第三十話 二度目の冒険者パーティ決め


 翌日。

 寝起き早々に魔力草の臭いが漂ってこないだけで、心の底から嬉しい。

 そんな小さな喜びを感じながら、俺は冒険者ギルドへ向かうための準備を始める。

 腹痛も大分良くなり、気分の悪さも解消された。

 ……ただの平凡な日常が、こんなに幸せを感じられるとはなぁ。


 久しぶりの万全の体調に喜びを噛み締めながら、俺は早速冒険者ギルドへと向かい、すぐにクエスト依頼受付へと足を運ぶ。

 朝は臭いもしないし、人もいなくて快適だ。

 やはり冒険者ギルドに来るときは、意識して朝に来るようにしたいな。


「いらっしゃいませ。ここはクエスト依頼専用受付なのですが、よろしかったでしょうか?」

「はい。昨日、クエスト依頼の募集をお願いしまして……これがお預かりしていた番号札です」


 いつものやり取りを済ませて、俺は番号札を受付嬢さんに手渡す。

 番号を確認した受付嬢さんは、複数枚の書類を手にし、この間と同じ様に募集が来た冒険者の紹介を始めてくれた。

 どうやら今回も早々に、三組の冒険者パーティさんが名乗りを上げてくれたらしい。


「それでは一組目から紹介させて頂きます。一組目はEランクパーティの【アンブレラ】。長年Eランク留まりですが、クエスト成功率も程ほどに高く、Eランクパーティの中ではかなり安定しているパーティとなっております」


 うーん。

 安定していると言うのは非常に魅力的だが、【青の同盟】さんたちと比べるとどうしても見劣りしてしまう。


 前回、受付嬢さんに【青の同盟】以上の良い条件はこないと思ってくださいと言われたし、比べるべきではないのだろうが……。

 とりあえず、全てのパーティ紹介を聞いてから決めよう。


「そして二組目はFランクパーティの【鉄の歯車】ですね。ルーキー冒険者で構成されたパーティなのですが、依頼成功率は今のところ90%を超えていまして、Fランクパーティながら、非常に期待できる冒険者パーティとなっております」


 前回も名乗りを上げてくれたところか。

 【青の同盟】さん達がいたため断ったが、話だけ聞く限りはかなり良さそうなパーティに聞こえる。

 少なくとも一組目のパーティよりかは、Fランクパーティと言えど【鉄の歯車】の方が俺的には印象が良い。


「そして最後の三組目なのですが、Dランクパーティの【白のフェイラー】。最近、EランクからDランクパーティに上がった冒険者です。募集金額の満額である金貨4枚かかってしまいますが、Dランク冒険者がこの額で雇えるのは個人的にお得だと思います。ただ一つ、懸念点を上げるとするのでしたら、Dランクに上がってからのクエストで二回とも失敗しているところですね」

「詳しい説明ありがとうございました。少しだけ考えてもよろしいでしょうか?」

「はい、もちろんです。ごゆっくり吟味してください」


 さて、どうしようか。

 俺の中では【鉄の歯車】か、【白のフェイラー】で決まっているのだが、どちらにするかを決めかねている。


 Fランクパーティで値段が安く、恐らく難易度の低いクエストでだが、高い成功率を誇っている【鉄の歯車】か、Dランクパーティではあるため値段が張り、直近の二回共でクエストを失敗している【白のフェイラー】か。

 

 安定策を取るなら【白のフェイラー】なんだよな。

 パーティランク的には、【青の同盟】さんたちと同じくらいの実力と言えると思うから、戦力としては期待はかなり出来る。


 ……金貨に関しては、元々4枚払うと決めていたし、惜しむところじゃないよな。

 魔力草を売らなくても総収支はプラスだったし、今回は鞄とかの初期費用も多くはかからない。

 そう言うことなら、もう決まりだな。


「あの、【白のフェイラー】さんにお願いしてもよろしいでしょうか?」

「分かりました。それでは【白のフェイラー】さんに依頼を出しておきます。顔合わせなのですが、お昼過ぎに冒険者ギルド掲示板前でよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です。よろしくお願いします!」


 俺は依頼料の金貨4枚を受付嬢さんに手渡してから、一度冒険者ギルドを後にした。

 

 さて、お昼までの時間潰しどうしようか。

 ……まずはご飯を食べたいな。

 昨日も結局、魔力草を食べただけで終わったし、本当にこの五日間は魔力草絡みのものしか食べていない。


 少し奮発して美味しい物を食べたあとに、コルネロ山に向けての買い出しをしようか。

 買い物に関しては前回の経験があるから、何が必要で何が不要かは大方把握できている。

 ご飯と買い物の二つを行えば、時間的には丁度良くなるはずだ。

 よしっ。そうと決まれば美味しそうな料理店を探しに行こうか!


 

 それから俺はご飯屋さんを二軒回り、買い物を済ませ、冒険者ギルドへと戻ってきた。

 これから、【白のフェイラー】さんとの顔合わせ場所へと向かう。

 

 かなり緊張するが、【青の同盟】さんたちとの顔合わせの時の方が緊張した。

 素行が悪いと聞かされていたから、本当に怖かったんだよな。

 

 【青の同盟】さん達との初顔合わせを思い出しながら、俺は冒険者ギルドの掲示板の前へと辿り着いた。

 確か、特徴は白のバンダナと言っていたが……どうやらまだ来ていないみたいだな。

 まあ、まだ予定の時刻には余裕があるし、気長に待とうか。


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