女王に告ぐ

 告白しよう。数多整然と並び立つ淑女たちの中で、ひと際高貴に光り輝いていた貴女に一目で心奪われたことを。


 瑞々しい魅力に溢れ飾り立てられた娘たちに隅に追いやられ、貴女は決して目立つ存在ではなかった。だがその気品に満ちた佇まいは周囲におもねぬ威厳に満ちて、他を圧倒していた。侵しがたく崇高な煌きは孤高の決意を秘め、その並々ならぬ気高さが私の心を魅了した。


 覗き込めば艶やかな蠱惑の瞳に私を映し込み、甘い香りが陶然と夢見心地の境地に誘い込む。近づけば近づくほどその香気は馥郁と私を包み、暴きたいと踏み込めば踏み込むほど、目に飛び込んで来る貴女の素顔に翻弄される。


 触れることすら憚られた琥珀の艶めきの中に、貴女はいくつの顔を隠し持っているのか。貴女を私だけのものにしたい。ああ、早く、早く食べてしまいたい。

 我思う。チョコレートケーキの女王、オペラよ。


                             以上(368字)


※チョコケーキの王様がザッハトルテなら女王様はオペラだよね、と作者は勝手に思ってます。


※自主企画「四〇〇字からの「人物描写」コンテスト」に参加しました。

https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054883467845

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