record
@acroshachi
001_20X40516_0714_A00
これはテストとして作っているところだ。まだ推敲もしていなく、雑記帳となっているのでまた書き直そうと思う。
大学の校舎を表すような名前のノートの冒頭にはそう書かれている。
この一文を読んで、一通りページを眺めた限り、いい加減な改行や謎の空白が存在するようだ。
思わず苦笑いをすることになったが、続きを読み進めよう。
保存領域を拡張するためのデータカードがいっぱいになったので久しぶりに買い替えることになった。
さすがに最近の音質と電池の持ち方であればもっと大容量にしたほうがよいだろう。これで向こう数年はデータの取得ができる。
最近の録音機はデュアルスロットになっており、録音中にボタンを押すだけで片方に保存しつつ、保存先をスイッチすることができる。
こういった細々とした点は便利になっていくのに、世界は一向に進歩が見られないように見える。
新たなグローバルスタンダードだとか、生産性の向上だとか、技術的な革新だとか、そんなことを小さいころから画面の向こう側で聞いて育ったはずなのに僕らの日常はさして変わらない。
今日も朝早く起きて、親が置いていったお弁当を抱え込んで駅まで走り、満員電車に圧殺されそうになりながらどうにか目的の駅で抜け出して、ピロティを抜けて靴を脱ぐ。
下駄箱には靴以外のものが入っていないことを確認して階段を上り、ワックスがかけられててかりを帯びたリノリウムを踏む占めながら机に突っ伏した。
十分もすると同じ部屋に人が入ってくる。当然見知った顔なのだが、事務連絡のような必要性を感じるとき以外に話しかけようとは思わない。
更に十分が経つ、人が増えてきて机の三分の二が鞄が乗ったり、脇にかかってくる。大勢で話し込む集団の中には机の上に腰かけたり、窓を開けて話に興じる者もいる。
落ちるのが怖くないのだろうか。スーパーで買えば四千円相当の米に相当する鞄がかかっていていたり、アルミのつっかえ棒があるとは言え地表から十メートルくらいの高さがあるのに、命が惜しくないのか。僕はそんなことは怖くてできない。
耳に流れてくる内容は、アイドルがどうとか、難しそうな名前の人に惚れた腫れたという話であったりする。
僕は名前くらいは聞いたことがあるが、具体的にどんなことをしているのか知らない人だらけだ。
彼らはまっとうに人とかかわっているのだ、人を知ろうとしているのだ。そういった情動を強く持ち合わせられなかった身としてはうらやましい限りだ。
そう思いながらぼんやりと腕を組んで半分眠りながら机に突っ伏していると、始業の鐘が鳴る5分くらい前にやっと僕の話し相手が来る。
「おーい、今日こそ死んでないか——。」
そういって声をかけてくる。ここまでの行動を音から思い出すことにつかれた。寝ることにしよう。
record @acroshachi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。recordの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます