第二十九話 増量した魔力


 それから丸四日後。

 ようやく全ての魔力草を摂取し終えることに成功した。


 初日は合計50本も食べることができ、魔力が倍になってやる気に満ち満ちたことで、二日目で全ての魔力草を食べることが出来るのではないかと、考えていたのだが現実はそう甘くはなかった。


 初日に起こした謎の腹痛が翌日以降も持ち越されたのだ。だが魔力草は食べなくてはいけない。

 しかし、それでお腹がいっぱいになっても、やはり魔力草以外の別のなにかを食べたい欲求が押し寄せる。

 しかし腹痛のせいであまり食べられず、栄養不足で体調も悪くなっていく。それでも魔力草は食べなければならない……。が、さらなる腹痛が襲ってくる……と言うとんでもないループが完成してしまったのだ。

 

 その負のループのせいで、一日の摂取出来た魔力草は極端に減り、全ての魔力草を食べ切るのに丸四日も掛かってしまった。

 時間が勿体ないからという理由で、魔力草を一気に食べると言うことを行ったのだが、これだけ時間が掛かってしまったのなら本末転倒もいいところだな。

 

 次回は……なんて今はまだ考えたくはないが、次回の魔力草摂取では今回の失敗を活かしたい。

 と言うか、やはり大量の魔力草を摂取するには、ポーションの生成は必須かもしれないな。

 ポーション生成に詳しい人に伝手でもあればいいのだが……俺には一切ない。


 とりあえずポーションの件は置いておいて、魔力草も全て使い切り、食材の買い出しで銀貨5枚分ほど使ってしまったため、そろそろ次の植物採取に行かないといけない。

 本当は【青の同盟】さん達にまたお願いしたいところだが、月変わりまで残り1週間ほど。

 流石に出発の準備等もあるだろうし、俺の依頼で4日間も拘束したくない。

 ……と言うか、そもそも依頼なんて受けられないと思う。

 

 再び冒険者ギルドへと赴き、クエスト依頼を出すしかないな。

 変なパーティに当たらなければいいけど、【青の同盟】さん達を紹介してくれたのは冒険者ギルドだし、信用しようか。


 そうと決まれば準備をして、冒険者ギルドへと向かおう。

 お腹もいっぱいだし腹痛も酷いが、依頼を出して即日でパーティを紹介してもらえる訳じゃないからな。


 こう言った事態に備えて、オール草を一本だけでも残しておけばよかったと後悔しながら、俺は冒険者ギルドへとやってきた。

 中に入ると、もう常連のような動きで俺はクエスト依頼受付へと向かう。


「いらっしゃいませ。ここはクエスト依頼専用受付なのですが、よろしかったでしょうか?」

「はい。クエスト依頼をお願いしたくて来ました」


 いつもの受付嬢さんといつもの挨拶を交わしてから、すぐに交渉へと入る。

 ……そう言えば受付嬢さん。俺の名前に引っかかりを覚えていなかったな。

 俺の名前を憶えてくれたのか、それとも冒険者ギルドでの俺の指名手配が終わったのか。

 どちらにしても嬉しい出来事だ。


「それでは、クエスト内容を繰り返させて頂きます。コルネロ山までの道中及びコルネロ山での護衛を4日間。報酬は金貨4枚で護衛経験豊富な冒険者。以上でお間違いないでしょうか?」

「はい。間違いないです」

「それではクエスト依頼を出し、冒険者の募集をかけておきますので、明日以降またお越しください。こちらが依頼番号札となりますので、再び来た時にお見せください」

「分かりました。よろしくお願いします」


 これで無事、依頼を出すことが出来たはず。

 よしっ! すぐに宿に戻ってトイレに籠ろう。



 ボロ宿へと戻ってからしばらくトイレに籠ったため、大分腹痛も治まった。

 ここからは特にやることもないため、魔力量の計測へ移ろうと思う。


 これは魔力草を摂取している時に考えたのだが、自分の魔力量を把握するために俺は一つの基準を決めた。

 その基準とは薬草一つを生成する魔力量を1とすること。


 これを決めるだけで自分の総魔力量も簡単に分かるようになるし、他の植物に必要な魔力量も分かりやすくなる。

 総魔力が増えたときに、計測するのが少し面倒くさくなりそうだが、他の植物の必要魔力量を知っていれば応用も可能だし問題はないと思う。


 それに大雑把にいくつ以上はあると言う覚え方でも、そこまで困りはしないだろうし、摂取した魔力草から割り出すと言う方法もあるからな。

 とりあえずこれが一つの魔力量の基準と俺の中で決めた。


 ちなみに昨日までの俺の総魔力量は12で、やはり魔力草の品質によって増量する魔力にもバラつきがあるみたいだ。

 初日は低品質の魔力草を選んで摂取したため魔力増量率は低く、後半に摂取した魔力草は中品質以上だったため、数が少なくても増量率が高かった。


 そのことから考えると、今日摂取した魔力草は全て高品質なので、16本しか摂取はしていないが、それなりには増量していると思う。

 早速、寝る準備を調えて薬草生成に入ろうか。



 いつ脱力症状が起こってもいいようにベッドの上に寝転び、準備完了。

 早速生成を行っていき、もちろん12本までは問題なく生成できた。


 さて、ここからが今日の魔力増量分となる。

 13本目は余裕でセーフ。ただ、14本目を生成し終えると同時に目の前がクラクラとし始め、体全体に力が入らなくなった。

 なるほど。現在の総魔力は14か。


 この四日間の成果をまとめると、魔力草142本の摂取で増量魔力は11と言う結果だった。


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