不変の輝き③
「私はあなたの友達だから」
膨れ上がる霊威。際限知らずに高まる魔力の奔流に、紛うことなくカルラは危機感を抱いていた。
絶剣——そんな言葉、聞いたことがない。
霊装にそのような機能が備わっているなど、私は知らない。
太陽よりも眩く、忌々しく発せられる極光に深い憎悪を掻き立てられながら、カルラは槍を轟かせた。
いったい
故に、このまま発動を待つ道理はない。
「友達なら一緒に来てよ。あーしはルリアちんとなら満足できるからッ」
空間が捩れゆがむほどの淫我の発露。
地面を裂き、天候すらも淀めて、もはや一種の天災を孕ませた槍が紫電を唸らせながら
対するルリアは、
「いいえ——一緒には行かない」
構えることなく、ただ聖女のごとく微笑みを浮かべていた。
「私が、あなたを連れて行くから」
「——なっ」
まるでそれを待っていたかのように、ルリアは笑う。そして、次の瞬間にカルラは目を剥いた。
極光が静まる。発動しかけていた絶剣が、消える。
忌々しい聖なる光が、紫電の一撃を前にして鳴りを潜め——。
「——空掌」
入れ替わるように、空間が縦に裂かれた。無限に広がるその暗闇へ槍は吸い込まれ消えていく。否——消えたのではない。
「——!」
弾かれたようにカルラは空を見上げた。
双眸に映り込んだのは、空ではなく、黒い穴。
今し方、槍を飲み込んだルリアの空掌によるものだった。
「まさか、あーしの一撃を……ッ」
「そう、絶剣はブラフ。私の
「ル、リアぁぁぁ——ぁぁぁッ!!」
頭上より、一直線に降りかかってきた紫電の槍。
最大出力の淫我によって展開した九つの障壁のうち七枚を一瞬にして貫き、絶叫を上げるカルラへ迫る。
かざした手のひらから血飛沫が舞う。
皮膚が弾け、指があらぬ方向へ捻じ曲がり、爪が消し飛ぶ。
凄まじいなんて言葉ではとても表現できない、神から賜る天罰のごとく一撃を前に、カルラは祈るように両膝を折った。
それは自らが望んでそのような体勢になったのではなく、槍が撒き散らす紫色の圧に足首が砕け支えきれなくなったから。
ただでさえ、手加減なしの淫我を込めて放った攻撃だ。加えてルリアの魔力が乗せられている。
「え、る……さま……っ!」
しかし、いやだからこそ。
カルラは祈るように愛しき御方の名を呼ぶ。
どうか見ていてください、エル様。愛しき人よ。
私は必ずや、この試練を乗り越えてみせます。
だから、
「エル様……っ!」
だから、見ていてください。
あなたの忠実なる
そしてどうか、ひとさじでもいい、愛をください。
私にあなた様の愛を注いでください。
よくがんばったと口づけをして、撫でて、触れて。
私を愛してください。
一晩でもいいから、おまえが一番かわいいと囁いて。
さすれば、必ず彼女をあなた様の御前に導いてみせますから。
私に、あなた様の寵愛を——。
『——いいだろう。なら役目を果たせよ。おまえの価値を俺に魅せろ』
そして祈りは応えられ、
「あぁ——なんて、慈悲深い……っ」
カルラは涙と共に喜びを詠った。
「
障壁が砕け散り、残り一枚に差し掛かった刹那。
最後の障壁を内側から食い破るように、黒雷の魔攻が槍と重なった。
目を覆うほどの極光と極黒。
互いの威が喰らい合い、熱射を撒き散らしながら相殺され、やがて分解されていく。
世界の終わりじみた黒色の光——総身を駆け抜ける衝撃を残して、光は終息した。
やった。乗り越えた。私は、
「まだ、生きてる……っ!」
「——そう、おめでとう」
「———」
試練を乗り越え喜びを噛み締めるカルラへ、祝福を送るように一振りの剣が彼女の腹部を貫いた。
「あ、え」
うそ。
なにこれ。
とても、熱い。
ただの武器ならば、祝福が乗せられている武器程度なら、こんなにも痛くないのに。
これは、違う——イタイ。
イタイ。
魂が、肉体が、拒絶している。
なのに、抜けない。
早く抜きたいのに、抜けない。
イタイ。イタイよ、イタイイタイイタイイタイ———。
「絶剣も、あなたに叩き返した魔力も、全部このためだけのブラフ」
この隙を作り出すための、ブラフ。
全ては、この時のために。
「
祈りの聖女によって鍛えられた剣が、ルリアの言葉に呼応し黄金に輝いた。
三度、使用者の願いを叶える聖剣。
発動条件は、剣を対象に突き刺すこと。
簡単なようで難しいこの条件を、ルリアは達成した。
聖剣によって地面に縫われたカルラは、今にも錯乱してしまいそうな顔で言った。
「やめて」
「聖剣よ。どうかカルラを」
「ねえ、おねがい」
「私の親友を」
「やめてよ、友達でしょうッ!?」
「人間に戻して」
「———」
黄金が、祈りに呼応して瞬いた。
アンデッドしか愛せない。– 転生リッチのアンデッド流わからせ譚- 〜リッチに転生した俺、最上位禁忌指定の魔術を使って次から次へと美女をアンデッド堕ち〜 肩メロン社長 @shionsion1226
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