アンティークドール
ナカムラ
アンティークドール
私は、もう年老いている。
私は、赤いドレスを着て巻かれた金髪で美しい青い目をした少女の姿をしたアンティークドールを眺めて、ウイスキーを飲むことだけを生き甲斐にしている。
私は、その人形の横には、真紅のバラを置くようにしている。とても、そのアンティークドールに似合っているし、自分がまだ生きていることを実感したいから、私は、まだ生に執着している。
私は、長生きしたいのでは、ない。
このアンティークドールといつまでも一緒にいたかったからだ。
笑いたい者は、笑えばいい。
少なくとも、私を生かしているのは、このアンティークドールだ。
私は、ふと、アンティークドールの頭を撫でた。
すると、アンティークドールは、人間の少女となった。
姿は、やはり、赤いドレスを着て巻かれた金髪で美しい青い目をしていた。
その少女は、驚いている私を横に喋りかけた。
「いつも、私のことを眺めてくれて、バラまで飾ってくれてありがとう。私は、これから、貴方のために何でもします。どうぞ、何をして欲しいか、おっしゃって下さい。私は、お礼がしたいのです。」
私は、しばらく放心状態だったが、やっと考えが浮かんだ、
私は、笑顔で語りかけた。
「では、お願いしようかな。私のお喋り相手になってくれないか。」
少女は、酷く戸惑った。
「何でもしますよ。皿洗いでも、洗濯でも遠慮しないで下さい。困ります。そんなことだけなんて。」
「いいんだよ。私は、君とお喋りできるだけで、とても、幸せなんだから。」
少女は、微笑んだ。
「ええ、では……」
それから、私達は、毎日、楽しくお喋りをした。
私は、今まで以上に幸せになった。
私は、ある日、骨董市で、青いドレスを着て、赤毛を巻いて、オレンジ色の目をした美しいアンティークドールを見つけた。
私は、期待した。このアンティークドールも少女となり、私とお喋りしてくれるだろうか。
私は、喜んでそのアンティークドールを家に持って帰った。
帰ると私は、少女のいる部屋に向かった。
「ほら、君の友達……」
しかし、少女は、元のアンティークドールに戻っていた。
私は、2体のアンティークドールを眺めて、ウイスキーを飲んだ。
しかし、何か寂しい。
完
アンティークドール ナカムラ @nakamuramitsue
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