第四十六話 【鉄の歯車】
「本当にありがとうございました! それではまた来ます」
「おうッ! 定期的にメンテナンスに来いよなッ!!」
もじゃもじゃのおじさんこと、店主のダンテツさんに挨拶を済まして、俺は【断鉄】を後にした。
本当に気の良い人だったな。
この鞘もおまけでもらっちゃったし……シンプルなデザインでカッコよく、腰にもしっかりフィットしている。
この鋼の剣に関しては、まだ俺からしてみると重くて扱える気がしないのだが、しっかりと日々のトレーニングとダンベル草での能力アップを狙えば、いつかは扱えるようになるはず。
今すぐにでも扱えるダガーでも良かったのだが、アーメッドさんが剣で斬り裂く姿を見て、憧れを抱いてしまったのだから仕方がない。
防具の方は流石に、今すぐにでも扱えるライトメタルのプレートにして貰ったのだが、軽い上に耐久性も高い。
熱には弱いみたいなのだが、衝撃を抑えてくれるなら十分すぎる。
俺は揃えた装備一式にニヤニヤしながら、冒険者ギルドへと戻ることにした。
丁度お昼前で、待ち合わせの時間的には丁度良いぐらいだと思う。
受付嬢さんの話では【鉄の歯車】さん達は、冒険者としてはかなり珍しい男2人女2人の男女混合パーティのようで、見ればすぐに分かると言っていた。
俺はギルドに入ると、すぐにギルド内の掲示板前へと直行したのだが……いた。
むさ苦しい冒険者ギルドの中で、男女で楽しそうに談笑している四人組の姿が見える。
周りが厳ついおじさん達ばかりだから、かなり浮いているな。
とりあえず遅刻どころか、時間よりもかなり早めに来てくれていることに好感触。
そして流石はルーキー冒険者なだけあって、年齢もかなり若そうだ。
俺と同い年くらいか、少し上くらいだろうか。
とりあえず向こうは俺のことが分からないだろうし、俺から話かけるか。
……同年代の人とあまり喋ったことがないから、怖い冒険者に話掛けるのとはまた別の緊張感がある。
「すいません。【鉄の歯車】さんでしょうか?」
俺が話しかけると、話を止めて一斉にこちらを向いた四人。
すぐに俺が依頼人と分かったのか、橙色の赤みがかった短髪の活発そうな女性が、表情を明るくさせてこちらへと駆け寄ってきた。
「あっ、君が護衛の依頼人さん? 知らないと思うけど、ずっと依頼応募してたから、やっと受けられて喜んでたんだよ! よろしくね!」
おおっ! 第一印象はかなり良い。
と言うか、やはり近くで見ても若いと言うのもあって、冒険者と言う感じが全くしないな。
体格も細身で……流石に筋肉はついているが、どこにでもいそうな可愛らしい女性。
「おい、ライラ。色々と吹っ飛ばしすぎだろ。まずは自己紹介からだろうが。……すまないな、せっかちな奴で。俺はバーン。そしてこの馬鹿がライラ」
「馬鹿ってなんだっ! ……ライラだよ! よろしくね!」
「僕はポルタと申します。そしてこっちの子がニーナさんと言います」
「……………………ニーナです」
活発元気女性がライラさん。燃えるような赤髪のクールな男性がバーンさん。
そして緑髪のおかっぱ頭で、大きな杖にローブを着ているのがポルタさん。
俯いていて表情は見えず話声も小さいが、胸の主張は大きい女性がニーナさん。
それにしても、名前を覚えるのって意外と大変だな。
【鉄の歯車】さんたちは、それぞれに個性があるから覚えることが出来そうだけど、【白のフェイラー】は覚えられなかったもんな。
まあ、自己紹介すらなかったってのもあるけど。
「私は護衛依頼を出したルインです。護衛依頼に何度も応募してくださったのも知っていますし、そのアプローチのお陰で一度依頼を頼んでみたいと思い至り、今回は護衛依頼を頼みました。よろしくお願い致します」
俺が軽い自己紹介をすると、笑顔でパチパチと拍手をしてくれたライラさん。
雰囲気がかなりいいな。主にライラさんのお陰だけど。
「それじゃ依頼の確認をさせてもらうぞ。コルネロ山までの道中とコルネロ山での護衛を四日間で大丈夫だよな?」
「はい。そちらの条件で大丈夫です!」
「あと、もう一つ確認させてもらいたいのだが、コルネロ山での護衛中、他のことをしても大丈夫か?」
……他のこと?
護衛しつつ、なにかをするってことかな。
それならアーメッドさんは山中では護衛してくれていなかったし、しっかりと護衛してくれるなら全然問題ない。
「護衛をしっかりとしてくれるなら、手が空いた方がなにしてても大丈夫ですよ」
「本当に!? やっぱり私の言ってた通り、最高の依頼じゃん! 薬草採取しつつ護衛依頼もこなせるっ。これは一石二鳥の最高のクエストだよ!!」
「僕とバーン、ライラさんとニーナさんで別れて交互に護衛と薬草採取をやりましょう。ライラさんではないですけど、護衛に全員を割かなくていいのは助かりますね」
俺が許可を出すと、わいわいと三人で動き方を決め始めた。
ちょっと疎外感を感じていると、俯いていたニーナさんが俺の方を向いていることに気が付く。
すぐに俺も視線を合わせたのだが、目が合うとすぐに俯いてしまった。
……なんと言うか、少し変わっている子だなぁ。
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