第7話決着

折原涙はあわれむように僕とさそり人間1号を交互に見る。

「あわれな怪人たち。そんな醜い姿から解放してあげるわ」

そう言うと折原涙は右手を空にかかげる。


宇宙刑事オリハルコンに変身しようというのだ。


「おまえの勝手な正義につきあういわれはない」

真珠はそう言うと屋上の床を蹴る。

僕の記憶から真珠は折原涙が宇宙刑事に変身するのに必要な時間は約0.5秒と計算していた。宇宙のはるか彼方からあのメタルアーマーが転送され、装着するのにたった0.5秒だ。でも、逆にいえばそのわずかすぎる時間だけは折原涙は何も装備しない裸である。


僕と融合し、強化した真珠は音速を超えて行動することが可能となった。

その代償として体中の毛細血管や細胞が破壊されていく。

その激痛を僕の触手から分泌される快楽物質でやわらげる。

真珠の愛らしい顔が紅潮している。

切れた血管や神経は僕の極細の触手でつなぎあわせる。そのときの痛みもあの快楽物質でやわらげる。


僕と真珠は音速を越え、未だ素っ裸のままの折原涙の元にたどりつく。

おおっあのHカップの巨乳が目の前にあるぞ。

そして、真珠はその折原涙の右脇腹に超硬質セラミックのサーベルをたたきつける。

峰打ちであるが折原涙の肉体を床に叩きつけるには十分だ。


折原涙は真っ裸で床に寝転がる。

「ぐはっ!!」

悲痛な声をあげる。

転送されたメタルアーマーは湯気をあげ、床につきささる。


「ハアッハアッ……」

痛みを防いでいるとはいえ、生身で音速を越えたダメージはかなりのものだ。真珠 は肩で息をしている。べっとりと顔中汗をかいている。


「フハハハッ、よくやったぞ。触手人間28号。このまま大人しく降伏すれば我が組織に迎えてやろう」

高笑いし、さそり人間1号は僕たちに近づく。


真珠もサーベルを引きずりながらさそり人間1号に近づく。


「そうか、そうか。我がもとに来るか。幹部に推薦してやってもいいだろう」

さそり人間は嬉しげだ。


「嫌だね」

短く言うと、真珠はまた音速で動く。

おそらくこれが真珠が動ける最後の攻撃だ。

真珠の肉体は計り知れないダメージを受けている。


さそり人間1号もまぬけだな。

真珠はもとから二人とも倒す予定だったのだ。

流れるような動作で真珠はサーベルを斬りつけ、さそり人間1号のハサミと針の尻尾を切り離した。


「ギャアアッ!!」

悲鳴をあげ、さそり人間1号は床に黒い鮮血を撒き散らす。


「き、貴様このようなことをして我がシャドーアレキサンドライトがただてはおかないぞ」

さそり人間1号こと黒井水晶くろいくりすは言う。


「これは銀河警察への敵対行為よ。姫野真珠、あなたは全宇宙刑事を敵にまわすことになるのよ」

宇宙刑事オリハルコンこと折原涙は言う。



「受けてたつわ。あなたたちは私の大切なものを傷つけたのだから……」

真珠は言った。

サーベルを鞘におさめる。

僕たちはこの場をさる。

僕は真珠の鼓動と温かな血の流れを感じた。

僕たちならどんな敵にも立ち向かうことができるだろう。

僕は触手人間になったけど、こうして彼女と一緒に生きていけるならそれもいいだろうと思った。

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触手人間28号とツンデレお嬢様 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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