きっとエッチな女の子だから

あきかん

第1話

「セエエエエエックス!!!!!!!」


 わけの分からん言葉を叫ぶ男が目の前に立っている。この男の素性は未だにわからない。しかし幾度も体を狙われている。


「大丈夫。きっとエッチな女の子だから。」


 俺は男だ。だがしかし、こいつは俺のことを女の子と呼ぶ。じりじりと近づいてくる。尻がこそばゆい。身の危険を感じた。


「俺は女じゃなねねえ!!!!!」


 やるしかない。ここでやらねば俺の貞操は失われる。それだけは本能的にわかった。


「セックスしたい。ドロドロになるまで絡み合ってセックスしたい。寝食もわすれてセックスしたい。過去も未来も現在も忘れてただ本能の赴くままセックスしたい。快楽に溺れるままにセックスしたい。子作りセックス。孕ませセックス。セックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックスセックス……」


 男の重心が下がる。少し屈んで両手を前方へ軽く突き出している。


「性交体位四十八手。とくと味わうがいい!」

「嫌だよ!」


 俺は右足を半歩踏み込むと、拳を縦に突き出した。突っ込んで来た男の肩に叩き込んだ。


「抵抗するというのか。」

「当たり前だ!」

「知っているか。死体でもセックスできるんだぜ。」


 男は構えを変える。両手を顔の前に上げ足のスタンスは一歩分。総合格闘技に近いスタイルだ。


「相姦強姦輪姦死姦。より取り見取りだ姦しい。」

「よ~~~~~~~~~くわかった。ぶっ殺さなけりゃ俺が殺されるってわけだ。」

「ちげえよ。俺はお前とセックスしてえだけだ。」

「だから、俺は男だ!!!!!!!」


 俺は右足を半歩踏み込むと、拳を縦に突き出した。馬鹿みたいにこれを繰り返すしかない。それしか俺にはできない。

 李書文という武道家がいた。二の打ちいらずと言われた伝説級の化け物だ。山を越えた先にある道場へ崩拳(中段突き)を繰り返して通ったという。

 俺もこれにならった。いや、違う。ただ盗み見た練習風景で理解できたのが崩拳のみだったのだ。それを幾日も幾月も幾年も繰りかえした。

 震脚。本物の功夫の踏み込みは地を揺らす。その力を余すことなく拳へと伝える。


 パン!


 と、気持ちのいい音がした。空気が裂ける音だ。俺の拳が男の芯をとらえるはずだった。

 男の拳に防がれた。男の振り上げられた拳が落とされていた。劈拳。金行を司るこの拳は木行を司る崩拳に打ち勝つ。五行の理。

 男に掴まれ倒される。


「四十八手。表裏合わせて九十六手。受け入れろ。俺の気持ち。この思い。四十八手は壱の型、網代本手。」


 仰向けにされ、股を充分ひろげられ、アヌスがマラを受け入れるのに都合の良い体制へとなっている。そこへ男は力強くいきりたったマラを臨ませながら乗りかゝり、互いに胸、乳、腹がピッタリ合う様に抱きつき抱きついてきた。

 俺は抵抗した。脚を何とか男との間に挟もうともがく。まだかろうじて男のマラは入れられていない。この体勢では入れられることはない。なぜなら俺はパンツを履いているからだ。

 男のマラは服を破るほどの硬度はない。ガジガジとなる床、股の間に入られた男の体。抵抗するも脚は男の胴体を挟むのが精一杯だ。奇しくもそれは四十八手は弐の型、揚羽本手となっていた。

 殺す。絶対にぶっ殺す。この男だけは今やる。


「どうしたベイビーちゃん。俺の女になる覚悟は決まったかい。」

「決まったのは、お前をぶっ殺す覚悟だ。」


 俺は男の頭を掴む。


「覚悟しろよ。これまでのは前戯さ。これからが本番だ!」


 男の鼻に人差し指を突っ込む。殺し技の一つ。相手の再起を鑑みない禁じ手。

 男は仰け反った。そして、腰を浮かした。

 俺は男の急所に拳を放った。


 うぐっ


 と、男の悶える声がした。俺は目の前の男の腕を掴み、腰を浮かした男の脚に足を巻くように絡めた。


「デラヒーバ ガード スイープ」


 まずは裏返る。次に男の足を開かせ腰を掴み引き落とす。バックをとって足を伸ばす。完成した技の名は裸締め。

 決まりきっていない。男の顎が入って締めきれない。


「だいじょうぶ。痛いのは最初だけだから。」


 男が懲りずに戯れ言を紡ぐ。脈動する男の股が濡れて行く。射精しているマラはピクピクと動いている。


「安心しろ。この腕から力を抜くことなんてありえない。すぐに喉元に腕が入り込み喉を押しつぶすさ。」


「良かった。誰も見ていなくて……。お前とのセックスが……止められるところだった。この容赦のなさ……。マラの感触。……よかった。間違いなくお前はエッチな女の子だよ。」


「ほざけ。このまま締め続ければ死んでしまうだろうが、俺は止めん。被害者は加害者に何をしても許される。すべての責任は加害者にあるんだ。」


「いいや……。すべての責任は加害者にあるんじゃ……ない。エッチな方にあるんだ。俺は加害者だが……お前の方がエロい……。」


「よく言うぜ。」


 俺は腕に力を込める。締めきれなくとも体力は奪える。


「射精ってのは……我慢した……分だけ気持ちよくなれるんだ……。セックスでも……人生にも……射精管理ってものがあるだろ。すべてのものに……あるんだ。人生でも……セックスでも……どんなに困難な状況でも……絶頂は……ある。」


 散りてなお

 おもかげにたつ

 乱れ牡丹


 四十八手は拾弐の型、乱れ牡丹。座った男性の上に、女性が背を向けてしゃがみこみ、挿入するのが乱れ牡丹の姿勢。

 それに倣うかの如く、男は暴れだした。積極的に動く男を御するのは難しい。尻の谷間に俺のマラが挟まりこすれる。徐々に硬さが帯び始めたそれは穴を求め始めていた。


「絶頂はない。お前は現状が認められないだけだ。激しく動くことで腕が首へと入っていったぞ。このままでは頸動脈は閉められんだろう。しかし、喉は潰せる。苦しく苦痛にまみれてお前は死ぬんだ。お前はそれが認められないだけだ。」


「後ろに……回られ……首が絞められて……いる……。ろくに動くこともできない……。それでも……まだ……勃起している……。」


「勃起しているからってなんだっていうんだ!!」


 俺のマラは男の尻の刺激で勃起している。よく鍛え上げられた硬い尻の刺激は思いのほか気持ちよかった。


「まだやる気はあるんだな。お前はまだ俺とセックスする気があるんだな。お前はこんな状態でもやれんだな。おい!」


 俺は腕に力をこめる。男の首を締め上げる。


「お前はセックスしたかったのかもしれない。俺をメスにしたかったのかもしれない。だが、その油断。力の過信で覆るような関係性なんだよ。この状態からの逆転などない。俺は女ではない。メス堕ちはしない。死ぬまで締められる覚悟をしておけ。」


 落とせれば殺せる。意識を飛ばせれば殺せる。


 神樂……

 俺たちはこのままの関係性を続けるつもりかよ


 織本がエロ自撮りを送ってくれる

 という事実だけでやっていけるよ


 クソみたいな過去の記憶がよみがえった。あの時は納得できなかったし今も理解できない。

 絶対にぶっ殺してやる。


「本当に気持ち悪かったよ。あんたがもう少しまともな人間なら、人間としての付き合いもできたかもしれない。しかし、お前みてえな救いようのねえ変態にこれ以上付きまとわれるのは耐えられねえ。だから、首を折るから。」


 無音。俺が話すのをやめると男も動かなくなった。わずかに挟まっている男の顎を起点に、可動域の限界まで曲げた。


 ぐっぎぎぎいぃぃぎぃぎしっ


 男に接触していた頭蓋骨から振動が伝わり直接聴覚神経に伝わった。この嫌な音と同時に男は勃起していたマラから射精した。


 びいいぃぃぃびいいぃぃ


 俺の尻に入っているバイブが振動する。あいつが迎えが来たことの知らせだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きっとエッチな女の子だから あきかん @Gomibako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ