第一章~最底辺からの脱出~編
第十九話 依頼の完了報告
この四日間。
本当に楽しかったが、流石に重たい鞄を背負って山を下ってグレゼスタへと帰還してきたため、もうヘトヘト。
ただでさえ四日間の山籠もりで疲れていたのに、帰路で完璧に追い打ちをかけられた。
すぐにでも宿を取って休みたいところだが、クエスト達成報告だけは確実にしないといけないため、冒険者ギルドへと向かう。
もはや懐かしい感じさえする冒険者ギルドに入り、冒険者たちを掻き分けて受付へと目指した。
疲れからか、それとも四日間アーメッドさんと過ごしたからか分からないが、冒険者ギルドにいる冒険者たちへの恐怖心がかなり薄れている。
コルネロ山へ向かう前まではあれだけ怖かったのに、体が大きいなぁという感情しか沸いてこない。
「すいません。クエスト完了報告をしたいのですが、よろしいでしょうか?」
クエスト報告の受付へとやってきた俺は、待機していた受付嬢に話しかけた。
お金は既に渡してあるため、この報告が済めばアーメッドさん達にお金が入るはず。
「お名前と依頼番号札をよろしいでしょうか?」
「名前はルイン・ジェイドで、依頼番号札は……っと、あった! これです」
「ルイン・ジェイド様で依頼番号はこちらですね……。はい! 確認が取れました。依頼内容はコルネロ山で4日間の護衛、パーティは【青の同盟】でお間違えないでしょうか?」
「はい。間違いないです」
「それではこれで依頼完了となります。冒険者ギルドでのご依頼ありがとうございました!」
俺に対して、深々と頭を下げる受付嬢さん。
本来ならばここで帰るのだろうが一つ尋ねたいことがあったため、俺はその場に残り質問する。
「すいません。一つだけ尋ねてもよろしいですか?」
「え、ええ。大丈夫ですよ」
そうは言いつつも少し嫌そうな顔をしたのを俺は見逃さなかったため、なるべく簡潔に質問をする。
「薬草などの買い取りって、冒険者ギルドさんでやってもらえるんでしょうか?」
「買い取りでしょうか? 冒険者以外の方からだと手数料を頂いておりますので、直接お店に持って行った方が高く買い取ってもらえると思いますが……一般の方からも買い取りはしていますよ」
うーん……手数料か。
手数料がどれほどのものか分からないけど、冒険者ギルドで買い取ってもらうのが一番か。
薬草とかを扱っているお店は、治療師ギルドとも繋がっている可能性がかなり高いため、あまり行きたくないしな。
万が一、買い取り拒否とかされたら心へのダメージも大きい。
「その手数料っていくらぐらいかかるか、教えてもらってもよろしいですか?」
「買い取り金額の10%を頂いております。例えば合計金額が金貨1枚でしたら、手数料として銀貨1枚を頂きまして、お客様が受け取るのは銀貨9枚と言った形ですね」
10%か。妥当と言われれば妥当だし、高いと言えば高い。
……しっかりと薬草を選別してから、冒険者ギルドに売るのはアリかもしれないな。
「質問にお答えいただきありがとうございました。また依頼をしに来ます……っと、何度もすいません! もう一個忘れていました。これを【青の同盟】さんに渡してもらえますか?」
「えーっと、これは追加報酬ですかね?」
「そんな大層なものではないのですが、達成報酬と一緒に渡して頂けたらな、と」
「分かりました。しっかりと渡しておきます。……それではまたのお越しをお待ちしております」
受付嬢さんとお互いにお辞儀し合ってから、今度こそ俺は受付を引き返し、冒険者ギルドを後にした。
先ほど受付嬢に渡したのは、高品質な薬草の詰め合わせ。
本当に大した物じゃなかったし、冒険者ギルドを通さずに自分の手で渡せばよかったのだが、何故か恥ずかしくなってしまったため、渡す機会を逃してしまったのだ。
まあ、どういう経路であれちゃんと渡せたならいいよな。
冒険者ギルドを出た俺は、いつものボロ宿で部屋を取り、部屋に入るなり即座にカッチカチのベッドで横になる。
質が良いとは決して言えないが、山の土の上よりは100倍寝心地が良い。
虫もかなり酷かったからなぁ……。
この四日間を思い出しながらひとしきり寝転がったあと、そのまま眠りたい気持ちを堪え、再び起き上がる。
俺にとって時間はなによりも大切なため、簡単に眠ってはいけない。
まずは体を洗ってから、今日の内に出来る限りの採取した植物の仕分けを行おう。
今日と言う一日は、これからが本番だ。
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