第八話 採取と鑑定
前衛で戦っている二人を内心で応援しつつ、歩くこと数時間。
舗装されていない道に加えて傾斜のある山道のため、俺の足の疲労も限界を迎えかけていたところ、ようやく山の中腹にある開けた場所へと辿り着いた。
「よっし、到着だな! 中腹って言ってたがここでいいよな?」
「はい。十分です。ここまでの護衛ありがとうございました!」
俺は戦闘の連続でヘトヘトになっているディオンさんとスマッシュさん、それからまだまだ元気そうなアーメッドさんにお礼を伝える。
ディオンさんとスマッシュさんの二人は、俺のお礼の言葉に片手を上げて応じてくれた。
「それで、俺達はここで待っていればいいのか?」
「そうですね。とりあえずこの付近で薬草の採取をしていると思いますので、魔物が出た際は討伐をお願いしたいのですが」
「分かった。討伐はこの二人がやるだろうから、俺は寝る。やべぇ敵が出てきたときだけ起こしてくれ」
アーメッドさんはそう言うと、原っぱに寝そべりそのまま寝てしまった。
その姿に思わず三人で苦笑いをしてしまう。
「……と言うことだから、ルイン君は魔物が出たときは私達を呼んでください。ここは見晴らしがいいのでこちらもすぐに気づくと思いますし、あまり遠くに行かなければ魔物も出てこないかとは思いますが」
「分かりました。その時はよろしくお願いします。……それと、これ薬草です。良かったら頭に塗ってください」
「おおっ、これはありがてぇな! 大事に使わせてもらいますぜ」
「いえ、護衛してもらったお礼も含まれているので気にしないでください。それじゃ、行ってきます」
こうして俺はスマッシュさんに薬草を渡してから、三人とは少しだけ離れて一人、植物採取を始める。
既に収穫済みの植物ならば鑑定慣れしているのだが、実際に生えている植物を鑑定するのは久しぶりだ。
あまり慣れていない手つきだが、早速生えている植物の鑑定を始める。
鑑定方法は簡単。
既に一度鑑定したことのある植物ならば、手をかざすだけ。
そして一度も鑑定したことのない植物ならば、食せばその植物の情報が分かる。
食すと言ってもどう言った訳か、初めて体内に入れた植物はその効能は得られずに鑑定だけ行われる。
そのため猛毒を持つ植物だとしても安全に鑑定は行えるのだ。
ただ、鑑定済みの植物はしっかりと効能を得られてしまうため、既に鑑定済みかのチェックはしっかりと行わなくてはならない。
なにか植物がないか周囲を見渡していると、薬草を見つけたため直ぐに近づいて手をかざす。
【名 前】 薬草
【レベル】 21
【効 能】 治癒(低)
【繁殖力】 中
【自生地】コルネロ山
鑑定を行うと、このような情報が一気に頭の中へと入ってくる。
自生地に関しては俺の知っている場所ならばその名称で、知らない場所ならば???となり、基本的に何処で生えていたのかも一発で分かる。
未だによく分からないのはレベルの概念で、どのようにすればレベルが上がるのかは分からないが、レベルが高いと効能が高いことは確か。
それと栽培された植物よりも自生している植物の方が、レベルが高いことも分かっている。
……とまぁ、鑑定のおさらいはこんなところで止めて、一気に鑑定、採取を行って行こう。
まずはこの辺りに生えている薬草の採取からやっていこうか。
★ ★ ★
ふぅー。採取を始めてから、もう二時間くらい経過したか。
この辺り一帯の薬草と魔力草の鑑定と採取をし終え、既に薬草が全部で57本。
魔力草も13本、採取することが出来た。
現時点で採取した植物をお金で計算すると、銀貨4枚と銅貨5枚分。
……これはなんだかいけそうな気がする。
正直、想像よりも遥かに植物が生えているし、ポピュラーな薬草と魔力草だけでこの額まで到達しているからな。
もちろん効能のないただの雑草も腐るほど生えているが、鑑定能力があれば一瞬で見分けることが出来る。
それと薬草、魔力草の他に、実は鑑定のしたことのない未鑑定植物も、いくつか見つけている。
それの鑑定もこのタイミングで行っていこうか。
俺は早速、目印のつけていた未鑑定の植物の場所へ向かい、採取してから即座に口の中へと放り込んだ。
効能はないと言っても味はしっかりと感じるため、咀嚼をせずに一気に飲み込むのがポイント。
【名 前】 ボム草
【レベル】 17
【効 能】 爆発(低)
【繁殖力】 低
【自生地】コルネロ山
おお! これがボム草なのか。
治療師ギルドでは使うことのない類の植物だったため、鑑定はしたことがなかったが、戦闘用アイテムに使用すると噂では聞いたことのあった植物。
用途があると言うことは、もしかしたらこの植物も売れるのかもしれない。
鑑定したボム草の近くに生えていた2本のボム草を慎重に採取してから、次の植物の鑑定へと移る。
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