G&B
これからのスケジュールをいくつか考えながらも、ミドオとアドリが町並みを縫う様に跳ぶ。
空を舞う中で、ある時ミドオは――深山弘二は、己が人としての情報、その存在の内から取り出すように携帯を出現させた。
手慣れた手つきで呼び出すと同時に、その「声」が通話相手にも届くよう調整される。
「もしもし――純香か?」
優しい口調で
「ああ。いや、わかっている。ありがとう。でもまだ、仕事やゴタゴタが忙しくて時間がかかりそうなんだ。うん。おっ……茂か。元気そうだな、お前にも待たせてばかりでスマン。でもな」
一転して、ハッキリと。静かに、だが力強く深山は家族へ約束した。
「絶対に家へ戻るから――もうちょっとだけ、待っていてくれ」
ゆっくりと二人分の返事を聞いてから。じゃあ、と彼は電話を切る。力強く仔細問題無しとばかりに、ミドオとアドリは軽やかに加速する。
眼下の通学路ではそんなミドオとアドリの存在にすら気付かず、下校途中のごく普通の学生たちが喋っていた。
「だからさあ。今はもうマザリじゃないんだって。もっとおかしな物が出るって噂。知らないの?」
「えぇー。なんか噂とかもう多すぎて何がなんだかわかんない。やっぱりマザリみたいに路地裏で?」
「いや、そうとは限らないらしいけどさ。ミドリの……あれ、それともアオだっけ? とにかくそんな色に光る怪人がさ、誰にも悟られず、ビルの裏とかに人を引きずり込んで殺していくんだって」
「……誰にも悟られないのなら、なんで噂になるの?」
「知らないよ。本当はちょっとくらい見た人が居るんじゃない? 確か名前は……」
そんな会話をしている中。誰もが気付かぬ間をすり抜けるように――ミドオとアドリは往く。
人知れず。彼らは衝撃を舞わせ、噂がはびこる中でも戦い続けている。誰もそれを認識できぬまま――その残滓か、一端のみを僅かなニンゲンに感付かれることもあれど、その真相を知る者はなく。そこに混ざる、敵意を有した人外を狩っていく。
「お、お前は――お前は!!」
時に恐れを抱かれながらも。迫り来る敵を全て叩き伏せて、目を輝かせ、マントをひらめかせる甲冑は――誰に対してでもなく。だが、確かに言い放つ。
緑から青、青から緑のエメラルド。そして虎井シンにして深山弘二。時を経てどれほど変わり分かたれようともなお魂はただ一人という存在。それはつまり。
「
それが闘い続ける「俺」と「私」の名だと。
EMERARD-MIND 終
エメラルド・マインド 大葉区陸 @CU-CO-HCU-HCO-F
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