第二十八話 魔力草の使用と成果


 食べ始める前に魔力草の鑑定から始める。

 ちょっとしたおさらいのようなものだ。


【名 前】 魔力草

【レベル】 14

【効 能】 魔力治癒(小) [魔力最大時魔力増量(極小)]

【繁殖力】 中

【自生地】 コルネロ山


 中品質の魔力草の鑑定結果はこんな感じ。

 最初は魔力治癒(小)しか鑑定されていなかったのだが、とある日から急に‟魔力最大時魔力増量”の鑑定結果が追加されたのだ。

 最初は珍しい個体の魔力草なのかと思っていたが、以降ずっと同じように鑑定されるから、俺は魔力草の隠し効果のようなものだと勝手に思っている。

 

 この効果は割と発見されやすそうにも思えるけど、ダンベル草と同じく効果が(極小)なのが気づかない理由なのだろう。

 ダンベル草と違ってポピュラーな植物ではあるが、それでも相場は一本当たり銅貨2枚。

 わざわざ魔力が減っていないときに、大量に摂取するなんて常人はしないもんな。


 軽く効果の確認、考察したところで、早速だが食べ始めようか。

 水と魔力草、そして魔力草は一本が大きいため、カットしやすいようにナイフを置いて準備万端。


「いただきます」



★   ★   ★



 食前の掛け声と共に、勢いよく魔力草を食べ始めてから約1時間が経過した。

 最初の方は出来るだけ、買ってきた食材に頼らず食べていこうと思っていたのだが……もう既に限界が近い。

 魔力草を細かく刻み、噛まずに水で流し込んでいたのだが、それでも刻んだ部分から魔力草のエキスが水に染み込んでしまうのだ。


 1時間は我慢して魔力草入りの水を飲み続けていたが、我慢するにも限界と言うものがある。

 ダンベル草のように痺れると言う感覚までは至っていないが、味覚は確実に狂ってき始めた。

 現在6本摂取し、残りが136本。


 ……この苦しみでこの本数しか食べていないことと、残りの魔力草の束を見て気力が折れかけたため、ここからは食材を使って食べていくことにシフトすることを即決する。

 とりあえず手あたり次第に食材を買ってきたから、どの食材と合うのかも確認しながら食べて行こう。



 更に2時間が経過した。現在17本摂取し、残りが125本。

 買ってきた様々な食材を全て試したのだが、イケると思ったのはキラービーの蜜、そしてはぐれ牛鳥の牛乳の2種類だけ。

 他の食材は魔力草の苦みに負けて、余計に不味くなる現象が起こってしまうほど、食べ合わせが悪かった。


 一番酷かったのは、ワイルドボアの肉と一緒に焼いた魔力草ステーキ。

 香草焼きなる調理法があると言うのを聞きつけて、試してみたのだが魔力草は熱を加えると酷い臭いを放つようで、それはもうとんでもなかった。

 植物を仕分けたときですら、何も言ってこなかった宿屋の店主さんが駆け付けてくるほどで、多方面に多大な迷惑をかけてしまったな。


 とりあえず失敗談は置いておき、食べ合わせの良かった蜜と牛乳を駆使していけば、苦みに関してだけなら苦もなく食べて行けると思うのだが……如何せんキラービーの蜜は値段が高い。

 今回買ってきた蜜も、小瓶1つで銀貨1枚もした。


 これでも甘味の中では一番安い食材なのだが、気軽には手が出せないな。

 はぐれ牛鳥の牛乳で流し込みつつ、飽きてきたらキラービーの蜜を挟む。

 この方法で食べ進めてみようか。

  

 

 そして魔力草を食べ続けること半日。

 窓から差していた陽の光は完全になくなり、夜を迎えた。


 牛乳の飲み過ぎなのか、魔力草の食べ過ぎのせいかは分からないけど、お腹をありえないくらいに壊したが、本日は合計魔力草50本を摂取することが出来た。

 残り90本近くも残っているが、お腹の激痛があったにも関わらず食べ続けたのは、自分で自分を賞賛したいくらいには頑張ったと思う。

 

 ふぅー。お腹が痛いし、もうお腹もいっぱい。

 どう足掻いても、これ以上は一本も食べることはできない。


 しばらく魔力草はもちろん、牛乳も見たくもないレベルなのだが……明日もまた魔力草を食す日々が始まる。

 そう考えるだけで憂鬱になるが、これも自分の未来を切り開くために仕方のないことと割り切るしかない。


 うっぷ。

 このまま起きていると吐きそうになるため、少し早いが今日はもう寝ようか。


 そう思い、ランタンの明かりを消そうとしたとき、日課となっている一日の終わりの薬草の生成をまだしていないことを思い出す。

 今日くらいはいいかなとも思うが、魔力草摂取の効果が出ているのかの検証にもなるしやるべきだな。


 そうと決まれば、魔力を使って薬草の生成を始めていく。

 順調に1本2本と生成していき、本来ならば動けなくなる3本目の生成を終えたのだが……あれっ、普通に体が動く。

 魔力切れの際に起こる脱力現象が一切ない!


 ダンベル草が効果を感じられなかったのもあって、この明確な自分の能力の上昇に段々とテンションが上がってくる。

 気になるのはどれくらいまで魔力が上がったのかだな。


 よしっ、このまま連続で生成してみようか。

 4本目も脱力症状なし。5本目も脱力症状なし。6本目も脱力症状は出なかった。

 この時点で俺の魔力は倍以上になったことが確定した。


 ただ流石に、7本目を生成したところで脱力症状が現れ、ベッドへと倒れこんでしまったが……明日も食べよう。

 そう思えるくらいには十分すぎる成果を得られた。

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