中身を見た二人は、顎が外れるのではと思うほど、口をあんぐりと開けたまま固まってしまった。


「薬草が約100本で魔力草が約30本くらいですね。後はちらほらと他の植物も混じっていますが……」

「うっそでしょ!? なんで!? どうやってそんなに採取したの? ……最初から鞄に入ってたとか!」

「いや、しっかりと採取していたぞ。俺とポルタがこの目でしっかりと見ている」

「ちょっと一本だけ、見せて貰っていいでしょうか?」


 ライラを押しのけて俺の方まで寄ってきたのは、まさかのニーナ。

 どうやら信じられないようで、鞄に入った薬草を適当に一本取り出すと、じっくりと観察し出した。


「…………これ、本当に薬草です。あの、もう一本だけ見てもよろしいでしょうか?」

「ええ、減るもんじゃないんで大丈夫ですよ」


 俺が許可を出すとまた一本、無作為に選んだ薬草を観察して、ニーナは納得したように頷いている。

 

「こっちも薬草です。私たちと別れるまで、鞄にそこまで物が入っていなかったのも確認してますし、これらは本当に採取した物だと思います」

「ニーナが言うなら本当だ……。ねぇ、どうやったの!? ルインは薬草博士とか!?」

「薬草博士ってなんですか。……実は俺、‟レア”持ちなんです。植物を鑑定出来るスキルでして、そのお陰で高速採取が可能って訳ですね」


 バーンとポルタに説明したように伝えると、少し納得したように頷いたライラとニーナ。

 やはり‟レア”は説得力あって、楽に説明できて便利だな。

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