第二十話 採取した植物の総額
宿についている簡易的な冷水のシャワーで体を流したあと、部屋へと戻って仕分けの作業へと移る。
身の芯から凍えるような冷たい水だったが、そのお陰で眠気はかなり取れた。
風邪をひかないように厚着へと着替え、早速大きめの布に鞄の中の植物を全てぶちまける。
やっぱり効能のある植物は臭いがキツいな。
鞄の中からでも臭っていたが、鞄からぶちまけた瞬間に臭いが部屋中に広まってしまった。
……今更だけど、宿屋の店主に怒られないよな?
血の気がサーっと引いて行くが、もうやってしまったことは仕方がない。
さっさと作業を終わらせれば大丈夫だ。多分。
ここから行うのは、植物のレベルと種類によって分けていく作業。
今考えているのはレベルの低い植物は冒険者ギルドで売り、レベルの高い植物は直接お店で売ること。
品質が高い植物のみを卸せば、お店の俺への評価を上げるって魂胆だ。
冒険者ギルドに関しては、買い取ってから専門職のお店へと流すと言う作業を行っているだけの機関だろうし、手数料分は質の低いものを売っていいだろう。
自分用で使いたい魔力草は、なるべく売らない方向でやっていければいいな。
さあ、眠気と戦いながらの長い戦いが始まるぞ。
★ ★ ★
作業開始から約2時間ちょい。
ひたすらに鑑定し仕分けていったことで、薬草の仕分け作業が終わった。
レベル10以下、レベル10以上レベル20未満、レベル20以上の三つに分類して仕分け、結果はレベル10以下の低品質が計231本、レベル10以上20未満の中品質が359本、レベル20以上の高品質が84本だった。
全部を冒険者ギルドに卸したとしたら、手数料引かれてギリギリ金貨2枚ってところだろうか。
薬草だけでこの額に達したのならば、もう【青の同盟】さん達を雇った分の金貨4枚には悠々届く。
もしかしたらだが、今回採取した魔力草を全て自分用に使える可能性も出てきたな。
よしっ! 圧倒的に数の多かった薬草を鑑定し終えたし、残りもちゃっちゃと鑑定してしまおう。
それから更に2時間程作業を行い、ようやく全ての植物の仕分けが終わった。
肉体的な疲労があったため、今まで鑑定をしてきた中で一番きつかったが、途中で寝落ちすることもなく、集中した状態でしっかりと終わらすことが出来た。
薬草以外の最終結果は、魔力草が計142本。内、低品質39本。中品質78本。高品質25本。
上薬草が計28本で低品質11本。中品質14本。高品質3本。
オール草が計15本。低品質が5本。中品質が8本。高品質が2本。
ボム草が計25本で低品質10本。中品質15本。
エンジェル草が計22本。低品質が7本。中品質が13本。高品質が2本。
リンリン草が計31本。低品質が14本。中品質が15本。高品質が3本。と言う結果だった。
もう計算せずとも金貨4枚は優に超えていることが分かるが……一応、自分でも計算するか。
それぞれの大まかな相場は魔力草が1本銅貨2枚。上薬草は銅貨5枚でオール草が銅貨7枚。
エンジェル草が銅貨5枚。リンリン草が銅貨3枚となっている。
ボム草に関しては扱っていなかったため詳しい相場は分からないが、恐らく銅貨1枚~3枚くらいだと思う。
相場を元に合計金額を算出すると……今回の採取植物総額は金貨10枚と銀貨7枚程だと分かった。
その金額に体が火照り始め、嬉しさから暴れ回りたい気分に陥るがなんとか落ち着かせる。
本当に、本当に良かった。
これでようやくだが、一寸先すらも見えない状態から生きていける目途も俺の中で見えた気がする。
それだけでなく、今までがひたすらに鑑定と雑用だけをやり、生きていくためだけの少ない賃金を稼ぐと言う生活を送っていただけに、思わず泣きそうになるくらい俺は今、‟生きる”と言うことを実感している。
……ただ、まだだ。まだ満足してはいけない。
お金が手元に入ってきた訳じゃないし、今回は【青の同盟】さん達に守ってもらいながらだったから採取の方に専念できたけど、俺自身が弱いことには変わりない。
もしブランドンに邪魔されたらすぐに現状の安泰なんか吹き飛ぶし、ブランドンのような奴にいつ出会うか分からない。
そう考えたら満足していられない。
自分で自分の身を守れるくらいには強くならないとな。
アーメッドさんとも強くなって会いに行くと約束したし、その約束も果たしたい。
採取した植物の思わぬ総額に緩みかけた気持ちを自分で引き締めた。
そして……ようやく俺は別で保管していたダンベル草を取り出す。
この植物が、先ほど決意した俺自身が強くなるために最重要となるであろう植物だ。
見た目はまんま雑草なのだが、黄金に輝いているようにすら見える。
採取に苦労したことを考えるともったいない気もしてしまうが……正確な効果が分からないと生かすこともできないからな。
今からダンベル草を使用し、効果のほどを調べていこう。
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