第四十七話 固有スキル保持者



「すまないな。ニーナは人見知りであまり人と話したがらないんだ。ただ、これでも俺達【鉄の歯車】の中で一番仕事をこなすから、対人関係についての不備は許してやってほしい」

「許すもなにも怒っていないですよ。私も人と話をするのが緊張するのは分かりますし。……それにしても一番仕事をこなすですか? ニーナさんは強いんですか?」

「…………………っ! つよくないです」


 バーンさんの言葉に乗っかりそう尋ねたのだが、俯いたまま否定されてしまった。

 表情は見えないが、耳が真っ赤になっているところから、恥ずかしがっていると言うことだけが分かる。

 あまり注目しないであげた方が良かったか。


「ニーナさんは【アンチヒール】と言う固有スキルを持っているんですよ。身体能力は決して高くないのですが、この固有スキルのお陰で回復と攻撃が両立出来ているんです」

「そうそう! ニーナのお陰でポーション代も浮いているし、ニーナ様様って感じだよね!」


 先ほどまでコルネロ山での動き方を決めていた二人も合流して、ニーナさんの能力についてを教えてくれた。

 ニーナさんは固有スキル持ちなのか。


 固有スキルは‟レア”とは違い、普通のスキル同様に魔力を消費するけれど、‟レア”と同じくギフトでのみ発現すると言われているスキル。 

 【アンチヒール】がどんなスキルなのかは分からないが、固有スキルと言うだけで有用だと言うことが分かる。

 三人の言うように、本当に一番仕事をこなせるのだろう。



 それから俺は【鉄の歯車】さん達を交えて、掲示板前で色々な話をした。

 それぞれの長所と短所、得意武器と得意戦術など戦闘に関することから、好きな食べ物や好きなお店などの、今回のクエストとは関係ない話まで話は広がった。

 

「いやぁ……盛り上がったねっ! ルイン君が私達よりも年下なのはビックリしたよ!」

「2歳しか変わりませんが、自分も最年少だとは思いませんでした。それにしてもその若さで冒険者って凄いですね!」

「いやいや、俺達よりも二歳も年下なのに護衛依頼を出せる方が凄い。俺達なんか毎日の依頼をこなして、やっと食べていけるってレベルだからな」

「そうですね……。楽しいですが、やはり金銭面ではかなり厳しい部分があります」


 バーンさんとポルタさんが口々に愚痴をこぼした。

 確かに4人で金貨1枚と銀貨5枚を分け合うんだもんな。


 四日間の護衛で稼げるのは一人辺り銀貨4枚ちょい。

 Fランクと言う最低辺ランクだとしても、これはちょっと厳しすぎる気がするな。

 だからこそ、薬草採取を護衛クエストと一緒にできると知って喜んでいたのだろう。


「確かに四人と言う部分がかなりネックになっていますよね。初めてFランクパーティのクエスト費用を聞いたときは驚きました」

「そうそう。四人で金貨1枚と銀貨5枚だからね。旅の準備でも費用がかかるし、実際の取り分は金貨1枚ってところなんだよ! ただEランクにさえ上がれればもう少し楽にはなると思うからみんなで頑張ってるんだ」


 そう言うライラさんの発言に、バーンさんもポルタさんも頷いて同意している。

 なんと言うか……大変そうではあるけど、それと同時に羨ましいとも思った。

 俺もいつか【青の同盟】に加えて貰えたら、こう言った関係を築いていきたいと……ふと思った。


「それじゃ顔合わせはこんなもんで大丈夫か? 年齢が近いと言うこともあってか、随分と長話をしてしまった」

「そうだね! これは楽しい護衛になりそうだよ!」

「こちらこそ長々とありがとうございました。日にちは先ほどの話通り、明日で大丈夫ですよね?」

「うん! こっちとしては一日でも早く行けた方がありがたいからね!」

「分かりました。それでは明日の朝、冒険者ギルドの前でよろしくお願い致します!」


 【鉄の歯車】さん達と別れ、俺は一人冒険者ギルドを後にした。

 第一印象から良かったが、最後まで良い印象を持ったまま、顔合わせを終えることが出来た。

 人柄は完璧だったから、あとは護衛をこなせるかどうかなのだが……高いクエスト成功率から見ても期待は出来る。

 

 一番最初の依頼で俺が日和って【鉄の歯車】さんを選んでいたら、恐らくずっと【鉄の歯車】さんに依頼を出していただろうなぁと、今日会ってみてそう思った。

 そうなれば【青の同盟】さん達とは一生関わりがなかっただろうし、【白のフェイラー】の事件にも巻き込まれていなかった。

 なんというか……人生と言うのは本当に面白いな。


 そんな哲学的なことをふと思いながら、俺はボロ宿へと帰宅する。

 さて、今日からまた本格的に【プラントマスター】の実験に入ろうか。

 

 今日試すのはエンジェル草の生成魔力を調べる実験。

 ここ最近は色々とありすぎて、適当に魔力草を生成して寝ると言うお粗末な生成しかしていなかったから、実験は久しぶりな気がする。

 早速、明日の準備をしてからベッドに横になり、生成を開始する。

 

 相場と比例するならば、三本は生成してほしいところだけど……。

 まず一本目は、問題なく生成出来た。

 そして二本目の生成に当たったところで……力が抜ける感覚に襲われる。

 

 結果はまさかの一本のみ。

 俺の総魔力量は14だから、エンジェル草は必要魔力8以上使うと言うことが分かった。


 生成に必要な魔力がいまいち見当がつかないな。

 謎なままの植物の生成魔力についてを考えながら、俺は眠りへとついた。


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